Adoの新曲がドラマ「ドクターホワイト」の主題歌に
2022年1月18日に配信リリースされた令和を代表する女性シンガー・Adoの新曲『心という名の不可解』は、ドラマ『ドクターホワイト』の主題歌に起用されています。作詞作曲を手がけたのは、2021年に紅白歌合戦にも出場した人気歌い手でありマルチクリエイターとしても活躍するまふまふです。
まふまふらしいメッセージ性の高い歌詞とAdoのパワフルな歌声が、ドラマの世界観を見事に引き立てています。
医療ドラマとリンクするフレーズにも注目しながら、歌詞の意味を考察していきましょう。
----------------
君が瞬きをする音
目を逸らした音さえ
こんなにも容易く聞き分けてみせるのに
時に、病名を何としましょうか
誰も知りえないはずの
ココロなんてさ 期待もしないよ
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
ドラマ『ドクターホワイト』の主人公・白夜は豊富な医療知識を持つものの、感情さえも忘れてしまった記憶喪失の女性です。
1番の歌詞の冒頭には、そのキャラクターを想起させるような描写が描かれています。
医師は患者の些細な仕草や音などから病気のサインを読み取ります。
しかし「誰にも知りえないはずのココロ」は名医でも決して明らかにすることができません。
見えないものには「期待もしない」現実主義な主人公の姿が見えてきます。
----------------
寸分の狂いだってない
正確に記録されたジグザグに
それ以上意味はないはずだもの
故にどんな顔して笑おうと
カルテに書かれないことは
信じるに値しないんだ
それが全て
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
「正確に記録されたジグザグ」とは、おそらく心電図のことでしょう。
心臓の動きを「寸分の狂いだってない」状態で表示しますが、心の変化を映し出すことはないので「それ以上の意味はない」ものと言えます。
しかし人間は嘘をつきます。
楽しくなくても愛想笑いをすることがあるように、表情がそのままの感情を表しているとは限りません。
正確なカルテには書かれない不確かな心は、主人公にとって「信じるに値しない」ものです。
「心音を吐いている」の解釈とは
----------------
心音を吐いている
心音を吐いている
それだけ
曖昧なものだ 見えないものだ
最適な治療法などどこにもない
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
「心音を吐いている」というフレーズは、心の動きを表現していると解釈できます。
鳴るではなく「吐いている」とあるので、感情を表に出している様子をイメージできるでしょう。
知らないはずの感情が出た自分に戸惑い、これはただの心音だと誤魔化そうとしているように思えます。
「曖昧」で「見えないもの」だから、このおかしな「心音」への「最適な治療法」が見つからないでいます。
----------------
ねえ
感情の判断はどうしたらいい?
心境の分別はどうしたらいい?
証明しようもない不明瞭が
エラー吐いては脈を打つんだ
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
自身の変化に気づいた主人公は、これまで無視してきた「感情の判断」や「心境の分別」という難解な分野にぶつかりました。
証明できるはずもない心が思わぬ動きをして、余計に主人公を悩ませているようです。
----------------
安寧も安楽もどうだっていい
後悔の人生だとしたっていいからさ
この目が潤む病の理由は何なの?
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
変化なく日々を過ごすことを第一にしていたであろう主人公が、そんな穏やかさはいらないと本音を吐き出します。
それでもし「後悔の人生」になっても構わないから、自分の心を知ろうと動き始めたのです。
主人公には「この目が潤む」つまり思わず涙が込み上げてくる理由が分かりません。
心を知れば答えが見えてくるのでしょうか?
----------------
永遠と静寂の 戸をたたいた言伝
私はいつまで 忘れているつもりだろう
明日を繋いだ指で
取りこぼしてきたものを数えてしまう
虚しさのままに
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
自分にも心があることを感じた主人公の元に、誰かからの感情を乗せた「言伝」が届きます。
「私はいつまで忘れているつもりだろう」の言葉から白夜と同じく記憶を失っていることが分かりますが、忘れているということは以前は確かにあったということです。
未来を見ながら過去に失ってきたものを数えると、虚しさばかりが襲ってきます。
----------------
本当は
乱暴に君が触れてくれたら
ぽっかり覗く空白も埋められる
これが正体?
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
「本当は乱暴に君が触れてくれたら」と考えるのは、自分の心の「ぽっかり覗く空白」に見え隠れする感情に気づいたからなのでしょう。
それは恋する気持ちや愛しさだと考察できます。
自分の感情を乱す「君」がいっそ強引に踏み込んできてくれたら、この心の中でくすぶるものの正体が見えるのではないかと考えているようです。
不可解な心の答えを知りたい
----------------
表情にメスを入れてしまう
愛情は投薬と思えてしまう
解剖できない手術台じゃ
答えなんてさ わかりやしないよ
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
表情にメスを入れて感情が分かれば簡単ですが、そうはいきません。
愛情も病気を治すための投薬のように義務にしか感じられていないようなので、主人公は幸せを感じられていない状態なのでしょう。
「解剖できない手術台」では病気が分からないように、直接見えない心の答えはまだ隠れたままです。
----------------
数式で一切を証明しない
心という名前の不可解を
素直になれぬ私のことを
見抜いてよ
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
ここでタイトルに繋がる「心という名前の不可解」というフレーズが登場します。
どんな数式を使っても決して証明できない不可解なものの一つが心です。
忘れたまま「素直になれぬ私のことを見抜いてよ」の言葉で、誰かが自分の心に触れて満たしてくれることを願う主人公の想いが明かされます。
----------------
覚めない夢なんて
ここにないと教えて
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
大切な記憶を失うということは、多くの人にとってまるで夢の中の出来事のように現実味がないものでしょう。
もし本当に夢ならいつか覚める時が来ます。
失った記憶もいつか必ず取り戻せると信じたい気持ちが伝わってきますね。
----------------
何回拒んだって 振りほどいたって
そうやって また優しくするのでしょう?
この目が潤む病の理由は何なの?
この想いの名前は何なの?
≪心という名の不可解 歌詞より抜粋≫
----------------
どれほど遠ざけようとしても優しくする「君」にまた涙が込み上げます。
泣きたくなる理由も抱いた「この想いの名前」も今はまだ分からないままです。
それでも知らないままにはしたくありません。
心に目を向けることができるようになった主人公になら、これからきっと見えてくるものがあるはずです。
人の心は不可解ですが、そこにある温もりや心を通わせることの充実感が確かに伝わってくる歌詞ですね。
楽曲を盛り上げるMVも必見
Adoの『心という名の不可解』には、見えない心の存在を認め受け入れようとする前向きな気持ちが表現されていました。絵師の0楼と映像クリエイターのAkito Nakayamaが手がけたMVでは思い出のクマのぬいぐるみを作るストーリーが描かれていて、ドラマとは一味違う楽曲の世界観を味わえるでしょう。
歌い手出身の二人の人気アーティストのコラボを、ぜひMVでも楽しんでくださいね。