Aimerが「あなたの番です 劇場版」主題歌を書き下ろし
2022年12月10日に配信リリースされた、Aimerの配信限定シングル『ONE AND LAST』。
2019年のテレビ放映時に大きな反響を呼んだ、田中圭と原田知世がW主演を務めたドラマ『あなたの番です』の劇場版主題歌として書き下ろされました。
Aimer自身のコメントによると「ONE AND LAST」は、ドラマのオープニング曲『STAND-ALONE』と合わせ鏡のような楽曲だそう。
その言葉通り、パワフルな曲調を引き継いでいたり関連のあるフレーズが用いられていたりと、ドラマ本編とパラレルワールドの世界を描いた映画との関係性が垣間見える主題歌となっています。
MVでは『あなたの番です』に出演している西野七瀬を主人公に、ストーリーが展開していきます。
どんな内容の楽曲になっているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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夢の中 ひび割れた声や 吐息の欠片たち
過去の嘘 秘めて
今 遠くの街で祈っていた
≪ONE AND LAST 歌詞より抜粋≫
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『STAND-ALONE』で主人公は夢と現実が曖昧だったようですが、この曲では夢と現実の区別がはっきりついていることが分かります。
「夢の中」では「ひび割れた声や吐息の欠片たち」が出てきているので、どこかつらく悲しいイメージの夢なのでしょう。
一方、現実でも「過去の嘘」を周囲に隠してひっそりと暮らしています。
今はその過去とは違う「遠くの街」で何かを祈りながら生活している様子が見えてきますね。
さよならってまた叫ぶの?
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探した線を描いても 失くした物は返らない
本当の事はわかんない その答えに意味もない
不安の渦 溢れだす
誓ったはずの ONE AND LAST
間違いだらけだと知って
≪ONE AND LAST 歌詞より抜粋≫
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いつか「失くした物」を探してみますが、もう自分の元に戻ってくることはありません。
「本当の事はわかんない」
つまり真実は不明だけど、たとえ明らかになっていたとしても「その答えに意味もない」と語っています。
むしろ知らないままでいいという考えであることが伝わってくるでしょう。
そんな風に割り切っているようで「不安の渦溢れだす」のは、あることを知ってしまったからです。
「誓ったはずのONE AND LAST」とあるように、主人公はある1つのことを最後に誓いました。
しかし大切にしていたそれが「間違いだらけだと知って」絶望し、不安に駆られているのです。
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もし生まれ変われたらなんて 言わないで
凍えそうなあなたを抱きしめた
ただ幸せを願うことが怖くって
壊れそうな世界から背を向けて
さよならって また叫ぶの?
さよならって ただ叫ぶの?
二度と離さない 守ってみせる
笑って見せてよ
≪ONE AND LAST 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞で出てくる「あなた」は「もし生まれ変われたら」と考えています。
生まれ変わりを考えてしまうのは、おそらく現実に満足していないからでしょう。
そのため主人公は、「もしもなんて考える必要はない。今のあなたで十分素敵だよ」と伝えるために「抱きしめた」のではないでしょうか。
「ただ幸せを願うことが怖くって」この世界から離れようとして「さよなら」と叫ぶ「あなた」。
過去にも告げられた別れをまた繰り返さなければならないのかと問いかけ、主人公は今度こそ「二度と離さない 守ってみせる」と力強く約束します。
だから「笑って見せてよ」という言葉に、主人公の「あなた」への想いや優しさが感じられますね。
あなたへの愛は変わらない
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微かに聞こえていても
知らない 何もない 何もない
息をひそめて 潜んだこの部屋には 何もない
堪えきれず流れだす
誓ったはずの ONE AND LAST
最愛 それだけを知って
≪ONE AND LAST 歌詞より抜粋≫
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2番のこの部分は『あなたの番です』のストーリーになぞらえているのでしょう。
部屋の外から物音や声が聞こえていますが、自分の身を守るために部屋に隠れている主人公は聞こえていないふりをしています。
「何もない」と強調されているのは、どこにも「あなた」がいないことを表しているのかもしれません。
そして恐怖や不安、悲しみに涙が「堪えきれず流れ出す」のを感じています。
「誓ったはずの ONE AND LAST」が「最愛」という気持ちと繋がっていることを考えると、結婚の誓いと解釈できますね。
誓ったはずなのに脆く崩れてしまった約束を深く悲しむと同時に、ただ純粋に愛していたのだという想いが伝わってきます。
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時を巻き戻すような夢を見せないで
零れ落ちた言葉に目を伏せた
絡みつく記憶の帳を脱ぎ去って
これがきっと最後だと決めつけて
さよならって また叫ぶの?
さよならって ただ叫ぶの?
何も変わらないままの子守歌
歌ってあげるよ
≪ONE AND LAST 歌詞より抜粋≫
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主人公はつらい過去を思い出させる夢や、誰かのネガティブな言葉に疲れているようです。
嘘や別れといった悲しいイメージしかない過去の記憶に思考が覆われて、主人公や「あなた」を苦しめています。
おそらく「あなた」はこれまで何度も「これがきっと最後だと決めつけて」一方的に別れを告げてきたのでしょう。
そんな「あなた」に愛と永遠を誓った主人公には、そのことが耐えられないのです。
過去ではなく今を一緒に生きていきたいと願っていると想像できます。
状況は変わってしまっても、自分の想いは初めから少しも変わっていないことが「何も変わらないままの子守歌」のフレーズに示されているように思えます。
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夢の中 ひび割れた声や 吐息の欠片たち
過去の嘘 秘めて
今 遠くの朝を祈っていた
≪ONE AND LAST 歌詞より抜粋≫
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ここでまた1番冒頭の歌詞が繰り返されますが、最後の一節が「今遠くの朝を祈っていた」に変わっています。
1番では現在を描いていたのに対し、ここでは「遠くの朝」つまり未来を祈っているようです。
その祈りには自分の未来に愛する「あなた」がいることも含まれているのでしょう。
「あなた」がずっと心にくすぶっているネガティブな気持ちから抜け出し、自分と未来を生きようと前進してくれる時を願う気持ちが見えてきます。
「あな番」の世界を音楽で感じよう
Aimerの『ONE AND LAST』は、切ない現実の中でも愛する気持ちを大切にする想いを感じられる楽曲です。実はタイトルの「ONE AND LAST」と「STAND ALONE」がアナグラムになっていることに気づかれましたか?
パラレルワールドは現実では知り得ない世界ですが、現実になり得た世界でもあります。
繋がりを持つ2曲の関連を紐解きながら考察すると、より『あなたの番です』の物語に引き込まれますよ。