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【インタビュー】にしな「青藍遊泳」は、自由にどこまでも泳いでいける気持ちにさせてゆく歌

7月27日には、ニューアルバム『1999』の発売も控えているアーティストのにしなが、『青藍遊泳』を配信リリース。同楽曲が生まれた背景や込めた想いを語ってくれた。

強い意志を持ってというよりも、音楽で生きていくことがわたしの中では自然なことでした。

──『青藍遊泳』には、新しい世界へ旅立つ前に、大切な仲間たちとの思い出を作る様を歌にしています。まずは、この楽曲が生まれた背景から教えてください。


にしな:わたし、音楽活動を始めた当初から、弾き語りで自分の歌を届けています。学生時代にはバンドを組んだりセッションユニットとしても活動をしていました。でも、今から2年くらい前、グループ活動を辞めて「これからは一人で活動していこう」と決め、今の(プロとしての)道へ進みました。そのときに書いたのが『青藍遊泳』になります。

もう少し具体的に言うと、当時行っていたグループ活動最後のライブをやり終えたとき、お世話になっていたスタッフさんが、会場BGMとしてユニコーンさんの『素晴らしい日々』を流してくださいました。その曲に触れ、気持ちを動かされれば、歌詞の一節にあった<君は僕を忘れるから そうすればもう すぐに君に会いに行ける>の言葉が胸に刺さりました。新しい道へ旅立つうえで、この曲を贈ってもらった身として、「みんなのことを瞬間的に忘れちゃうくらい、自分のやるべきことや未来に夢中になっていかなきゃ」「そんな自分になりたい」と思い、その気持ちを歌にしようと書いたのが『青藍遊泳』です。


──最初に『青藍遊泳』を聴いたとき、田舎から夢を求めて上京することを決意。その旅立ちに当たって書いた歌かなと想像を巡らせていました。でも、にしなさんって東京育ちですよね。田舎から旅立つに当たって書いた歌ではなかったんですね。

にしな:わたし自身は東京育ちですし、『青藍遊泳』は、先に語った背景があって生まれた曲ですけど。自分自身、いつも「いろんな形や思いを持って誰かの歌になれたらいいな」という気持ちで曲を作っているから、夢を追いかけて上京する人など、その人自身の気持ちと重なる歌になれているのなら、そんな嬉しいことはないです。


──グループを卒業してと語っていましたけど。一人で活動しようと決めた理由も気になります。

にしな:そもそも音楽活動を始めたとき、まわりに音楽をやっている人がいなかったから、自然と弾き語りのスタイルで始めました。それが、高校時代の頃。大学に入って音楽仲間が増えてからは、誘われるままにバンドやユニット活動も始めましたが、でも、平行して一人での活動も続けていました。

同じ音楽好きな人たちとバンドやユニット活動を行うのは、すごく楽しかったです。わたしは、当たり前に音楽で生きていこうと決めていましたけど、メンバーみんな学生だったという理由もあって、留学や就職など、それぞれが自分の未来のことも見据えていました。だから、みんなの熱量を同じにしながら活動を続けていくのは正直難しかったですし、それぞれに新しい道へ旅立つ理由もあって、グループを解散。自分一人で音楽の道を追求しながら、今に至っています。


──にしなさん自身は、音楽で食べていくと決めていたわけだ。

にしな:強い意志を持ってというよりも、それが、わたしの中では自然なことでした。当時の音楽仲間とは、今も会っていますし、それぞれが自分の道を歩めば、それぞれの話を聴いていると、その人自身がキラキラと輝いて見えてきます。

『青藍遊泳』には、自分の道を進みながら頑張っている仲間たちの背中を見たときに眩しい輝きを覚えたように、みんなも自分のことを見たときに、「あいつも頑張ってるな」「今でも夢を追いかけながら輝いてるな」と思ってもらえる自分でいたい。そういう思いも込めています。


同じ体験ではなくとも、自分の気持ちと重ね合わせ聴いてもらえたり、自由に想像を巡らせてもらえることはすごく嬉しいです。

──『青藍遊泳』は、楽曲を生み出して以降ずっと…。


にしな:アンコールの最後など、ライブの中でも『青藍遊泳』を歌ってきたし、今も、歌い続けています。


──楽曲が誕生した当初の気持ちは、今も変わってないですか?

