年に1回集まり、みんなで花火大会を楽しみに行くような感覚でやっていたバンドだったけど…。
──まずは、メンバー同士の繋がりから教えてください。C'Na:全員が「演奏してみた」をやっていた中、ネットを介して繋がった仲間たち。僕が「自分たちでバンドを組み、その"演奏してみた"動画をアップしたくない?」とツイートをしたときに、「やろう」と直ぐに話に乗ってくれたのが八宮隼弥と犬沢ニッカ。途中からかじとイトが加入しこの5人で『アスノヨゾラ哨戒班』のカバー動画を撮影し、アップしたことが空より蒼い街の始まりでした。
あの時点では、一回動画を作り上げ、それをこの映像アップのために立ち上げた動画サイトのチャンネルへアップし、それで落ち着いたんですけど。またやりたくなって、1年後に再び4人に声をかけた。そして『サマータイムレコード』のカバー動画を作り、それをアップ。それからまた1年後に『快晴』を動画撮影して、というように、年に1回カバー動画を作るために集まる企画バンドとして空より蒼い街はスタートしています。
雪乃イト:最初は年に1回集まり、みんなで花火大会を楽しみに行くような感覚でやっていたバンドだったけど…。
C'Na:バンドとして本格的に動こうかとなったのが、今年春のこと。だから、しっかり動きだしたという意味では、本当に最近の話になります。
──本格的なバンド活動へ移行したのは、アップした動画の再生数などリアクションが大きくなってきたから?
C'Na:というよりも、「やりたい」衝動が大きくなったからでしたね。周りから「動きなよ」という声もあったから、「じゃあ、やろうか」となった途端、急に展開が進み出した形でした。
──カバー動画をアップしていた頃は、みなさん顔出しをしていませんでしたよね。
C'Na:カバー動画をアップしていたときは顔を出さずにやっていました。オリジナル曲として出した『アイビー』のMVでは普通に顔を出しましたけど、そうしたのも「オリジナル曲なら、顔を出してもいいんじゃない?」くらいのこと。カバー曲でも顔を出しても良かったけど、人の楽曲をカバー演奏して動画を作っているのに、そこで堂々と顔を出すのもなんかなぁというか…。
犬沢ニッカ:カバーバンドなのに、堂々と顔を出して映像を投影するのも実際どうなのか…。
C'Na:そこだよね。顔を出して演奏すると、なんか自己主張の強さが悪目立ちしそうだったのでやめていたんですけど。オリジナルの曲なら堂々と顔を出してもいいかなと。それで顔も出してMV撮影をしました。
──オリジナル曲を形にして発表したのは…。
C'Na:7月30日に配信リリースした『アイビー』が1曲目になります。そもそも、本格的に空より蒼い街として活動をしようとなったのも、こうやってオリジナル曲を出し続けようと決めたことが大きかったので。
今年中に出す曲だけを聴いても、だいぶ振り幅を感じてもらえると思いますよ。
──みなさん、本格的に空より蒼い街として動き始めたことで、どんな風に心境に変化が現れたのか教えてください。まずは、ニッカさんからお願いします。犬沢ニッカ: 個人でもバンドでもそうだけど、カバー動画をアップしていた頃は自分のやりたい楽曲をカバーするだけでしたが、オリジナル曲をやるとなったら、自分の中で表現への挑戦も増えるし、関わる人たちも増え、その分結果も求められるようになる。だからと言って「売れなきゃ」ではなく、そういうこと(結果)も意識の中へ置くようになったのが一つ。
空より蒼い街は幅広い音楽性を示しているバンド。だからこそ、その楽曲に相応しい表現力を持たなきゃということから、最近の流行りの傾向にもアンテナを張って、自分の表現レベルにもしっかり向き合うようになった。それが、僕の中でのもう一つの変化でしたね。
──『アイビー』を聴いていると、これまでカバーしてきた3曲の延長線上にある印象を受けたので、ギターロック系の音楽をやっていくバンドなんだと思っていたのですが、実は多様性を持ったバンドだと…。
