全く異なるジャンルの2組が生み出した名曲
『今夜はブギー・バック』は小沢健二とスチャダラパーがコラボして、1994年3月にリリースされた楽曲です。
小沢健二の甘い歌声がメインの「nice vocal」バージョンと、スチャダラパーのポップなラップがメインの「smooth rap」バージョンの2種類のアルバムが同時リリースされたことでも当時話題になりました。
この2つのバージョンは曲の構成だけでなく、アプローチの仕方も全く異なっています。
これこそが、彼らが伝えたかった音楽の自由さなのかもしれないですね。
ボーカル部分が多くても、ラップ部分が多くても、ジャンルが定まっていなくても、聴く人が自由自在に音楽を楽しんでくれればいい。
そんな小沢健二とスチャダラパーの思いを感じることができますね。
28年前にリリースされた『今夜はブギー・バック』は、発売当時から現在までの間に数多くのアーティストがカバーをしています。
2016年には15ジャンル・全17組のアーティストが参加したショートムービー「今夜はブギー・バック / TOKYO CULTURE STORY」がファッションブランドBEAMSから公開されています。
小沢健二とスチャダラパーが自由に音楽の楽しさを届けた曲だからこそ、様々なジャンルのアーティストの元にも届き、夢のようなショートムービーが実現したのでしょう。
ストレートすぎる男性目線のバラード
ここからは、さっそく『今夜はブギー・バック』の歌詞の意味を考察していきましょう。
まず注目すべきはストレートな女性を思う歌詞です。
歌詞の中にダンスフロアやハーモニーが出てくることから、舞台はおそらく夜のクラブかどこかでしょう。
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クールな僕は まるでヤング・アメリカン
そうさ今 君こそがオンリー・ワン
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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そこで、主人公は自分にとって「オンリー・ワン」の女性に出会ってしまいます。
クールにキメている主人公ですが、騒がしい周りの状況など気にもせず、「君」のことしか見えていないようです。
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僕とベイビー・ブラザー めかしこんで来たパーティ・タイム
すぐに目が合えば 君は最高のファンキー・ガール
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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主人公は「君」に見事に恋に落ち、めかしこんでパーティにきたようですね。
周りの女性など気にもとめず、「僕」は「君」と目が合うことを願います。
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溶ろけるようなファンキー・ミュージック
心がわりの相手は僕に決めなよ
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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しかし曲の最後の方にこのような歌詞があります。
「心がわりの相手は僕に決めなよ」つまり、「君」には「僕」ではない好きな人が他にいるようです。
それがわかっていても男性は諦めずに、自分の元に女性が来てくれるのを待っていると考察できます。
『今夜はブギー・バック』はポップな雰囲気の曲調ですが、歌詞に注目してみると健気な男性目線の恋愛の歌だったと解釈できそうです。
言葉と音として捉えてもらうための自由な歌詞
次にスチャダラパーが歌っているラップパートに注目していきます。
歌詞に関しては本人たちも「俺って何も言ってねー」というほど深い意味はないそうです。
ただそれは適当に歌詞を書いているわけではありません。
言葉を音として捉えてほしい、音の面白さを感じてほしいという思いが、この曲には込められています。
また大勢で歌い、盛り上がることを想定して書かれている部分もありそうです。
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いっスねーっ イェーッ!! なんてねーっ
よくない コレ? コレ よくない?
よくない なくなく なくなくない?
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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たとえば「よくない なくなく なくなくない?」という部分などがわかりやすいですね。
歌いやすい簡単な言葉を使いつつ、きちんと語尾の部分で韻を踏む。
スチャダラパーの圧倒的センスを感じられます。
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ON AND ON TO DA BREAK DOWN
てな具合に ええ行きたいっスね
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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「ON AND ON TO DA BREAK DOWN」は、HIPHOPでよく出てくるフレーズです。
簡単に訳すと、「疲れ果てるまで騒ごうぜ」という意味。
まさにパーティにピッタリのフレーズです。
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STOP CHECH IT OUT YO MAN
キミこそスゲーぜ BOSE MY MAN
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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「MY MEN」もHIPHOPでよく使われるフレーズですが、日本語ではなかなか似たような表現がありません。
しいていうならば「やあ、親友!」といったところでしょうか。
当時あまり世間に浸透していなかったHIPHOPというジャンルが、『今夜はブギー・バック』によって、多くの人に認識されたと言っても過言ではないでしょう。
クセになる独特な曲構成とテンポ感で、老若男女問わず幅広く人気を集めた名曲です。
オザケンパートのリズミカルな歌詞に注目
最後に小沢健二が歌っているパートを見ていきましょう。
『今夜はブギー・バック』はスチャダラパーとのコラボということもあり、小沢健二が歌っているパートでも多く韻が踏まれています。
ゆっくりなテンポの中にも、思わず体を揺らしてしまうリズミカルな部分があるのです。
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ダンスフロアーに華やかな光
僕をそっと包むようなハーモニー
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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こちらの歌詞は『今夜はブギー・バック』の舞台となっている、夜のクラブの雰囲気をゆったりとした歌い方でわかりやすく表現しています。
「光」と「ハーモニー」の語尾の部分で韻が踏まれていますね。
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最後にはきっと 僕こそがラブ・マシーン
君にずっと捧げるよファンタジー
≪今夜はブギーバック(nice vocal) 歌詞より抜粋≫
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この曲の中に多く見られる表現ですが、「僕」に関する歌詞と「君」に関する歌詞が交互に出てくることで、「僕」と「君」との気持ちのすれ違いが読み取れます。
さらに韻が踏まれていることによって、その2つの文章がセットになっているようにも解釈できそうです。
『今夜はブギー・バック』は音楽の自由さと音の楽しさを教えてくれる楽曲だった
今回は小沢健二とスチャダラパーのコラボ曲『今夜はブギー・バック』の歌詞と共に、楽曲が愛され続ける理由を考察しました。曲のいたるところに遊び心を感じられるハイセンスな楽曲でしたね。
異例ともいえる、ゆったりしたバラードとリズミカルなHIPHOPの融合。
これからも往年のヒット曲として愛され続けるでしょう。
歌詞をどう捉えるか、音楽をどう楽しむかは人それぞれ。
自分なりの考察をして、『今夜はブギー・バック』の世界観を楽しんでくださいね!