にしな:そこは変わってないです。これは『青藍遊泳』に限らず、自分で作った楽曲のどれにも言えることですけど。ライブで一つ一つの楽曲を歌うたびに、その曲を書いた当時の気持ちに連れ戻されることは多いです。もしかしたら今後、歩んできた時間や経験によって捉え方の変わる歌が出てくるかも知れませんけど。今はまだ、どの曲も生まれた当時の気持ちに自分を戻してくれます。『青藍遊泳』を歌うたび、「もっともっと前に進みたい」と思っていたあの当時の自分の気持ちは、今も甦ってきます。


──『青藍遊泳』を聴いていると、頭の中へ鮮明に映像が浮かび上がります。それくらい、自分の気持ちと重ね合わせやすい歌だと感じました。にしなさんは、映像を思い浮かべやすい内容から、「これはこういう解釈かな?」と想像を巡らす歌まで、いろんな視点で歌詞を書いていますよね。

にしな:作詞も作曲もそうですが、そのときのモードを楽曲に反映していくことが多いです。そのときごと、具体的な心情を記すこともあれば、俯瞰で捉え、想像を巡らせる言葉を記すこともあるように、そのときごとの自分の書きたいモードによって、楽曲の生まれてゆく姿も変わっていくんだと思います。


──最初に『青藍遊泳』を聴いたときは、てっきり体験談だと思ったくらい、歌詞に記した様が鮮明に頭の中に映し出されました。でも、決して歌詞と同じ体験をしてきたわけでは…。

にしな:ないです。『青藍遊泳』に書いたような体験をしたわけではないですけど。そうやって自分の気持ちと重ね合わせ聴いてもらえたり、自由に想像を巡らせてもらえるのはすごく嬉しいです。わたし自身、聴きながらいろんな景色が頭の中に浮かぶ楽曲が好きだからこそ、自分の曲でも、そう思ってもらえるのは本当に嬉しい。実際に楽曲を作るときも、「この曲が、聴いた人たちの中にどんな景色を思い浮かばせるのかな?」と考えることもあります。


──にしなさん自身、『青藍遊泳』の中でとくにポイントに置いた歌詞があれば教えてください。


にしな:2番のAメロへ記した「尾鰭を揺らし もがいている 赤い奇跡を僕らは見つけた この先々に海は無くとも 誰も信じてはくれなくても」には、自分の強い意志を重ね合わせました。
それまで何も経験のない子が、突然「わたしは歌手になりたい」と言っても、「絶対になれるよ」と言ってくれる人って、まずいないと思います。誰もが「なりたい」という気持ちを胸にゼロの状態から夢を追い求め、いろいろもがきながらも、自分の思いを信じ続けることで、ようやく「赤い奇跡」を見つけたり、手にしていける。そういう、「信じ続ける気持ちの大切さ」を、ここの歌詞には込めています。

その夢が何であれ、誰もが平等にゼロの状態からスタートを切ります。そこから、どれだけその気持ちを信じ続けていけるか、好きなことをやり続けられるのか。わたし自身は、「好き」という気持ちを積み重ねながら今、ここにいます。だからこそ、そう思い続ける気持ちが大切だとも思っています。



自分の好きなところへ向かって泳いでゆくうえで、心を押してゆく歌になれたら嬉しい。

──『青藍遊泳』を聴いていたら、にしなさんのいろんな楽曲を耳にしたい気持ちにもなっていました。『青藍遊泳』は、7月27日に発売するアルバム『1999』の先行リリース作品になりました。そこは、狙いを持ってのことだったのでしょうか。


にしな:そう思ってもらえたのは嬉しいですけど。ここへ至るまでに配信リリースしてきた曲たちも、今回の『青藍遊泳』もそうですが、「今、この曲を形にしたい」と思って出したように、たまたまその時期だったというのが自分の中では一番しっくりきています。ただ、「前に進みたい気持ち」を歌にしている面で『青藍遊泳』は、新しいアルバムを出す時期に相応しい、今のにしなを前へ前へと引っ張ってゆく楽曲にもなれたなと思います。


──にしなさんは、配信リリースするたびに、曲の世界観に色を添える多種多彩なMVを制作し続けてきました。今回の『青藍遊泳』は、どんなMVなのでしょうか?

