映画主題歌やCMソングでおなじみのサザンの人気シングルをチェック
日本が誇るロックバンド・サザンオールスターズは、これまで多くの名曲を世に送り出してきました。
なかでも人気の高いヒット曲の1つに、1990年リリースの28枚目のシングル『真夏の果実』があります。
桑田佳祐作曲・作詞のこの楽曲は、ゆったりとしていて心地良いアコースティックサウンドと切ない歌詞が心を掴むラブバラードとなっています。
桑田自身が監督を務めた映画『稲村ジェーン』の主題歌で、のちにドラマ挿入歌やCMソングとしても多く起用されてきました。
30年以上愛される魅力とは何なのか、歌詞の意味を考察しながら探っていきましょう。
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涙があふれる 悲しい季節は
誰かに抱かれた夢を見る
泣きたい気持ちは 言葉に出来ない
今夜も冷たい雨が降る
こらえきれなくて ため息ばかり
今もこの胸に 夏は巡る
≪真夏の果実 歌詞より抜粋≫
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タイトルに「真夏」と入っている楽曲ですが、真夏のことを歌った曲ではないようです。
主人公が過ごしているのは「涙があふれる悲しい季節」。
「誰かに抱かれた夢を見る」というフレーズは相手が漠然としていますが、おそらく思い浮かべている相手はただ一人です。
「君」や「あなた」という言葉で表さないことで、いっそ忘れたいと自分を誤魔化す気持ちや、その人にまだ心を奪われていることを知られたくないといった複雑な感情が込められているように感じます。
「今夜も冷たい雨が降る」とは、長雨になりやすく寒さを感じる秋雨を指しているのでしょうか。
秋は特に感傷的になりやすい季節なので、真夏との対比で言葉にできないほどの寂しい気持ちがより伝わってきますね。
それでも、泣きたいけれど泣くに泣けず、「こらえきれなくてため息ばかり」というところに主人公の不器用さが表れているように思えます。
その心にあるのは、ある夏に経験した恋です。
もう現実には戻って来ない人を想って、心の中だけで忘れられない季節を繰り返し思い返しています。
四六時中も好きと言って
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四六時中も好きと言って
夢の中へ連れて行って
忘れられない Heart and Soul
声にならない
砂に書いた名前消して
波はどこへ帰るのか
通り過ぎ行く Love and Roll
愛をそのままに
≪真夏の果実 歌詞より抜粋≫
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サビでは「四六時中」常に「好きと言って」、ただ幸せだけを感じる「夢の中へ連れて行って」と歌います。
この歌詞は、相手にそうしてほしいと願っていると捉えることもできれば、自分がそうしたいと願っているとも解釈できるでしょう。
さらに、歌詞全体を通しても「僕」や「私」と主人公の性別を表すようなフレーズは、一切使われていません。
あえて性別を固定しない歌詞になっているので、どのリスナーも自分のこととして聴けて、共感できるのです。
主人公は夏のひと時だけ触れ合った人のことを、身も心も忘れられずにいます。
「声にならない」のは、きっとその想いがあまりにも強くて胸が締めつけられるからです。
波打ち際の砂に書いた二人の名前を、波が掻き消してしまいます。
それはまるで、愛する人が突然いなくなってしまった現状を表すかのようです。
「波はどこへ帰るのか」と問いながら、恋人はどこへ行ってしまったのかと考えているのでしょう。
そして同時に、今自分の中にある恋心もいつか消えていくのだろうか…と考えているとも解釈できます。
寄せては返す波に、揺らぐ自分の恋を重ねる表現が美しいですね。
続く「Love&Roll」はそれぞれ「愛」と「転がる」という意味なので、組み合わせて「愛が流れ落ちる」という意味と考察できそうです。
愛は簡単に自分の手から離れてしまうものだから、どうかいつまでもこの愛が留まっていてほしいと願う様子が垣間見えます。
「真夏の果実」の意味とは
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マイナス100度の太陽みたいに
身体を湿らす恋をして
めまいがしそうな真夏の果実は
今でも心に咲いている
遠く離れても黄昏時は
熱い面影が 胸に迫る
≪真夏の果実 歌詞より抜粋≫
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「マイナス100度の太陽」というフレーズは、様々な解釈ができるでしょう。
熱くて眩しいはずなのに凍てつくように冷たいということは、身体は熱くなるのに心は冷めている、一線を引いた距離感を表現していると考察できます。
また別の可能性として、現実ではありえないことを象徴しているとも考えられます。
割り切った関係だったはずなのに、自分の世界がひっくり返るかのような劇的な恋になったことを示しているのかもしれません。
タイトルでもある「真夏の果実」は、主人公自身の内に育った恋心や、恋した相手の存在そのものを表しているのでしょう。
また桑田佳祐の歌詞の傾向を考慮すると、男女の性を匂わせるメタファーとも取れます。
熟れた果実に、自身が溺れた相手の身体を重ねているのではないでしょうか。
そうして「めまいがしそう」なほど熱く燃え上がった想いは、独りになってからも枯れることなく根づいています。
その証拠に遠く離れた今も、いつかの黄昏時に見た相手の熱い眼差しや表情が頭を過り、胸を熱くしています。
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四六時中も好きと言って
夢の中へ連れて行って
忘れられない Heart and Soul
夜が待てない
砂に書いた名前消して
波はどこへ帰るのか
通り過ぎ行く Love and Roll
愛をそのままに
こんな夜は涙見せずに
また逢えると言って欲しい
忘れられない Heart and Soul
涙の 果実よ
≪真夏の果実 歌詞より抜粋≫
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ここでは「夜が待てない」くらい強く相手を求めていることも伝わってきますね。
そして、こんな寂しい夜には「また逢える」と再会を約束して、心を癒してほしいと決して叶わない願いをこぼします。
もう無理だと分かっていても、忘れることはできません。
大きく実った恋心は今や、涙に濡れて「涙の果実」となってしまいました。
桑田佳祐が綴る優しい世界観に浸って
サザンオールスターズの『真夏の果実』は抽象的な歌詞だからこそ、聴く人たちがそれぞれの解釈で意味を捉えて自分自身の恋や気持ちに当てはめることができます。そして雨や海のような誰もが覚えのある自然の風景が演出されていて、恋が持つ美しさと切なさが色褪せず身近なものとして心に迫ってきます。
優しい音楽と言葉で失恋の苦しみをそっと浄化してくれるようなサザン屈指の名曲です。
1978年6月25日にシングル『勝手にシンドバッド』でデビュー。 1979年『いとしのエリー』の大ヒットをきっかけに、日本を代表するロックグループとして名実ともに評価を受ける。 以降数々の記録と記憶に残る作品を世に送り続け、時代とともに新たなアプローチで常に音楽界をリードする国民的ロ···