クリープハイプ10周年記念に歌詞集と楽曲をリリース!
2022年4月18日、大人気ロックバンド・クリープハイプがメジャーデビュー10周年を迎えます。
この記念日に合わせ、書籍と楽曲という2つの特別なリリースが決定しました。
まず1つ目として、芥川賞候補作家でもある尾崎世界観が綴る歌詞を集めた初の歌詞集『私語と(読み方:しごと)』が河出書房より発売されます。
斬新な表現を使いながらも、誰もが情景を想像しやすいワードセンスは、尾崎世界観ならではの持ち味です。
不器用で等身大の主人公に、自身の状況や心情を重ねたリスナーも多いことでしょう。
生々しさを感じるほど赤裸々でありつつも芸術的に聴こえるのは、誰にでも経験のある日常を繊細かつリアルに綴っているからだと言えます。
人気の『左耳』や『社会の窓』から、最新アルバム収録曲の『幽霊失格』や『ナイトオンザプラネット』まで、歌詞集の採用曲数はなんと75曲。
そんな豪華な歌詞集の最後に掲載されている『exダーリン(読み方:イーエックスダーリン)』は、尾崎世界観がインディーズ時代から大切に歌い続けてきた楽曲です。
また、現在入手不可能となっているメジャー1枚目のアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の初回盤のボーナストラックとして収録されていた幻の名曲でもあります。
2つ目のリリースとして、そんな思い入れ深い楽曲をヨルシカのn-bunaがリアレンジし、バンドで新たに再録したバンドVer.と、尾崎世界観による弾き語り再録Verの2曲が、メジャーデビュー10周年記念日に同時配信リリースされることになりました。
この楽曲は現在大ヒット上映中の映画『ちょっと思い出しただけ』のラストシーンで、尾崎世界観演じる「男」が弾き語りしている楽曲としても、再度注目を集めています。
それでは、尾崎世界観が描く歌詞の魅力を『exダーリン』の内容から徹底考察していきましょう。
「exダーリン」は元カレへの想いを歌う
タイトルの「ex(読み方:イーエックス)」は英語で「元の・前の」という意味があり、特に元恋人のことを指す言葉として使われるスラングです。つまり『exダーリン』は元カレのことを表していて、ある女性が元カレへの想いを綴った曲だと分かります。
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ハニー 君に出会ってから色んな事わかったよ
セ・リーグとパ・リーグの違いとか マイルドとライトの違いとか
ハニー 君に出会ったから色んな事わかったよ
発泡酒とその他雑酒の違いとか 本当に好きな人とその他雑種の違いとか
≪ex ダーリン 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭では、主人公が元カレと出会ってからのことを思い出している様子が見えてきます。
「セ・リーグとパ・リーグ」は野球のことで「マイルドとライト」はタバコの銘柄。
興味がなかった野球やタバコのことなど、彼と知り合ったことで初めて知ったことがいくつもあったようです。
好きな人を通して見える世界が広がるということは、きっとよくあること。
「発泡酒」を好む彼がそれ以外のお酒を「その他雑酒」とひとくくりにしていたように、彼という「本当に好きな人」の存在が自分の中で大きくなり、それ以外の男性が「その他雑種」とまるで価値のないもののように見えていたことを明かしています。
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ねぇダーリン ねぇダーリン 今夜は月が綺麗だよ
四六時中思っている事は 今でもまだ好きだよ
ねぇダーリンねぇダーリン 今夜は月が嫌いだよ
怒った時頭をかく癖が 今は凄く愛しい
≪ex ダーリン 歌詞より抜粋≫
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サビで伝えているのは、彼女の今の想いです。
「月が綺麗」というフレーズは、夏目漱石が「I love you」の和訳として挙げた表現を連想させます。
今もまだ愛していて、しかも「四六時中思っている」のです。
その一方で「今夜は月が嫌いだよ」とも歌います。
未練を断ち切れない自分が嫌いなのか、心を捕らえて離さない彼が憎いのか、感情を持て余しているようです。
以前は嫌だった「怒った時頭をかく癖」も、見られない今となっては愛しく思えてしまうほど、彼への想いは募っています。
紐だけ残った携帯のストラップ
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ハニー 君に出会ってから色んな事わかったよ
ワインと焼酎の違いとか 麻美ゆまと柚木ティナの違いとか
ハニー 君に出会ったから色んな事わかったよ
アスカと綾波の違いとか あの娘とあたしの違いとか
≪ex ダーリン 歌詞より抜粋≫
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2番は交際開始から別れる前までを回想していると思われます。
主人公は「ワインと焼酎の違い」も知らない無垢な女性だったようです。
だからこそ野球やタバコ、お酒と夢中になれるものがたくさんある大人の彼に惹かれたのかもしれません。
「麻美ゆまと柚木ティナ」は元セクシー女優のことで、付き合っていくうちに彼の女性の好みを知ったのでしょう。
「アスカと綾波」はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の女性キャラクターで、こちらも彼の女性のタイプのことを指していると解釈できます。
そして、彼の好みを知っていくうちに、最後の「あの娘とあたしの違い」に繋がっていったのでしょう。
結局、自分は彼にとって「その他雑種」なのだと気づいたときの悲しみを思うと、胸が苦しくなります。
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悲しい色に染まった夕暮れが今日はやけに優しいな
あなたがくれた携帯のストラップ 大事な所はどっかにいって紐だけ残った
ねぇダーリン ねぇダーリン 今夜は月が綺麗だよ
四六時中思っている事は 今でもまだ好きだよ
ねぇダーリン ねぇダーリン 今夜は月が嫌いだよ
笑った時鼻をすする癖が 今でもまだ愛しい
≪ex ダーリン 歌詞より抜粋≫
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夜に向けて色を変えていく夕焼けは、感傷的になった主人公には優しくも見えます。
彼からもらった「携帯のストラップ」の紐だけが残っているという歌詞の表現は、まさに尾崎世界観らしいワード。
まだ彼女の心には彼への愛が残っているのに、肝心の本人が自分の元からいなくなってしまったことと重ねているのではないでしょうか。
ネックレスのように高価なものでなく、安価なストラップというところにも切なさが詰まっています。
2番のサビでは、付き合っていた頃好きだった「笑った時鼻をすする癖」を思い出して「今もまだ愛しい」と感じています。
断ち切らなくてはならない想いだと理解しながらも、度々思い返してはまた彼を愛してしまう主人公の複雑な感情が心に迫りますね。
尾崎世界観が綴る歌詞の魅力に
『exダーリン』は元カレへの切ない恋心を描いた、どこか懐かしさを感じる失恋ソングでした。楽曲としてはもちろん、歌詞を読むだけでも主人公の心情や空気感がイメージできます。
ぜひ歌詞集『私語と』と一緒に名曲『exダーリン』をチェックして、クリープハイプのメジャーデビュー10周年をお祝いしましょう!