C'Na:そうです。これまでアップし続けてきたカバー動画の流れを汲み、その延長にあるような楽曲を最初に提示し、それまで聴いていたリスナーさんが、「オリジナル曲を聴いたら全然違うバンドじゃないかとならないように」という狙いを持って、あえてその流れを踏襲した『アイビー』を最初に持ってきたわけなんです。実際には、もっと多彩な表現をしてゆくバンドです。
──なるほど。続いては隼弥さん、お願いします。
八宮隼弥:空より蒼い街を始めたときから「楽しむ」ことを第一の理念として持っていて、こうやって本格的にバンドとして動き始めた今も、そこは変わらない。その上で、新しいオリジナル曲が増えるたびに、挑戦してゆく意識が大きくなっている。それが、今の自分の心境です。
──C'Naさんの、今の気持ちを聞かせてください。
C'Na:普段の僕は、楽曲の編曲やギター演奏などを音楽活動の軸に置いています。高校時代にバンドを組んでいたときはボーカルをやっていたので歌ってはいましたけど。それ以降は、年に1回、空より蒼い街として集まって歌う以外は、歌うことはありませんでした。僕の場合、カラオケにさえ行かないから、本当に歌うことってなかったんですね。
だけど、空より蒼い街ではボーカルとギターを担っているからボーカリストとしてのスキルを求められる。しかも、このバンドの音楽性がとても豊かだから、いろんな歌い方を必要とする。そこを形にしていくのに、今は必死です(笑)。
もともと自分はダンスミュージックが好きなんですけど、本格的にバンドをやるようになったことで、バンド音楽もいろいろ聴くようになったのも変化の一つですね。曲調や歌詞に似合う感情で表現してゆくことが大事だからこそ、そこも強く意識するようになったのも大きな変化だと思います。
──次は、イトさんお願いします。
雪乃イト:僕は、空より蒼い街の中で作詞/作曲/編曲/ピアノ/コーラスを担当していて、このバンドにおけるコンポーザーとしての役割を担っています。今までの空より蒼い街は、カバーバンドでしたけど。これからはオリジナル曲を演奏していくことから、このバンドが支持を得るためにも、しっかりとした楽曲を書かなきゃという気持ちに変わりました。
自分が音楽の道へ入っていくきっかけはELLEGARDENでした。だから、いつかは自分もバンド活動をやってみたい願望がありました。それを空より蒼い街が本格的に始動することで叶えられたので、今は、バンド活動自体を楽しんでいます。それにプラスして、自分がこれまでに培ってきたものを存分に発揮する、すごくいいチャンスの場とも捉え、いろんな楽曲を作り続けています。
──空より蒼い街は、振り幅の広い音楽性を持つバンドなんですか?
雪乃イト:そうです。これからいろいろ楽曲を発表していく予定でいますけど、今年中に出す曲だけを聴いても、だいぶ振り幅を感じてもらえると思いますよ。
──そこ、楽しみにしています。最後は、かじさんですね。
かじ:僕は、今でもずっと「叩いてみた」という二次創作的なことを続けています。そういう活動をしていると、一次創作活動にも憧れるんですよ。その興味はずっとあったから、空より蒼い街を通して一次創作活動ができるようになったことが、すごく嬉しいです。だからこそ、これからもっと表現活動の幅を広げていきたいなとも思っています。
これまでにアップした3曲のカバー動画を通して空より蒼い街を好きになった人たちの心に、そのまま馴染んでいける楽曲を心がけました。
──最初に『アイビー』を持ってきたのは、過去に発表してきた3曲のカバー動画の流れを踏襲してのものになるんですよね。雪乃イト:そうです。加えて空より蒼い街として発表する最初のオリジナル曲という理由もあって、スタート感のある、疾走するロックな印象を強く与えるバンドらしい楽曲を持ってきました。
サウンドメイクの面でも、これまでにアップした3曲のカバー動画を通して空より蒼い街を好きになった人たちに馴染んでもらいやすいようにとも心がけました。そこを踏まえた上で、ここからは「空より蒼い街はこんな表情の曲も作れるぞ」という姿をいろいろ見せていこうと思っています。
