似ているようで似ていない?バンドと恋愛の対比に注目
『一生に一度愛してるよ』は、簡単に言うとバンドと恋愛の曲です。
恋愛をバンドに、バンドを恋愛に喩え、最終的には正反対のものとして描いています。
『一生に一度愛してるよ』の作詞作曲を担当した尾崎世界観独特の、皮肉が込められた言い回しにも注目ですよ。
それでは、さっそく歌詞の意味を紐解いていきましょう。
初期はもっと勢いがあったし尖ってたのに
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初期はもっと勢いがあったし尖ってたのに
最近なんか丸くなっちゃったからつまんないな
もうあの頃には戻れないんだね
だからいつもいつもいつもファーストばかり聴いてる
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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歌い出しのこちらの歌詞はバンドのことを言っているのでしょう。
クリープハイプのように活動歴が長いバンドは、最近好きになったファンもいれば、昔から長く応援してくれているファンの方もいます。
そんなバンドにありがちなのが「昔の曲の方が良かった」と思われることです。
これを「初期はもっと勢いがあったし尖ってた」のに、「最近なんか丸くなっちゃった」と尾崎世界観は表現しています。
「あの頃(ファーストを出した頃)のバンドの姿に戻ってほしい」というファンの心理が描かれているようです。
最近人気が出てきたけど結局デビュー曲が1番良かったと、ファーストを聴き続ける方も多いのではないでしょうか。
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初期はもっと思いやりがあって優しかったのに 最近なんか雑になってきて
寂しいな もうあなたの1番じゃないんだね
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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今度は恋愛についての部分に。
主人公の恋人は昔は思いやりがあって優しかったのに、最近雑になってきたようです。
この状態はまさにバンドとは真逆ですね。
バンドは「尖っている」→「丸くなる」
恋愛は「丸い(優しい)」→「尖る(雑になる)」
「もうあなたの1番じゃないんだね」という歌詞も、バンド部分の「ファースト=1番」とかけていることがわかります。
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でもこのままあたしを安心させて
ずっと同じがいいから
バンドと恋人が逆だったらな
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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1番で語ったバンドに対する思いと恋人に対する思いを比べた結果、このような結論に至ったようです。
バンドは丸くなっていき、恋人は尖っていく。
これが逆だったら、バンドに対しても恋人に対しても、不満が溜まることはないのかもしれないですね。
ファンや恋人に対しての疑いと信頼が込められた歌詞
2番では、そう上手くはいかない音楽活動や恋愛に関して書かれています。
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最近似たような曲ばっかりで飽きてきた
本当は新しい曲できてるんじゃないの
もうあの頃には戻れないんだね 相変わらず今もファーストばかり聴いてる
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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音楽活動を長く続けていると、リリースされる曲のサウンドや歌詞は、時の流れと共に徐々に変化していくもの。
しかし、初期の頃に比べて変化が見られると「丸くなった」と言われ、昔の同じような曲をずっと出していると「似たような曲ばかりでつまらない」と言われます。
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最近似たような毎日ばかりでもう飽きてきた
本当は新しく好きな人でもできたんじゃないの
ちなみに名前はコウキって言うんだけど それも皮肉だね
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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恋愛でも同じことが言えますね。
だんだん自分への扱いが雑になってきた恋人に対して不満を抱きつつも、変化がないと「似たような毎日ばかりで飽きてきた」という不満も生まれます。
コウキ=後期?
好きになった人の名前は「コウキ」、これを皮肉だと言っているのは「後期」とかけているからでしょう。バンドでは「初期(ショキ)」の曲ばかりを聴き続け、恋人に対しては「後期(コウキ)」に魅力を感じる。
この正反対の状況を尾崎世界観は「皮肉」だと表現しています。
尾崎世界観は以前、YouTubeの公式チャンネルでこの曲の歌詞について解説をしていました。
その時に語っていたのが、「バンドのファンは恋人でどちらも特別な関係で繋がっている。いつ離れていくかわからない疑いと信頼が混ざっている」ということです。
この特別な疑いと信頼が混ざった関係を、尾崎世界観は『一生に一度愛してるよ』で表現したかったのかもしれないですね。
昔からのファンは思わず反応してしまう歌詞に注目
また、尾崎世界観は新曲を出すたびに「新しいファンが増えてほしい気持ちはもちろんあるけど、昔からのファンに喜んでほしい気持ちもある」と話しています。
その気持ちが顕著に見られるのも、『一生に一度愛してるよ』の特徴です。
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もう一度あたしをドキドキさせて
もっと奥まで刺してよ
出会ったあの日は103です
一回も減らしたくない
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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ラストのサビ部分で書かれている「103」という数字は、恋人と出会った部屋の番号を指しているようです。
実はこの「103」は、クリープハイプが2013年にリリースしたアルバムに収録されている『ラブホテル』という曲の歌詞に登場する数字。
さらにその次の「一回も減らしたくない」という歌詞も、『ラブホテル』の「一回位減るもんでもないし」という歌詞にかかっています。
『ラブホテル』はどちらかというと「雑な恋愛」について書かれた曲でした。
一方で『一生に一度愛してるよ』では、出会ったあの日を思い出して「優しい恋愛」をしたいという解釈ができますね。
死ぬまで一生愛されてると思ってたよ
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もう一度あたしをドキドキさせて
もっと奥まで刺してよ
出会ったあの日は103です
一回も減らしたくない
≪一生に一度愛してるよ 歌詞より抜粋≫
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「バンドと恋人が逆だったらな いいな」という気持ちを述べたあとの、最後の文章に注目です。
「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」は、クリープハイプの1stアルバムのタイトルです。
「昔の方が良かった」や「最近丸くなった」というファンの声に対する皮肉を込めて、1stアルバムのタイトルを最後の歌詞にしたのかもしれませんね。
『一生に一度愛してるよ』はバンドを続けていくことの難しさが描かれた1曲
今回はクリープハイプの『一生に一度愛してるよ』の歌詞の意味を考察しました。
クリープハイプだけでなく、昔から好きで聴いているバンドがある方に、ぜひ聴いてほしい1曲です。
バンドに対するもやもやがある方もいるかもしれませんが、この曲を聴くことによってバンドマンの気持ちが少しは理解できるかもしれません。