「ベルベットイースター」の意味とは
『ベルベット・イースター』はユーミンが音楽プロデューサーの松任谷正隆と結婚する前、荒井由実名義で活動していた頃に書き下ろした楽曲です。
作詞・作曲を担当したのはユーミン本人で、1973年に発売されたファーストアルバム『ひこうき雲』に収録されました。
当時の歌謡曲はフォークソングが主流だったこともあり、感傷的な歌詞と優しいピアノの旋律が印象的な曲は、ニューミュージックとして親しまれたようです。
また、1976年に発売された『翳りゆく部屋』のB面としてシングルカットもされています。
タイトルに使用された「ベルベット」とはパイル織物の一種で、柔らかくて肌触りの良い織物のことです。
レーヨンや絹などの上品な織物として知られ、フォーマルドレスやカーテンに使用されています。
「イースター」とは十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日後に復活したことを祝う「復活祭」のことです。
日本ではあまりなじみのない言葉ですが、キリスト教においてはクリスマスよりも重要なイベントとなっています。
語源は古代ゲルマン神話の春の女神「エオストレ」に由来するといわれることから、春の訪れを祝うという意味も含まれているようです。
イースターは「春分の日の後、最初の満月の次の日曜日」と定められており、4月中旬頃に行われます。
「ベルベット」が高級で上質な生地であること、「イースター」はキリストの復活を記念した祭りであることから、『ベルベット・イースター』は「特別で重要な日」であることを意味しているのではないでしょうか。
イースターはキリストの復活祭
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ベルベット・イースター
小雨の朝
光るしずく
窓にいっぱい
ベルベット・イースター
むかえに来て
まだ眠いけど
ドアをたたいて
≪ベルベット・イースター 歌詞より抜粋≫
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季節は春、小雨が降る日の朝。
『ベルベット・イースター』の主人公である「少女」は、大人と子供の狭間で揺れ動く多感な時期を過ごしているのでしょう。
「光るしずく窓にいっぱい」は柔らかい光が降り注ぐ中、雨が優しく窓を叩く情景が浮かぶようです。
微かに光りながら窓をしたたり落ちるしずくを見つめながら、感傷に浸っているのかもしれません。
少女が「むかえに来て」「ドアをたたいて」と願っているのは誰なのでしょうか。
きっと、会えなくなってしまった大切な人なのでしょうね。
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空がとってもひくい
天使が 降りて
来そうなほど
いちばん好きな季節
≪ベルベット・イースター 歌詞より抜粋≫
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「空がとってもひくい」の後に「天使が降りて来そうなほど」と続きます。
空がとても低いのはネガティブなイメージですが、「天使が降りてきそう」という表現を加えることにより、喜ばしいことだということが分かります。
覆い被さる雲から差し込むわずかな光に希望を見出す少女にとって、春が特別な季節だということが分かります。
柔らかな日差しの中に、天使が舞い降りる情景を思い描いているのかもしれません。
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いつもと ちがう
日曜日なの
≪ベルベット・イースター 歌詞より抜粋≫
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「いつもとちがう日曜日」は、イースターを指しているでしょう。
春は最も好きな季節であり、イースターは特別な日。
少女にとってなぜ「最も特別な日」なのでしょうか。
迎えに来てほしい大事な人とは?
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ベルベット・イースター
きのう買った
白い帽子 花でかざり
ベルベット・イースター
むかしママが好きだった
ブーツはいていこう
≪ベルベット・イースター 歌詞より抜粋≫
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特別な日は着飾って出掛けたいものです。
「白い帽子 花でかざり」という表現から、若い女性であると考察できるでしょう。
「昔ママが好きだったブーツはいていこう」は、母親が亡くなったことを連想させます。
少女が母親を亡くしたのはまだ幼いころだったのでしょう。
母親のブーツが履けるほどに成長しても心は成熟しきっていない。
つまり、少女は10代半ばから20歳前後の女性だと考えられそうです。
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いつもと ちがう
日曜日なの
≪ベルベット・イースター 歌詞より抜粋≫
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少女にとってイースターは亡くなった母親を身近に感じられる「特別な日曜日」。
目には見えなくても母親の愛を感じるのでしょう。
それは少女の心を照らす灯となり、この世界を生き抜く力となるでしょう。
「ベルベット・イースター」は母親を想う特別な祝祭
今回は松任谷由実のファーストアルバム『ひこうき雲』に収録された楽曲『ベルベットイースター』の歌詞の意味を考察しました。復活祭であるイースターに母親を想う少女の、繊細な感情が描かれていると思います。
イースターが特別な日であることを表現するため、「ベルベット」というワードを選んだユーミンのセンスに脱帽です。
『ベルベット・イースター』はサブスク配信もされているので、ぜひチェックしてみてくださいね。