「まいまいまいごえん」のタイアップ曲
新曲『ファラウェア』はサンリオによる『まいまいまいごえん』プロジェクトのタイアップ曲です。
歌詞を考察しやすくするために、まずは『まいまいまいごえん』について簡単にご紹介します。
『まいまいまいごえん』とは、16人の子どもたちと保育士による「心の成長痛」を描いた群像劇です。
漫画やゲームがあり、生きづらさを感じる現代に寄り添う物語性と魅力的なキャラクターデザインで人気を集めています。
新曲『ファラウェア』は、『まいまいまいごえん』に登場する16人の子どもたちのうち、「カナタ」というキャラクターを主人公にした楽曲です。
MVでもカナタのイラストが使われています。
カナタは人を困らせることが大好きないたずらっ子で、マイペースな性格のキャラクターです。
いつもぬいぐるみの「ヒナタ」を抱えていて、「ヒナタ」の発言を代弁しています。
今回は『まいまいまいごえん』のキャラクターであるカナタの特徴を踏まえながら、MVを含めた歌詞の意味を考察します。
「ファラウェア」はカナタとヒナタの曲?
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二人でずっとヒソヒソしてようね
気味悪いこと
目と目をじっと合わせてればいいね
狐にペッとつままれればいいね
≪ファラウェア 歌詞より抜粋≫
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冒頭の歌詞に出てくる「二人」という言葉は、『まいまいまいごえん』のカナタとヒナタを指すと解釈できそうです。
カナタは常に抱えているぬいぐるみ・ヒナタの発言を代弁していますが、普通はぬいぐるみが喋ることなんてありえませんよね。
ヒナタの発言を代弁するカナタの姿は、傍から見れば不気味にうつるでしょう。
「気味悪いこと」という歌詞は、カナタ本人が周りから気味悪がられていることを理解しながらも、ヒナタと話すのをやめられない様子を表現しているのかもしれません。
また「狐にペッとつままれればいいね」というフレーズには、「狐につままれる」という慣用句が使われています。
これは「狐に化かされる」あるいは「意外な事が起こって何が何だかわからず、呆然とする」という意味の慣用句です。
ヒナタが発言していると思い込む、つまりヒナタに化かされることで、過酷な現実から目をそらしたいというカナタの思いが表現されているのかもしれません。
カナタは妄想の世界で呆然としていたいと思うほど、過酷な現実を生きているのではないでしょうか。
カナタにとって、ヒナタは心のよりどころなのでしょう。
ヒナタに依存するカナタの狂気
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流されるな ぼくの大事
気まぐれには付き合えない
今は可否も何もないのだろう
全てが真っ暗になっていく
ハッタリやいたずらなど
罰当たりだ もうやめるよ
今までのこと謝ると救われると思ったの
≪ファラウェア 歌詞より抜粋≫
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MVでは「流されるな ぼくの大事」という歌詞と同時に、カナタがヒナタを抱きしめているイラストが表示されます。
歌詞の「ぼく」=カナタ、「僕の大事」=ヒナタだと解釈できそうです。
「全てが真っ暗になっていく」という歌詞が表示されるときのイラストは、カナタだけで、ヒナタの姿が見当たりません。
心のよりどころにしていたヒナタを奪われては、カナタは自分を保ってはいられなくなり、全てが真っ暗に見えてしまうのでしょう。
カナタがヒナタに抱く思いは、かなり狂気的なのかもしれません。
「ハッタリやいたずらなど 罰当たりだ もうやめるよ」という歌詞は、「ヒナタを返してもらえるなら、大好きないたずらも辞める」というカナタの強い気持ちを表現していると捉えられそうです。
ポップな色合いで展開されていたMVですが、この歌詞の後、闇を感じさせる赤黒いイラストが多くなります。
ヒナタを奪われたカナタが闇に溺れていく様子を表現しているのだと考察できそうです。
MVと歌詞に表現されるカナタの焦り
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見て見ぬ振りして
彼らは待ってくれないんだから
僕ら ここから出たい
絶対に出たい
≪ファラウェア 歌詞より抜粋≫
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「彼ら」は大人たちを指し、「僕ら」はカナタとヒナタを指すと解釈すると、カナタは「大人たちに頼らず、ヒナタと二人で闇の世界から出たい」と考えているのだと考察できます。
しかし、これらの歌詞が表示される際、MVにヒナタは登場しません。
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あらら 困ったな 困ったな
すぐに行かなきゃ 行かなきゃ
ごめんね なんて すぐ出ないね
君のことまで気にしてたら あらららららららら
≪ファラウェア 歌詞より抜粋≫
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MVで「すぐに行かなきゃ」という歌詞とともに表示されるのは、ヒナタではなく目玉の化け物のようなイラストです。
「君」=ヒナタだとすれば、「君のことまで気にしてたら あらららららららら」という歌詞は、ヒナタのことまで考える余裕がないほど、切羽詰まっているカナタの様子を表現しているのだと考えられます。
闇の世界から出たいと思うものの、ヒナタを連れていける余裕がないことに苦しむ、カナタの感情が伝わってくる歌詞とMVですね。
この歌詞とMVは『まいまいまいごえん』の漫画やゲームにおける、今後の展開を予言しているのかもしれませんが、ファンとしてはカナタが救われる展開を期待したいところです。
今後のストーリーから目が離せないでしょう。