DECO*27の最新ボカロ曲は切ない失恋ソング
大人気ボカロP・DECO*27が2022年3月9日にリリースした8thアルバム『MANNEQUIN』は、「アイドルが全員初音ミクだったら…」という想いから制作されました。
2021年の大ヒット曲『ヴァンパイア』をはじめ、DECO*27の独特な言葉遊びが印象的なリリックと初音ミクの歌声の魅力がたっぷり感じられるアルバムとなっています。
そのラストを飾る新曲『ジレンマ』は、失恋した女性が二度と取り戻せない恋を追い続ける切ない恋愛ソング。
重い恋心を全面に押し出しながらも、軽快なサウンドによって中毒性の高い楽曲に仕上がっています。
どんな内容なのか、『ジレンマ』の歌詞の意味を詳しく考察していきましょう。
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はじまったばかりのおわり 重なっていく祈り
まだ漂ってる香り 夢なのかな
≪ジレンマ 歌詞より抜粋≫
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「はじまったばかりのおわり」というフレーズは、主人公の恋の終わりが始まってしまったことを意味しています。
恋人に別れを告げられた絶望の中、彼との幸せな日々を取り戻したいという叶わない祈りばかりが浮かんできます。
二人で過ごした部屋の中にはまだかすかに彼の香りが漂っていて、悲しい夢を見ているのかと現実を受け入れられないでいるようです。
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固まってしまってもう溶かせない 流せてたはずの涙は
やっぱ限界かもって顔を出す そう信じたいけど
もうどうしようもなくて 重たいね
きみ以外の誰を好きになればいい?
≪ジレンマ 歌詞より抜粋≫
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初めは自然と流れ落ちた涙も、今では固まってしまったかのように流れなくなりました。
いなくなった彼が自分の大切さを思い知って、「やっぱ限界かも」と戻ってくることを待っています。
しかし「そう信じたいけど」の言葉から分かる通り、彼が戻ってくることはもうないことにも気づいています。
この恋が元通りになることはないと分かっているのに諦められない、そんな主人公の気持ちがまさに「ジレンマ」と言えるでしょう。
あまりに重たい恋心を自分でも持て余している様子が伝わってきます。
「きみ以外の誰を好きになればいい?」という切実な言葉に、相手への愛の深さと喪失感の大きさを感じますね。
「くらえバンバンバン」に込められた意味
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不揃いのフォービート 整ってきたけど
そんなあたしが嫌い 慣れちゃうとか
「いつだって側にいてあげる」
「"会いたい"って言えば会いに行く」
そんな約束だけを置いて どこに出掛けたの?
≪ジレンマ 歌詞より抜粋≫
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「不揃いのフォービート」は彼から別れを告げられたショックで早くなった鼓動を指していると解釈できます。
それが時間の経過と共に落ち着いてきたことは、彼のいない生活に慣れてきている証拠。
そんな自分の変化に自己嫌悪していることが分かります。
付き合っていた時に彼が言った「いつだって側にいてあげる」「“会いたい”って言えば会いに行く」という約束は彼女の心に残っているのに、彼はどこにもいません。
「どこに出掛けたの?」という問いかけが、まだ彼が戻ってきてくれるのではないかと期待していることを示していて、余計に切ない気持ちにさせられます。
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くらえバンバンバン
ふざけないで どんだけあたしがきみに尽くしてきたかって
わかんないんでしょ わかんないんでしょ わかりたくもないんでしょ
くらえバンバンバン
地獄行きよ なんか言えば? でもね戻れない 戻れないの
≪ジレンマ 歌詞より抜粋≫
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サビの「くらえバンバンバン」は、彼女が彼に感情をぶつけている様子を表現しています。
今までどれだけ尽くしてきたか彼は全く分かっていないから、簡単に私を見捨てられるんだと不満が爆発。
「わかりたくもないんでしょ」と投げやりな態度に、彼女の愛情ゆえのいら立ちが垣間見えます。
そして、こんなに自分を愛してくれる恋人を捨てたのだから「地獄行きよ」と吐き捨てます。
とはいえ、この言葉の裏にはそれが嫌なら戻ってきたらいいのに、という焦がれるような想いがあると感じました。
「でもね戻れない 戻れないの」の歌詞は何を意味しているのでしょうか?
ひとつはどんなに願ってもどうせ彼は戻って来ないから、以前のような関係には戻れないという意味だと解釈できます。
また、彼が何と返そうと一人になった自分は、彼と出会う前の自分には戻れないという意味もあるのかもしれません。
恋をすることは、人の考え方や生き方まで変えてしまうほど、強い力を持っていると感じさせる歌詞です。
きみの“好き”の後遺症
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ねえきみの隣に いきたいな
きみ以外の誰か好きになれるとか、ない
くらえバンバンバン
きみのことがずっと好きでした いやそれは今もそうか
わかるでしょ わかるでしょ ねえなんとか言ってよ
くらえバンバンバン
ハグをしてよ ちゅっとしてよ でもね叶わない 叶わないの
治してよ 治してよ きみの"好き"の後遺症
≪ジレンマ 歌詞より抜粋≫
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一度は強気に出てみた主人公も「きみの隣にいきたいな」と、正直に今の気持ちをこぼしています。
そしてほかの誰かを好きになることはないと断言しているところに、想いの強さが表れていますね。
次に「くらえバンバンバン」と投げかけるのは彼への愛情です。
「きみのことがずっと好きでした」と告白し、別れた今もその気持ちは少しも変わっていないことを訴えかけます。
「ハグをしてよ ちゅっとしてよ」とねだりますが、それが叶わないことも分かっています。
「きみの“好き”の後遺症」というフレーズには、DECO*27らしいワードセンスが光っていますよね。
彼を深く愛してしまったせいで、別れても彼を忘れられず、次の恋に進むことができない状況を見事に捉えています。
こんなに好きにさせたのはそっちなんだから、早く戻ってきてこの苦しみから解放してほしい。
そんな期待と願望を込めて「治してよ」とすがります。
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あたしだけが好きだなんてきっついな
きみの忘れ方 あとで送っといて
いつかまた好きをくれることってある?
あたしの笑顔も あとで送っとくね
≪ジレンマ 歌詞より抜粋≫
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この部分の歌詞は一方通行の想いの苦しさを物語っています。
「きみの忘れ方 あとで送っといて」というフレーズは、どうすれば彼を忘れられるのか分からないという気持ちと、どんな内容でも連絡を取りたいという考えを表しているのでしょう。
どうしても彼を忘れられない主人公は「いつかまた好きをくれることってある?」と問いかけます。
彼から連絡をくれないなら「あたしの笑顔もあとで送っとくね」と、自分から連絡を取ろうとも試みています。
そして、彼が自分の笑顔を見てもう一度好きになってくれたらと願っているようです。
一途すぎる主人公の悲痛な胸の内に心を掴まれます。
過去曲のキャラクターが登場するMVにも注目
公式YouTubeチャンネルで公開された『ジレンマ』のMVディレクターは、盟友・Yuma Saitoが担当。アニメーションとCGを併用した映像には、これまでのDECO*27の楽曲や『MANNEQUIN』のキャラクターが一部登場し、ファンにとってたまらない演出となっています。
ぜひMVと合わせて楽曲をじっくり楽しんでくださいね。