──空より蒼い街の楽曲の制作を担っているのが、イトさんになります。他のメンバーは、イトさんの作る楽曲についてどんな印象を覚えているのでしょうか。まずは、かじさんから教えてください。
かじ:僕自身、「こういうジャンルが」ではなく、音楽全般が好きで、いろんなスタイルの音楽を聴いています。その前提があった中で聴くイトくんの音楽は、どれもテンションの上がる、素直に「いいな」と思える曲ばかり。
ドラムに注目して聴いてみると、ドラマー以外の方が作ったフレーズって実際に演奏するには無理があったりすることも多いんですけど、イトくんはそのまま叩いてもしっかり通用する形で音源を作ってきてくれる。そこから、自分なりに想像を膨らませて仕上げていくのがすごく楽しいんですよ。ドラマー目線で見てもしっかり楽曲を構築していて、そこがすごいですよね。
雪乃イト:いろんな楽曲を制作してゆく上で、ドラマーに限らず、いろんなミュージシャンの方々とやってきた中、その人がどう演奏したら気持ちいいと感じるかは、経験を通して掴んできたことですからね。
犬沢ニッカ:それは、ベースを弾いていても感じること。イトくん自身がベース演奏もできるマルチプレイヤーなので、ベースの知識も持った上でベースラインを構築してくるから、自分もすごく弾きやすさを感じてる。いや、むしろ「エグい」と言ったほうがいいかな(笑)。
──そんなにエグいんですか?
犬沢ニッカ:エグいです(笑)。もちろん、人間が弾けるフレーズではあるんですけど。「俺、無理かも知れない」という自分の限界へ挑戦し、自分自身のレベルを引き上げてゆく楽曲を、いつも提示してくれる。
普段は、自分の興味のある曲やフレーズしか演奏しないから、必然的に得られる情報も限られてくるけど、イトくんはいろんな音楽性の楽曲を提示してくるから、自分自身が新しい表現を求めていく必要性がある。でも、一人のプレイヤーとして、出来ないことが出来るようになるって楽しいじゃないですか。そうやって、曲ごとに新しい表現の扉を開けてくれるから、そこへ嬉しさやありがたみを感じていつもプレイしています。
──それは、ギターにも言えることですか?
八宮隼弥:僕は、イトくんと音楽の趣味のツボが合うし、イトくんはギタリストでもあるから、この曲の中、こういうギターの動きをしたら嬉しいというところを、常に抑えてくれます。自分の活かし方も含め、その曲の心地良い演奏のツボを上手く突いてくる。ほんと、わかって曲を作っているなという印象は、いつも感じています。
──『アイビー』では、そんなにギターは主張していないですよね。
八宮隼弥:正直、あまり主張ないギター演奏の方が個人的には好きなんですよね。裏で支えながら、ソロになるとグーンと主張してゆく。そういうプレイが好きだし、それを踏まえた曲や演奏をイトくんはいつも示してくれるなという印象です。
C'Na:彼(雪乃イト)は、本当に音楽理論について詳しいし、そこをしっかり勉強している人。何より、常に高クオリティの音楽を構築していく。たまたま名曲が生まれた、ではなく、常にそれを生み出す力を持っている。そこが彼の強みであり、すごいところなんですよ。
ボーカル目線でも言うなら、彼もボーカル経験者だから、息継ぎも含め、気持ちよく歌えるメロディーをいつも構築してくれる。だから歌いやすいし、歌っていて気持ちいい。そこは、本当に楽曲制作のプロだなと感じていますね。
──まさに、各メンバーの個性や魅力を活かす楽曲作りをしてくる人だ。
C'Na:そうなんです。
毎回「すごいな」と感じるのが、メロディーがよく聴こえる言葉をはめてくること。
──イトさんの書く歌詞についての印象も聞かせてください。C'Na:毎回「すごいな」と感じるのが、メロディーがよく聴こえる言葉をはめてくること。言い方を変えるなら、言葉とメロディーのハマりがすごくいい。
──『アイビー』の歌詞の印象はいかがですか?