にしな:取材時点では、まだ制作中ですけど。今回のMVには、わたしではなくキャストさんたちが登場し、一つの物語を演じています。わたしも現場に足を運んで撮影を見ていました。

▲にしな | 青藍遊泳 - Music Video

──改めて、今のにしなさんにとって『青藍遊泳』はどんな楽曲になったのかも聞かせてください。

にしな:書いたときもそうだし、今も、そう。改めて「自由にどこまでも泳いでいける気持ちにさせてゆく」歌。どこに向かって泳ぐにしても、「すべては自分次第なんだ」という気持ちにしてくれる楽曲です。聴いてくださる方々も、自分の好きなところへ向かって泳ぐうえで、心を押してゆく歌になれたら嬉しいです。


──発売を控えているアルバム『1999』には、本当にいろんな表現のベクトルを広げた歌たちを詰め込みましたよね。具体的な話は改めて伺いますけど、1曲だけ先行で聞かせてください。表題曲になった『1999』。最初は、にしなさんの生まれた年なのかなと思っていたのですが、ここには「ノストラダムスの大予言」に絡めたことなども書いてあったように、生まれた自分の年のことを歌っているわけではないですよね。


にしな:それ、よく勘違いされます(笑)。わたしは1998年生まれなので、1999年のときは1歳でした。アルバムのタイトルへ『1999』と名付けたのは、1stアルバム『odds and ends』から数えて1年過ぎたことから、わたしもメジャーデビューの年から数えたら1歳になりました。そういう意味を込めてタイトルに『1999』と名付けました。

『1999』という楽曲自体は、燃え殻さんの書いた「ボクたちはみんな大人になれなかった」を読んだときに感じた思いが元になっています。その小説の中に「ノストラダムスの大予言」のお話が出てきたことで、わたしも、この予言の存在を知りました。でも、歌詞はそれが中心ではなく、登場する女の子が、好きな男の子に向けて「わたし、嬉しいときに悲しくなるんだよね」と言います。男の子は、言われた意味がわからなかったんですけど。地球の滅亡が見えたとき、男の子も、その気持ちをなんとなく理解してゆく。そのシチュエーションがわたしは好きで、そこからモチーフを広げて『1999』を書いています。

今は、連日のように実際に起きている戦争のことがニュースとして流れてきます。だけど、もう本当に明日地球が滅亡するとなったら、戦争なんかしている意味はないし、嫌いな物事を考えるよりも、好きなことをしたり、好きな人のことを思っていたい。そこには、きっとそういう素敵な時間が生まれてゆく。そう思ったことをきっかけに『1999』を書きました。


──アルバムを通して、一つ一つの楽曲に込めた思いを早く紐解きたいです。

にしな:『青藍遊泳』もそう。アルバム『1999』に収録した曲たちが、一人一人の気持ちとリンクして、みんなの曲になっていけたら嬉しく思います。ぜひ、にしなの歌をいっぱい聴いてください。



TEXT 長澤智典
PHOTO Kei Sakuhara

Hair&Makeup:Chika Ueno
Styling:Sora Murai

【衣装クレジット】
blouse ¥29,700 (HATRA / HATRA☎03-6659-9471) neckless(上) ¥22,550 (KNOWHOW / KNOWHOW△jewelry
その他スタイリスト私物。

新時代、天性の歌声と共に現れた新星、「にしな」。 やさしくも儚く、中毒性のある声。 どこか懐かしく、微睡む様に心地よいメロディーライン。 無邪気にはしゃぎながら、繊細に紡がれる言葉のセンス。 穏やかでありながら、内に潜んだ狂気を感じさせる彼女の音楽は、聴く人々を徹底的に魅了す···

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