ニーゴレン初登場!プロセカによる配信曲を解釈
人々の本当の想いを映し出す「セカイ」と現実の世界を舞台に展開されるリズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ』(以下、プロセカ)。「25時、ナイトコードで。」は、プロセカのキャラクター・朝比奈まふゆ、宵崎奏、東雲絵名、暁山瑞希で構成される音楽ユニット。
『バグ』はそんな「25時、ナイトコードで。」と、同じくゲーム内のキャラクターである少年バーチャルシンガー・鏡音レンが歌う楽曲です。
作詞作曲は、『ベノム』や『ダーリンダンス』で知られるボカロP・かいりきベアが手がけています。
鏡音レンは、6月に開催されたプロセカのイベント内で「ニーゴレン」として「25時、ナイトコードで。」のセカイに初登場しました。
そんな「25時、ナイトコードで。× 鏡音レン」が歌う楽曲『バグ』は、曲調こそポップながら、非常にダークな雰囲気に満ちているようです。
果たしてそこにはどのような意味が込められているのでしょうか。
迷い子を襲った病
まずは1番の歌詞です。
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迷子 迷子 真っ只中 さあ
パ パ パラ パーラノーイ「ア」
ギコ ギコ MY HEART 剪定
パ パ パラ パーラノーイ「ア」
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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「迷子 真っ只中」ということで、『バグ』の主人公は何かに迷っている様子。
ギコギコと自分の「HEART(こころ)」の余計な部分を切り整えている描写は、周囲への適応を表していると解釈できそうです。
また、曲中で連発する「パラノイア(paranoia)」は、日本語で「妄想症(頑固な妄想を持ち続けている病的な状態)」を意味します。
この曲の主人公は、周りに合わせていれば大丈夫だと思い込んで生きてきたものの、限界が来て信念がぶれているのかもしれません。
次の歌詞を見てみましょう。
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退路 退路 断った絡まった
パ パ パラ パーラノーイ「ア」
SAD SAD 突っ伏して「」
ぱ ぱ ぱ La ぱーらのーい「ド」
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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「退路 断った絡まった」は、逃げ道をなくして進んだら足がもつれてしまったというイメージでしょうか。
3行目の「SAD」は、社交不安障害(人前に出ることに極度の不安や恐怖を感じる病気)の略称です。
周囲に合わせて上手に生きてきた主人公が、SADに見舞われて行き場を失ってしまったのかもしれません。
加えて、曲全体にわたるパラノイアの「ア」の強調は、paranoiaの「a」とSADの「A(Anxiety=不安)」を掛けているという解釈もできそうです。
パラノイアと歌うたびに、主人公の不安感が高まっていくような演出なのではないでしょうか。
また「パラノイド(paranoid)」は、病的に疑り深いという意味です。
SADによって同調さえできず、身動きが取れなくなった主人公。
これまでの生き方が無意味のように思えて、ついには「突っ伏して」しまったと考えられます。
そして、パラノイド(paranoid)の「ド(d)」がSADの「D(Disorder=障害、混乱)」とリンクしているとすれば、ぱらのい「ド」は頭が混乱して疲れ切っている状態を表していそうですね。
次の歌詞に進みます。
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さあ バ バ バグさ バグバグ
タ タ タグ 才能のタグ
もう ハ ハ 剥グ 感情は剥グ
発症「クルシイ」は 嫌嫌嫌 嫌嫌嫌
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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タイトルにもなっている「バグ」は、プログラム上のエラーを意味するパソコン用語。
「バババグさ バグバグ」からは、自分の中で何かが壊れたような不穏な空気が感じられます。
おそらく社交不安に陥る前の主人公は、周囲に合わせることでうまいことやってこれたのでしょう。
それなりに結果も残して、他者から認められてきたとも考えられます。
歌詞にある「才能のタグ」は、「あの人はこれができる」というような社会からのレッテルのことかもしれません。
そんなレッテルが自分に残っているものの、「感情は剥グ」から、主人公にとっては何の感慨もないことが推測できます。
今はただ「クルシイ」に満ちたSADの「発症」が嫌で仕方ないのでしょう。
続いてサビの歌詞です。
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まあ!絶叫な感情落下 パッパラノーイ「ア」
溺れ声上げては ぐるぐる
まあ!絶体絶命落下 やったラ滅多ラ
沈めユメユメ 嫌嫌嫌
さあ バ バ バグさ バグバグ
的ハズレズレ 慈愛 嫌嫌
さあ バ バ バグさ バグバグ
解答絶え絶え 嫌嫌嫌 嫌嫌嫌
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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「絶叫な感情落下」は、ジェットコースター級の落差で感情が沈むことだと考えられます。
絶望に近いニュアンスでしょうか。
「溺れ声上げては ぐるぐる」からは、もがきながらも絶望の渦に飲み込まれていくようなイメージができそうです。
そんな「絶体絶命」の苦しみを何度も繰り返し、主人公は「いっそのこと沈み切ってしまえ」と自暴自棄になっているのかもしれません。
病に苦しむ生殺し状態こそ、主人公にとっての「嫌嫌嫌」なのでしょう。
そして後半は一層「バグ」が連呼されます。
どんどん自分が壊れていくようです。
「的ハズレズレ 慈愛」は、的外れな親心といった意味合いでしょうか。
もしかしたら主人公が周りに合わせるようになった根本には「親」が関与しているのかもしれません。
ただ、続く歌詞は「解答(こたえ)絶え絶え」。
原因が何であったにせよ、うまく人生を送るための正しい答えは見当たらないようです。
「いい子ちゃん」の苦悩
ここから、2番の歌詞に入ります。
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狂 狂 ぱっ かーん 警報 待って無理 ぐるぐる せーので回れ
(狂 狂 狂 狂)
アアアア ぱっ かーん 警報 やっぱ無理 ぐるぐる あんよに鎖
(狂 狂 狂 狂)
エンドレス病み...?
