Saucy Dogの人気曲「いつか」
Saucy Dogの楽曲『いつか』は、2017年に発売された1stミニアルバム『カントリーロード』に収録されています。
サウシーらしい情景描写の美しい歌詞が特徴で、過去にリリースされた中でも特に人気の高い作品。
実は、2016年に出場し、見事グランプリを勝ち取ったオーディションで披露された楽曲でもあります。
バンドにとっても、ファンにとっても大切な1曲である『いつか』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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坂道を登った先の暗がり
星が綺麗に見えるってさ
地べたに寝ころんじゃうあたり
あぁ君らしいなって思ったり
時間を忘れて夢中になった
赤信号は点滅している
肌寒くなり始めた季節に
僕らは初めて手を繋いだ
2人の物語
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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「僕らは初めて手を繋いだ」「2人の物語」のフレーズを踏まえると、冒頭の歌詞は恋人同士になったばかりの2人を描いているように思います。
信号機には交通量の少ない夜間に点滅信号が運用されるものがあるので、おそらく2人が出かけたのは夜遅くのこと。
主人公の「僕」が、星が綺麗に見える場所に「君」を連れ出して告白したのかもしれませんね。
また、「肌寒くなり始めた季節」の描写から、時期は冬になる手前頃と考察できます。
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2人でひとつの傘を差したり
ブランコに乗り星を眺めたり
押しボタン式の信号機を
いつも君が走って押すくだり
仰向けになって見た湖
宙に浮いてるみたいってさ
はしゃいでいる君とその横でさ
もっとはしゃぐ僕なら
本当に飛べるような
気がしていた
フワフワと夢心地
君の隣
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞では、恋人同士になった2人の何気ない日常が描かれているようです。
雨の日に相合傘をしたり、一緒に星を眺めたり、仲睦まじい2人の姿が想像できそうですね。
一方、「もっとはしゃぐ僕なら 本当に飛べるような 気がしていた」の歌詞からは、「僕」が「君」と同じようにはしゃげなかった自分を後悔しているように思えます。
過去形で綴られている点からも、2人が一緒に過ごした日々が既に昔のことであると読み取れそうですね。
離れ離れになった2人
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君の見る景色を全部
僕のものにしてみたかったんだ
あぁ君を忘れられんなぁ
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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2人がずっと一緒にいれば、「君」と「僕」の見る景色も同じものになるでしょう。
「君の見る景色を全部 僕のものにしてみたかったんだ」の後には、「けれどできなかった」のフレーズが隠れているように思えます。
続く「あぁ君を忘れられんなぁ」の言葉からも、2人が今は離れ離れになってしまったと解釈できそうですね。
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当たり前に通ってたあの道
信号機は無くなるみたいです
思い出して切なくなる気持ちも
いつかは無くなるみたいです
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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ここで登場する「信号機」は、冒頭で赤信号に点滅していたもの、そして「君」が走ってボタンを押しに行っていたものと同じものかもしれません。
そんな大切な信号機が無くなることと、「君」への想いがいつかは消えてしまうことを重ねているように思えます。
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そういえば寒い雪降る日の
田和山の無人公園でさ
震える体
暗い中いつものように笑い合う
街灯の下で
僕の目に映りこんだ君が
いつもよりちょっと
寂しそうな気がした
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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2人が初めて手を繋いだのが「肌寒くなり始めた季節」だったので、今回主人公が回想しているのは、付き合い始めてから少し経った時の出来事なのでしょう。
「君」が寂しそうに見えたのは「僕」がそう思ったからで、実際に「君」が寂しい想いをしていたのかは分かりません。
ただし、この時から2人はいつか来る「別れ」をなんとなく感じ取っていたように思われます。
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今になってさ
思い出してさ
後悔じゃ何も解決しないさ
忘れられないのは
受け入れられないのは
君を思い出にできる程
僕は強くはないから
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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「もっと一緒に長い時間過ごしていれば」「もっと気持ちを伝えていれば」などと後悔しても時間は巻き戻せません。
「思い出」は過去を示す言葉。
「君」との日々を「思い出」にすることは、「君」がもう自分のそばにいないことを認める意味になるでしょう。
「君」と別れてしまった現実を受け入れられない「僕」の心情が伝わってくるようですね。
君と僕が別れてしまった理由を考察
幸せそうだった2人がなぜ別れてしまったのか、歌詞中で明確なことは書かれていません。
ただし、曲のラストの部分から離れてしまった理由を考察することはできそうです。
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僕の見た景色を全部
君にも見せてやりたかったんだ
あったかいココアを一口
いつかまた逢う日までと
笑う顔に嘘は見当たらない
じゃあね
またどっか遠くで
いつか
≪いつか 歌詞より抜粋≫
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2人は最後に「いつかまた逢う日まで」と言って別れたようです。
しかし、恋人としての関係を終わらせるのであれば、再会を願うような言葉は少々不釣り合いに感じられそうですね。
また会うことを願って別れたとすると、2人はお互いの意思に反して別れざるを得ない状況だったと想像できます。
ひとつ考えられるとしたら、「君」が病気などで亡くなってしまったことによる別れだったのではないでしょうか?
「君」が既に「僕」の生きる世界にいないのだとしたら、「僕の見た景色を全部 君にも見せてやりたかったんだ」のフレーズも重みを増してくるでしょう。
歌詞は、楽曲タイトルである『いつか』の言葉で締めくくられています。
2人の再会の約束である『いつか』には、もう会えない「君」に対しての、僕の切ない想いが詰まっているのかもしれません。
「いつか」は亡くなった彼女の歌?
Saucy Dogの『いつか』をインターネット上で検索すると気になるのが、関連して「実話」「彼女」「亡くなった」などの言葉が出てくること。
作詞を務めた石原慎也(Vo/Gt)は過去のインタビューで「歌詞は実体験に基づいて書いている」「もう会えない人に向けて作った曲」と発言しているため、「『いつか』は亡くなった恋人に捧げた歌」という噂が広まってしまったようです。
本人からの「亡くなった恋人がモデル」という言及はないので、今のところ信ぴょう性は低そうです。
もしかすると真実かもしれませんが、こればかりは作詞者本人のみが知ることでしょう。
一方、歌詞中に登場する「田和山の無人公園」は石原の地元・松江市に実在しており、「忘れられんなぁ」は島根の方言、「仰向けになって見た湖」は「宍道湖」だと過去にコメントしています。
ちなみに、同じく人気の高いサウシーの楽曲『シンデレラボーイ』にも、「好きって言わんでよ」という方言の歌詞が登場しますよ。
そんな地元を感じられる歌詞に注目して、Saucy Dogの楽曲を聴いてみるのも面白いかもしれません。
あなたは、『いつか』をどのように解釈しますか?