「このマンガがすごい!大賞」で1位
2011年に「このマンガがすごい!大賞」で1位を取り、2013年にはアニメ化、2014年には劇場版アニメ化、2015年には実写映画化を果たすなど今も人気沸騰中の「進撃の巨人」。リヴァイにはテーマソングがある。
主人公が、人喰い巨人を駆逐するがべく仲間と共に戦闘を繰り広げる何ともスリリングでドキドキハラハラさせられるストーリーだ。そのアニメで最も人気といえるのが、リヴァイ兵長というキャラクターである。作中では「人類最強」と謳われ、主人公の直属の上司である彼に、実はテーマソングが存在するのをご存知だろうか。The Reluctant Heroes 歌詞
リヴァイのテーマソングにはそうタイトルが付けられている。直訳すると、「気怠い英雄」。果たしてこの曲では、「人類最強」の英雄であるリヴァイがどのように描かれているのだろう。
この曲中で何度も繰り返されている、サビのフレーズはこうなっている。
『It was like a nightmare
It’s painful for me
Because nobody wants to die too fast
Remember the day of grief
Now it’s strange for me
I could see your face
I could hear your voice』
"それは悪夢のようで、俺を苦しめる
何故なら誰も早死になんてしたかないから
あの日の悲しみを思い出して
不思議なもので
君の顔が見える
君の声が聞こえる"
リヴァイの本来の姿って実は…
全て英語で歌詞が書かれているこの曲だが、日本語に直すと、リヴァイ自身の心の闇が見て取れる。「誰も早死になんてしたくない」のに、周りが若くして人喰い巨人との戦闘によりいたずらに亡くなっていく。強すぎるが故に、その光景を横で見るしか出来ず自分が死ねない孤独にリヴァイは侵されているのかもしれない。作中で、リヴァイが信頼をおいている部下たちが亡くなる寸前まで手を握って巨人を絶滅させることを誓ったり、亡くなった兵士の制服のエンブレムを切り取り、それを保管したり、その兵士と仲の良かった者に手渡したりするシーンが出てくる。
いかにも人望があり信頼できる上司、という体であるが、本当はその「強くて人望の厚いリヴァイ」というのは作り物なのではないだろうか。
youの数が多い
この曲では、「you」(君)がよく登場する。『So you can’t fly if you never try
You told me… Oh, long ago
But you left the wall Out side the gate
So more than ever, it’s real』
"やらなかったら、君は飛べないよ
君は俺にそう言った。遠い昔の話だ。
しかし君は壁から行ってしまった、門の反対側に
だからますます本当のことになってしまったのだ"
“you”はファーランとイザベル?
この「君」が作中の誰をさしているかは分からないが、「進撃の巨人」のストーリーに大きく関わってくる、巨人から居住地を守る為の「壁」の外で死んでしまった誰かを歌っていることには違いないだろう。では、一体この「君」とは誰のことを指しているのだろうか。ここで候補に挙げられるのは進撃の巨人のスピンオフ作品に登場する、リヴァイの弟分・ファーランと妹分・イザベルだ。
リヴァイは治安が非常に悪い貧民街で生まれたみなしごだ。そこで暮らす上で共に仕事をしていたその2人は、リヴァイと同時に調査兵団に引き抜かれる形で入団した。しかし、その初めての壁外での任務中、巨人との戦闘に敗北し亡くなってしまう。
リヴァイを古くから支えていた仲間であった2人は、もう壁の外に行ってしまった。自分の理解者を失ったことによる寂しさが、この歌に込められているのかもしれない。
さらに曲の中盤には、このような歌詞がある。
『Song for reluctant heroes
Oh Give me your strength
Our life is so short
Song for reluctant heroes
I wanna be brave like you
From my heart』
"気怠い英雄の歌
俺に君の力をくれ
俺達の人生は短すぎる
気怠い英雄の歌
君のように強くなりたい
心から"
君のように強くなりたい
ここの歌詞こそが、リヴァイの強さに隠された弱さや孤独を描かれた、彼のテーマソングでの要と言えるのではないか。壁の外で亡くなった「君」の強さや勇気が欲しい。先ほど述べたとおり貧民街出身のリヴァイは、「生きる術」 すなわち盗みや暴力などの悪行を繰り返していた。兵士になった彼は人類最強になり英雄にまで登りつめたが、先述の「支えてくれていた仲間がいなくなってしまった」が故の孤独や、その「英雄」としてはやし立てられるが故の孤独が弱さとなってしまったのかもしれない。
もしそうだとしたら、本当は弱いのに強くあらなければならない使命に縛られ本当の自分をさらけ出せずに悩んで、そして「君のように強くなりたい」と願っているのだろう。
さて、作中でも曲でも複雑な伏線が張り巡らされている「進撃の巨人」。「The Reluctant Heroes」はアニメのサウンドトラックとしてアニメでも流れているので、是非観ながら耳を傾けてみるのはいかがだろうか。
TEXT:瀬月凜香