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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だいぶ気がおかしくなっているようです。
頭が割れるほどの嫌悪感からか、「待って無理」と自分自身に警報を発している様子。
「ぐるぐる」は混乱で目が回っている状態を表しているのかもしれません。
続く「せーので回れ」は、「回れ右して逃げよう」のように読み取れます。
また、カッコ書きされた「狂狂狂狂(くるくるくるくる)」は、警報ランプの回転のイメージだと解釈できそうです。
そうして逃げようとしたものの「やっぱ無理」だった主人公。
その原因は「あんよに鎖」。
逃げることもままならなず、延々と病むことになりそうな状況ですね。
次の歌詞を見てみましょう。
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抱っこ 抱っこ いらない子だ
パ パ パラ パーラノーイ「ア」
いい子 いい子 「頑張れ」の氾濫
アドミニストレイター 嗚呼
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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このパートからは主人公のバックグラウンドが読み取れそうです。
「抱っこ 抱っこ いらない子だ」からは、主人公はあやす必要がないほど手のかからない赤ん坊だったことが想像できます。
そして「いい子」として順調に成長し、「氾濫」と表現できるほど過剰な期待を周りから受けてきたのでしょう。
また「アドミニストレイター」には管理者という意味があります。
「アドミニストレイター 嗚呼」は、過度に期待を寄せてきた父親や母親、教師などへのあきれ様を表しているのではないでしょうか。
主人公の過去が垣間見えたところで、次の歌詞です。
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バ バ バグさ バグバグ
ラ ラ ラグ ランタイム ラグ
ロ ロ ログ 反抗のログ
バ バ バグ ぱ ぱ ぱ La ぱ ぱ
パーラノーイ「ア」
ぱ パーラノーイ「ア」
ぱ パーラノーイ「ア」 嫌嫌
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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「バババグぱぱぱLaぱぱ」など、それこそ「バグ」のような文字列が続いていますね。
2行目の「ランタイム」はプログラムの実行段階を意味する言葉です。
よって「ランタイム ラグ」は「実行する時間の差」と言い換えられ、周りの人と比べたときの「行動を起こす時間の差」であると解釈できます。
健全に見える周囲の人と比べて、主人公は自分が出遅れているように感じているのかもしれません。
続く「反抗のログ(=記録)」は、そんな納得できない現状に対する不満の蓄積を表していると考えられます。
すでにSADによって人生がバグっている主人公。
それを助長するここでの「パラノイア」は、周囲より自分が報われるべきと盲信するような状態のことかもしれません。
一層「ア(不安)」も強まってきたところで、最後のサビに入ります。
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さあ 絶叫な感情落下 パッパラノーイ「ア」
左 右 行方も ぐるぐる 悲惨
限界脳狂っちゃって やったラ滅多ラ
ヤミ迷え酔え イナイイナイばあ イナイイナイ✕点
絶叫な感情落下 パッパラノーイ「ア」
溺れ声上げては ぐるぐる
まあ!絶体絶命落下 やったラ滅多ラ
凍え枯れ果て 嫌嫌嫌
さあ バ バ バグさ バグバグ
爛れ荒れ荒れ 悲哀 嫌嫌
さあ バ バ バグさ バグバグ
暗闇マミレ理性 嫌嫌嫌 今今今 嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
≪バグ 歌詞より抜粋≫
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主人公は、目が回って進むべき方向さえ定まらない状態のようです。
報われない悲惨な現状に、脳は限界を迎えている様子。
4行目の「ヤミ迷え酔え」は「闇に迷え」や「病むことに酔え」というように読めそうです。
苦痛すぎてやけになっているのでしょうか。
そして次の「イナイイナイばあ イナイイナイ×点(ばってん)」は、赤子をあやすように気安く慰めてくる人たちを拒絶するようなイメージだと考えられます。
凍えるような枯れ果てるような、振れ幅の大きい絶望を嫌悪する主人公。
悲哀に満ちた荒んだ人生、妄想に取り憑かれて真っ黒な理性。
主人公の「今」は非常に悲惨です。
そんな「今」に抗って行動することができず、ただ可哀想な「いい子ちゃん」として堕ちていく様が、ラストで叫ばれる「嫌嫌嫌」で表現されているのかもしれません。
過剰な適応に要注意
今回は、25時、ナイトコードで。× 鏡音レン『バグ』の歌詞の意味を考察しました。曲調はポップながら、闇に堕ちていくような狂気じみた歌詞が印象的でしたね。
とはいえ、周囲に合わせて行動したり、期待に応えようと頑張ったりする主人公の苦悩には、共感できるものがあったかもしれません。
とかく協調や努力は美化されがちですが、気が狂うほど自分をすり減らすのは禁物です。
強大な『バグ』に人生を持っていかれないよう、ほどほどに生きていきましょう。