宇多田ヒカルのアルバム「BADモード」に込められた意味
宇多田ヒカルの約3年7か月ぶりとなる8枚目のオリジナルアルバム『BADモード』が、2022年1月19日にデジタル先行配信リリースされました。
表題曲でもある『BADモード』というタイトルついて「調子が悪く落ちこんでいるときの状態」と説明されています。
コロナ禍を受け、周りの大事な人たちとお互いにどう支え合うかを大切にしてきたと語る宇多田ヒカル。
自身の作詞作曲を手がけた『BADモード』の歌詞に込められたメッセージを考察していきましょう。
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いつも優しくていい子な君が
調子悪そうにしているなんて
いったいどうしてだ、神様
そりゃないぜ
そっと見守ろうか?
それとも直球で聞いてみようか?
傷つけてしまわないか?
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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主人公は「いつも優しくていい子な君」の調子が悪そうなことを気にかけているようです。
「いったいどうしてだ、神様 そりゃないぜ」と自分のことのように不満を露わにします。
そして「君」をそっと見守るか、何があったか直球で聞いてみるかと悩んでいます。
きっと聞いてみる方が相手の力になれるなはずですが、そうすることで反対に「傷つけてしまわないか?」とも考えていて、主人公の優しさが伝わってきますね。
愛する君を助けたい
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わかんないけど
君のこと絶対守りたい
絶好調でも BAD モードでも
君に会いたい
I can't let you go (let you go)
I just want you more in my life
絶好調でも BAD モードでも
好き度変わらない
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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何があったのかは分からないものの、とにかく「君のこと絶対守りたい」というのが素直な気持ちです。
絶好調の時も「BADモード」の時もいつでも近くにいたいし、好きな気持ちが変わることもないと思っています。
英語詞の部分を簡単に訳すと「君を手放すことはできない 私の人生には君が必要」となるでしょう。
いかに相手を大切に思っているかが、分かるストレートな表現です。
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Here's a diazepam
We can each take half of
Or we can roll one up
However the night flows
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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一文目に出てくる「diazepam(ジアゼパム)」は精神安定剤のこと。
「Here’s(これが)」に続いているので、前の歌詞で示されていた愛情が心を支えるという意味なのかもしれません。
愛情を互いに分け合ったり包み込んだりしていれば、きっと不安は解消するはず。
それでも「However the night flows(しかし夜は流れて)」とあるように、そうは思いながらもまだ助け切れていない状況にやきもきしている様子が垣間見えます。
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メール無視してネトフリでも観て
パジャマのままで
ウーバーイーツでなんか頼んで
お風呂一緒に入ろうか
何度自問自答した?
誰でもこんなに怖いんだろうか?
二度とあんな思いはしないと祈るしかないか
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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ここでは他人からのメールは無視して、家でパジャマのままのんびり映画を観たりお風呂に入ったりと二人の時間を楽しもうと提案しています。
調子の悪い時には他のことは考えず、自分のために楽しめばいいのです。
前半の楽しげな雰囲気とは違い、後半では大事な人を前に失敗したくないという不安が表れています。
「二度とあんな思いはしないと祈るしかないか」というフレーズから、以前思わず大事な人を傷つけてしまった経験があると解釈できます。
落ち込んでいる人を慰めるのは、想像以上に難しいものです。
傷つける怖さを抱えながらも、どうすれば助けになれるだろうかと自問自答する主人公の思いやりの深さに胸を打たれます。
君が楽しいと僕は幸せ
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今よりも良い状況を
想像できない日も私がいるよ
I can't let you go
I just want you more
When you feel low and alone
You'd better let me know
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞にある通り、気分が滅入っている時には「今よりも良い状況を想像できない」こともあるでしょう。
そんな日にも「私がいるよ」と率直に語りかけています。
もう手放せないほど大切な存在だから「孤独を感じるときは教えて」と、自分に助けを求めてほしい気持ちを伝えています。
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You know I'm bad at explaining
But lately I've done some maturing
Won't you lean on me when you need
Something to lean on
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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この愛越しの前半の二文は「君は私が説明が苦手だって知ってるよね でも最近いくつか成長したんだ」と訳せます。
おそらく以前失敗した時は、言葉足らずだったせいで誤解されてしまったのでしょう。
後半では「頼りが必要になる時は私に寄りかかって」と告げているようです。
あの頃よりも成長した自分なら、今度こそ助けられるはずだから頼ってほしいと願っているのです。
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エンドロールの最後の最後まで
観たがる君の横顔が
正直言うと
僕の一番楽しみなとこ
楽しみなとこ
Hope I don't fuck it up
Hope I don't fuck it up again
≪BAD モード 歌詞より抜粋≫
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映画を観る時、いつも「エンドロールの最後の最後まで観たがる君」。
その横顔を見るのが「僕の一番楽しみなとこ」と明かしています。
どんなに面白い作品よりも、大事な人が楽しんでいる姿を見ていることが幸せなのです。
「Hope I don’t fuck it up again」は意訳すると「二度とあんな思いはしない」という言葉になるでしょう。
大事な人の何気ない素敵な姿を隣でずっと見ていられるように、絶対にしくじらないという決意が表れています。
「BADモード」で気分を上げよう
宇多田ヒカルの『BADモード』は、絶好調とはいえない状態にある大事な人への優しい思いが綴られた楽曲です。アップテンポの洗練された音楽と合わせて、落ち込んだ気持ちをそっと押し上げてくれるような温かみが感じられるでしょう。
デビューから第一線で活躍する宇多田ヒカルが発信する、愛情と思いやりが詰まった歌詞が気持ちを支えてくれますよ。