デビュー24周年で贈るダンスナンバーの意味を徹底解釈
浜崎あゆみがデビュー24周年を記念してリリースしたニューシングル『Nonfiction』は小山寿作曲、tasuku編曲によるR&Bグルーヴを感じさせるクールなダンスナンバーとなっています。
特に歌詞は現代を生きる全ての人にストレートに問いかける強烈なメッセージが印象的で、ファンからは“あゆらしい曲“と話題に。
また、360度ピンク一色の空間で踊るインパクトのあるMVにも惹きつけられますよね。
歌詞とMVの内容から浜崎あゆみがこの楽曲で伝えたい思いを考察してみましょう。
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Zzz... 浮かない顔してるのは
鏡のあなた自身
この頃ちょっと狂いすぎてる
だから嘘はすぐにめくれる
引き換えに犠牲にした
モノとかあるのかなって
マジで言ってんなら
Are you kidding me
≪Nonfiction 歌詞より抜粋≫
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主人公が対峙しているのは、周囲の人を「浮かない顔」をしていて退屈そうだと思っている人たちのようです。
しかし、本当に浮かない顔をしているのは鏡に映る彼ら自身。
「Zzz…」は眠りを表す表現なので、現実を正しく見れていない状態はまるで眠っているようなものだと言っているのかもしれません。
その人たちは自分をよく見せようと嘘で自身を覆っていますが、嘘に嘘を塗り重ねているために綻びが生じ、本当の自分が見えてしまっています。
MVに登場する脈打つ心臓のモチーフは、人生そのものや思い通りにならない日常の緊張感のようなものを示しているように感じました。
後半の歌詞で、彼らはほかの人の様子を見て「引き換えに犠牲にしたモノとかあるのかな」と疑問に感じています。
自分は良い暮らしをするために時には何かを犠牲にしながらも様々なものを手に入れているけれど、きっとみんなはそうやって努力していないでしょと周囲を低く見ているようですね。
そんな態度の人たちを「Are you kidding me(冗談でしょ・からかわないで)」と強く非難しています。
たとえ他人から見れば平凡な人生だろうと、苦労せず生きている人はいません。
その人の人生の価値を決めていいのは本人以外の誰でもないということが伝わってきます。
成功が人生のゴール?
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成功が人生のゴールですか?
その成功って何ですか?
枠にはまらないのは罪ですか?
その他大勢なら安心ですか?
≪Nonfiction 歌詞より抜粋≫
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世の中には成功者かどうかが人の価値を決め、成功者でなければ負け組と見なす人がいます。
この部分はそうした風潮に対して「本当に成功が人生のゴール?」「何をもって成功と呼ぶの?」と問いかける歌詞になっていますね。
MVでは成功の象徴として、ホテルのプレジデンシャルスイートでパーティーをして騒ぐ男女が映し出されています。
さらに、枠にはまらず世間一般の考え方とは違う生き方をする人を認めようとしない人も少なくありません。
個性を出すよりも「その他大勢」の中の一員であれば安心というような社会の傾向に「これがあなたの言う“成功”なの?」と問題提起を投げかけてきます。
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So oh 独りは確かに孤独だけど
自由も無限だった
制限されるにつれ分かったのは
なんにしろ孤独は消えない
正直もんがバカをみる
なんて良く言ったもんだわ
鵜呑みにするなら
You're full of shit
≪Nonfiction 歌詞より抜粋≫
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この部分からすると、主人公はその他大勢の人と群れるのではなく「独り」でいることを選んだ人なのでしょう。
孤独を感じて寂しく思う瞬間もありましたが「自由も無限」で何でも挑戦できたとこれまでの人生を振り返ります。
世の中の流れに合わせて制限される生活を送ってみて分かったことは、どんな生き方をしても「孤独は消えない」ということ。
豪華なパーティーをして多くの人に囲まれていても、心を満たしてくれるのは人や物の数ではないと気づいたようです。
うさぎのモチーフが登場するのは、うさぎが孤独に耐えられないと言われるからだと解釈しました。
誰しも孤独と戦いながら生きていることを象徴していると思われます。
カメラに値踏みするような目線を向ける人たちは、おそらく正義を貫こうとする人に対して「正直もんがバカをみる」と心の中で笑っている人たちを表現しています。
確かに正直に行動する人ほど損をして、反対に嘘や忖度でうまく立ち回っている人ほど得をしているように見えるのは事実です。
しかし、本当にこの法則は崩れないのでしょうか?
「You’re full of shit」は「でたらめを言うな・ふざけるな」という意味です。
良くも悪くも必ずそれぞれの生き方にしかるべき報いがあることを主人公は信じています。
作り物ではない現実を受け入れて
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人の幸せが嫉ましいですか?
見えてるのは全てでしょうか?
画面上だけで決めてませんか?
果たしてそれはリアルでしょうか?
≪Nonfiction 歌詞より抜粋≫
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人の幸せを妬んでばかりいる人には「見えてるのは全てでしょうか?」と尋ねます。
きっと周囲が知らないだけで、その幸せを得るまでに多くの苦労や努力したはずです。
それなのに表面的な結果だけを見て、ただ羨ましがるのはお門違いでしょう。
ネット社会の現代では、画面に映るものだけで良し悪しを判断しがちになっています。
しかし、少し立ち止まって、見ているものが本当にリアル(現実)で正しいのかと考えてみることも必要なのではないでしょうか。
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You say 「No!」「No!」
what you don't believe
生きるのは誰だってしんどい
I say 「Yes!」「Yes!」
what I do believe
We gotta be careful what's fiction
What you do believe
≪Nonfiction 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞の前半部分を要約すると、「否定してばかりいるあなたは信じられないと思うけど生きるのは誰だってしんどいんだよ」となるでしょう。
「We gotta be careful what’s fiction(フィクションには注意して)」という言葉からは、理想と現実は違うことや耳障りの良い話を真に受けて余計に苦しい目に遭う人がいることも分かります。
フィクションの世界のように楽に生きられる道はないことを痛感させられるでしょう。
MVの縦横無尽に行き交う人たちの様子は社会の縮図と思われます。
似たような服を着ていますがそれぞれの動きは異なるので、一人として同じ人生を歩む人はいないということが読み取れます。
誰かの意見ではなく「あなたは何を信じるの?」という問いかけの答えを考えさせられますね。
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You say 「No!」「No!」
what you don't believe
完璧じゃないから美しい
I say 「Yes!」「Yes!」
what I do believe
We gotta be careful what's fiction
≪Nonfiction 歌詞より抜粋≫
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「完璧じゃないから美しい」というフレーズは、人を肯定する温かい言葉です。
自分の失敗や間違いにがっかりすることがきっと誰でもあるでしょう。
それでも、そうした弱さがあるからこそ懸命に生きる姿が美しく思えるのではないでしょうか。
人生は誰に作られたのでもない「Nonfiction」の世界です。
現実から目を逸らさずありのままの自分を受け入れる時、人は本当の意味で良い人生を送れるのかもしれません。
「Nonfiction」の世界に入り込もう
浜崎あゆみの『Nonfiction』の歌詞は、世の中の考えに流されて生きていていいのかと訴えかけてきます。これはこれまで多くのCMソングやテーマ曲を手がけ、数々のヒット曲を生み出してきた浜崎本人が感じてきた気持ちなのでしょう。
この曲をきっかけに、改めて自分だけの人生をどう歩んでいくか真剣に考えてみませんか?