C'Na:なかなか上手くいかないことが多い日々。逆境からの復活ではないですが、ここから再びスタートを切って駆け上がろうという、今のバンドの姿に重なる想いが『アイビー』には記されています。
雪乃イト:実際に、バンドが改めてここから走り出すように、再スタートを強く意識した歌詞や曲調を心がけました。歌詞制作で心がけているのが、母音の響きを大事にした上で、それぞれの曲の中でストーリーを書きあげようということ。歌を届ける以上、言葉の響きはとても大切。それを心がけた上で歌詞を書いています。
かじ:イトくんの書く歌詞は、しっかりとストーリー性があった上で、その中から「こういう想いを持っていたんだ」など、人間性というか、イトくん自身のキャラクターが見えてくる。そこが特徴なんですよ。
C'Na:それはあるよね。「割と優しい奴じゃん」とか(笑)。彼の作る歌詞は、一つ一つが短編小説のよう。そこがまた良いんです。
雪乃イト:一番大事なのは、常にクオリティーの高い楽曲を作り上げること。そういう曲たちを世の中に出し続けたいですからね。
毎月1曲は新曲を動画サイト上にアップしていきたいなと思っています。
──今後の空より蒼い街ですが、オリジナル曲たちは、これからもコンスタントに出していく形を取るのでしょうか。C'Na:出来れば…という理想にはなるけど。毎月1曲は新曲を動画サイト上にアップしていきたいなと思っています。うちのバンド、楽曲を制作するペースは早いからどんどん新曲を生み出せるし、実際に今も生み出し続けています。
映像に関しても、「ここぞ!!」という楽曲ではしっかりMVを作るけど、普段は1枚絵を使っての動画アップであれば楽曲制作のスピード感にも対応していけるかなと思っていて。そうやって楽曲を溜め込んだ上で、アルバムへ繋げていけたらと、そんな風に構想をしています。
──これからどんな楽曲を耳に出来るのか、楽しみになってきました。
C'Na:空より蒼い街は、いわゆる"こだわりのラーメン屋"ではなく、"ファミレスのように、いろんな料理を味わえる"バンド。次からは振り幅を広げて、いろんな味の楽曲を出していくつもりです。
雪乃イト:僕らはこのバンドのイメージを一つに固めたくはなくて、「これだけ多彩な曲を作れるよ」というのをこれから見せていきたいと思ってる。
──創作活動の活性化に合わせ、ライブ活動も、これからやっていくのでしょうか。
雪乃イト:あと3カ月もあれば、2時間以上のワンマン公演が出来るほどの楽曲は十分揃えられるけど。でも…。
C'Na:空より蒼い街としてのライブ活動は考えてないですね。メンバーみんな、元々ネット上で活動をしてきた人たちだし、ライブをやりたい人たちばかりではない。ニッカやイトはライブが好きだし、今もいろんな人たちのライブに参加して演奏しているけど、僕や隼弥はライブ演奏を好まないタイプ。
雪乃イト:空より蒼い街に関しては、ライブよりも、良い楽曲を作ることに重点を置きたいからね。
C'Na:そうなんですよ。空より蒼い街は、楽曲を作り続けては、それを発表していくことに重点を置いた活動をしていきたい。その上で、求める声が多くなれば、ライブをやるのも検討をするという形ですかね。周りの声にも耳を傾けつつ、ライブについては考えます。
──今後の活躍を楽しみにしています。最後にメッセージをお願いします。
C'Na:これまでの空より蒼い街は、とても活動頻度の低いバンドでしたけど、これからは、『アイビー』を出してもう当分動かないということではなく、コンスタントに動くんだという姿をまずは示そうと思っています。僕らに関しては、そこが大事かなと思っていて(笑)。
『アイビー』の配信リリースをきっかけに、一つ一ついい思い出になる楽曲作りをやっていくから、これからの空より蒼い街の活動に期待していてください。
TEXT 長澤智典
PHOTO Kei Sakuhara