主人公が企む「反撃」の意味とは?
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最悪だ 最低だ
お前らのせいだ
そもそも頼んでもないのに産むのやめて?
最初から居なければ楽だったのに
それなのに
お前らのせいだ
居場所の一つもろくに無いわたし達の
反撃の日々だ
愛の正解も知らないけど
今が楽しければそれで良いよね?
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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こんな衝撃的な歌詞から始まるのは、音楽ユニット『ツユ』が2022年7月に配信リリースした楽曲『アンダーキッズ』。
紹介した歌詞をご覧いただくとわかる通り、大人や世間に対する不満が、若者の目線で歌われているようです。
「反撃の日々だ」とも歌われていますが、主人公は一体何を企んでいるのでしょう?
そのヒントと思われるのが、最後の2行の歌詞。
愛を知らないけれど今が楽しければいい、つまり「今を満たしてくれるならどんな人や場所でもいいよね」という意味に解釈できそうです。
それを踏まえ、次の歌詞を見てみましょう。
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この街の初期メンに繋がりは居ないけど
夜な夜な見たニュースの動画で知ったよ
此処じゃわたしみたいな不幸な子達が
過ごしてるんだって
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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この歌詞から連想されるのは、最近話題になっている「トー横キッズ」ではないでしょうか。
トー横キッズとは、歌舞伎町にある「新宿東宝ビル」の界隈に集まる若者たちのことです。
身近なコミュニティに居心地の悪さを感じていたり、居場所がない少年少女たちが集っています。
つまり、この主人公は「トー横」にいくことで自分の気持ちを満たそうとしており、その姿を見せつけることを「反撃」としているのではないでしょうか。
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なけなしのお小遣いで制服揃えて
手頃な刃に市販薬も大量に
ランドセルに入れたら
さぁ出発だ
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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「大量の市販薬」という旨のフレーズからは、主人公が病む様子が伝わってきますね。
この後、主人公は一体どうなるのでしょう?
主人公にとっては「最後の逃げ場」
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憧れは
拗らせてしまえばしまうほど
この身を蝕んでくの 今日も稼がなきゃ
わたしお買い得だからもっと来てよ?
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞では、主人公が自分自身を安売りしてお金を稼いでいることがわかります。
一体何に使うのかといえば、異性への貢物。
トー横が舞台と仮定するなら、相手はホストかもしれませんね。
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貢いでも
あなたは あなたは
目を合わせてはくれないのね
本当はもう 全部知ってるよ
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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主人公も、自分自身が愛されていないことはわかっている様子。
次の歌詞では心だけでなく、体にも傷をつけている痛々しい様子が歌われています。
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だってほら
傷の数はずっと増えてんだよ
今日も明日も刻むだけね
身体も心もズタズタのわたし
でも生きてるの だから
誰でもいい 嘘でもいいから認めて?
最後の逃げ場だからさ
夢でも構わないから
手繋いでいようよ
愛の正体も知らないけど
今が楽しければそれで良いよね?
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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自分を安売りして、偽物の愛に傷ついて、心身はボロボロ。
それでも主人公にとっては「トー横」らしき場所が最後の砦のよう。
「今が楽しければそれでいい」と納得しようとしている姿に胸が痛みます。
また、「誰でもいい 嘘でもいいから認めて欲しい」という主人公の気持ちが非常に切ないです。
主人公は救われるのでしょうか?
愛を求めていたことに気づいたものの…
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だってほら
余命だってずっと減り続けて
わたしの価値 今どれくらい?
いつまでこの街で生きていくことが出来るのかな
時の流れがおかしくて もうあの子も居ないね
最後の逃げ場だからさ
これ以上堕ちてしまえば
この世にバイバイかな。
最悪だ 最低だ
お前らのせいだ
死ぬまで許すことないわ 呼ぶのもやめて?
最初から選べれば楽だったのに
それなのに
お前らのせいだ
居場所の一つもろくに無いわたし達の
反撃の日々だ
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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続く歌詞では、「いつまでもここで生きていていいのかな?」という主人公の気持ちが垣間見えます。
しかし主人公が今いる場所は、主人公にとって最後の砦。
ここにいられなくなったら「この世にバイバイ」、つまり死を選ぶことを考えているようです。
その後はそんな状況を作り出した大人への不満、そしてもう一度反撃の意志が歌われていますが、実はこの後やや状況が変わります。
続く歌詞をご覧ください。
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・・・だったのに
他人の数で誤魔化したって
埋まることないこの心が
触れた記憶すらない愛を求め今叫びだして
この街の中でも幸せになれませんか?
外の世界は怖くて
此処しか許されなくて
あぁもう八方塞がりだ
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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主人公は「トー横」に行けば心が満たされると思っていたものの、実際のところはそうではなかったようです。
その代わりに気づいたのが、「触れた記憶すらない愛」。
つまり親や恋人、友人からのまっすぐな愛を求めていることに気づいたのです。
しかし、最後の砦であった「トー横」を離れることに恐怖を感じ、行き詰まる様子。
そんな葛藤は最後の歌詞にも現れています。
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そうやって一生
行き詰りながら生きて
あぁ絶望だって失望だって
とうに廃ってるよ
羽根のないこんな身体には
地獄がお似合いだって
誰かの笑い声で耳が痛くて
せいぜい今楽しんでね?
将来この国ごと終わるから
荒れるだけ今荒れて
近い未来でほら滅びましょ
≪アンダーキッズ 歌詞より抜粋≫
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最後の4行は現在トー横にいる人たちに向けられた言葉でしょうか?
詳細はわかりませんが、主人公の晴れない感情、深い絶望に胸が苦しくなります。
「アンダーキッズ」あなたの考察は?
以上、ツユの『アンダーキッズ』について解説しました。トー横のようなアンダーグラウンドな場所にいるキッズたちの感情ということで、「アンダーキッズ」というタイトルがついているのかもしれませんね。
辛辣な言葉や表現が印象的でしたが、居場所を求める若者が共感し、大切なことに気づくきっかけになりそうな一曲です。
また、心を病む若者に救いの手を差し伸べない大人たちに対しての問題提起になればいいなと思います。
ぜひみなさんもツユが主張したかったことや歌詞の内容について、あなた自身の考察を楽しんでくださいね。