映画「Adam by Eve: A Live in Animation」に書き下ろし!
『Eve』は2009年ごろより歌い手・ボカロPとして活動をはじめ、2019年にメジャーデビューしたシンガーソングライターです。
2020年には人気アニメ「呪術廻戦」のオープニングソングとしてリリースした『廻廻奇譚』が大ヒットし、一躍有名になりました。
2022年は『Eve』にフィーチャーした映画「Adam by Eve:A Live in Animation」の公開が決定。
その劇中歌としてEve本人が書き下ろしたのが、今回ご紹介する楽曲『退屈を再演しないで』です。
2022年3月に公開された同曲のMVのアニメーションと監督を務めたのは、Eveの人気曲「お気に召すまま」「トーキョーゲットー」のMVを手がけた『Waboku』。
名タッグが生み出した今回のMVでは、一体どのようなストーリーが描かれているのでしょうか?
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穿っては咲いた ブルー
ただこの間に割ってはランデブー
花言葉に柄にない飾り気ないと
絡み合った瞬間 だらだらしたくて
甘い 消耗 無いような
ふと毎晩想いを吐くような
きっと何回本気なモーション
なんたって今日は記念日バースデイ
≪退屈を再演しないで 歌詞より抜粋≫
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まずご覧いただいたのは冒頭の歌詞です。
これだけではやや難解ですが、MVを見ると同部分ではポニーテールの女の子が部屋で退屈そうに過ごす姿が描かれています。
部屋の様子をみると随分充実しているようですが、何か満たされないものがあるようです。
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裸になったって
何も見えちゃしない
言葉にしたって薄っぺらいの
悶々とした
夢の中のハイウェイは
温かく冷たい 灰色の正体暴きたい
≪退屈を再演しないで 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞からも主人公が悶々とした思いを抱えていることがわかりますね。
主人公は一体どうしたいのでしょう?
主人公が望むものとは?
まずはサビの歌詞をご覧ください。
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夢にまで見たような世界から明けて
大丈夫、甲斐性はないが
冗談じゃないさ 突き進もう
最終章の声も 溶かしてしまう生涯ね
ありふれた夜を聞かせてと
思い出すように吐く後悔を
≪退屈を再演しないで 歌詞より抜粋≫
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MVの冒頭では主人公が充実した部屋で退屈を感じている様子が描かれていました。
その満たされた生活がサビの「夢にまでみたような世界」だとすると、どうやら主人公はその生活から抜け出したことがわかります。
「最終章」というフレーズから満たされた暮らしをゴールにしていたと推測されますが、それを超えて先の世界へと突き進みたい衝動に駆られているようです。
具体的に何があったのか歌詞では描かれていませんが、ここで注目したいのがMVの描写。
サビの部分ではストレートヘアの女の子が登場し、主人公を翻弄する様子が描かれてます。
なんと主人公から突然木が生え、その木にリンゴが実る様子も…。
これはまさに旧約聖書に登場する「アダムとイブ」の世界観。
実は映画「Adam by Eve:A Live in Animation」は「アダムとイブ」の物語に由来する内容があるため、同曲にもリンクさせているのかもしれませんね。
ちなみにイブはアダムから作られたもの。
先に登場していたポニーテールの女の子がアダムだとすると、ストレートヘアの女の子はイブなのかもしれません。
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退屈を再演しないで
愛憎感の声も 溶かしてしまう生涯ね
あどけないブルー 滲んだ手と
思い出すように感じる音を
≪退屈を再演しないで 歌詞より抜粋≫
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「退屈を再演しないで」ということは「現在は退屈な状態ではない」ということ。
主人公はただ満たされただけの毎日から一歩前へ進むことを望んでいるようです。
女の子2人の関係とは一体…?
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明日はただ頷くだけ 彷徨う彼方へ
夕刻へと誘うメロウ
貴方もまたこんな風に 定まらぬまま
浮き足立つステップ イエローで
この前と同じなんて
何も得られやしない
言葉にしたって薄っぺらいの
悶々とした
夢の中のマイウェイは
淋しくて痛い 夢幻の正体暴きたい
≪退屈を再演しないで 歌詞より抜粋≫
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2番で歌われているのも、主人公がまだ答えを見つけられずに悶々としている様子。
同部分のMVではポニーテールの女の子がストレートヘアの女の子に対し、激しく何かを言う様子が映し出されます。
この2人は一体どんな関係なのでしょう?
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明日まだ僕が前を向けるのなら
大丈夫 勝算はないが
問題はないさ 突き進もう
答えなどないと 可笑しく笑う生涯ね
ありふれた夜を聞かせてと
思い出すように吐く後悔を
退屈を再演しないで
まだ終わらないで
≪退屈を再演しないで 歌詞より抜粋≫
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2回目のサビでは「まだ前を見れるなら突き進もう」という前向きな歌詞が歌われていますね。
これまでは満たされていても何か物足りなさを感じ、悶々と過ごしていた主人公。
しかし「答えなどないと可笑しく笑う生涯ね」というフレーズを見ると、答えがなくてもいいことに気が付いたのかもしれません。
この後は最初のサビが繰り返されて楽曲は終わります。
歌詞だけだと2人の関係はわかりませんが、MVの最後ではストレートヘアの女の子がポニーテールの女の子の手を引きどこかへ連れ出そうとする様子が描かれています。
そして最後の最後、ストレートヘアの女の子と似たような髪型の主人公が映し出されるのも注目のポイント。
この2点と「アダムとイブ」の成り立ちを踏まえて解釈すると、ストレートヘアの女の子はポニーテールの女の子が生み出した「理想」を擬人化した存在なのかもしれませんね。
だから主人公から生まれ、主人公の手を引いて望むところへ連れ出し、最後似たような髪型になっているのではないでしょうか。
楽曲に込められた想い
全体を通して難解な楽曲ではありますが、1つ分かるのは同作品の主人公が前へ進もうとしていること。「退屈を再演しないで」というタイトルからも分かるように、「つまらない日々には戻らない」「新たな世界へ羽ばたきたい」という想いが込められているのではないでしょうか。
また、仮に満たされた状態であっても、自分の本心が望む通りに生きていなければ「退屈」であることをMVが教えてくれているように思います。
今あるものや見せかけの裕福さに満足せず、自身の中にある熱い想いを大切にしようというメッセージなのかもしれませんね。
今回はMVに登場する2名の女の子にフォーカスしましたが、他にも2名ほどの人物が登場します。
また、歌詞に登場する「灰色」「ブルー」「イエロー」といった色が何を意味しているのかも気になるポイント。
ぜひ他の考察も楽しんでくださいね。