FAKE TYPE.提供のラップ歌詞を考察
ワンピースの新作映画『ONE PIECE FILM RED』は、メインキャラクター・ウタの歌唱を担当するAdoの歌声とストーリーに合わせた挿入歌の数々に引き込まれる作品です。様々なアーティストの楽曲提供により多彩な楽曲が歌われていますが、なかでも新進気鋭の音楽ユニット・FAKE TYPE.が手がけた『ウタカタララバイ』はラップが印象的。
監督から「クセのある洗脳するような曲」や「明るい狂気感」というオーダーを受けて制作され、FAKE TYPE.の尖った音楽センスとAdoの力強い歌声がマッチし先の読めないトリッキーな曲となっています。
それではさっそく、主人公となるウタの背景事情にも触れながら、歌詞の意味を考察していきましょう。
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ひとりぼっちには飽き飽きなの
繋がっていたいの
純真無垢な想いのまま Loud out(Loud out)
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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赤髭海賊団の大頭シャンクスの娘でありながら、ある出来事がきっかけに船から降ろされ、音楽の国・エレジアで孤独に生きてきたウタは「ひとりぼっちには飽き飽きなの」と心情を明らかにします。
つらい孤独から自身を解放したい、人と繋がることから得られる幸せを感じたい。
そんな「純粋無垢な想い」からウタは「Loud out(大きな声で)」歌い続けています。
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Listen up baby 消えない染みのようなハピネス
君の耳の奥へホーミング 逃げちゃダメよ浴びて
他の追随許さないウタの綴るサプライズ
リアルなんて要らないよね?
後で気付いたってもう遅い
入れてあげないんだから
手間取らせないで Be my good boys & girls
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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ウタウタの実の能力者であるため、自身の歌声によって聴く人を仮想世界・ウタワールドへ連れていくことができます。
「消えない染みのようなハピネス」というフレーズは、その世界が現実世界とは違い争いのない幸せな状態が続く場所であることを示しているのでしょう。
そして「逃げちゃダメよ浴びて」とやや強引に全ての人をウタワールドに引きずり込み、苦しみのない世界を実現しようとしていることが伝わってきます。
その力は「他の追随許さない」ほど強力で、ウタにしかできない人々のための「サプライズ」です。
「リアルなんて要らないよね?」というフレーズからは、ウタの想いが初めの純粋な気持ちから歪んできてしまっていることが感じられますね。
仮想世界より現実を選んで後悔することになっても、その時には「入れてあげないんだから」と早く決断するよう促してきます。
ウタワールドで生きることこそ全ての人の幸せだと信じていて、“良い子だから”というように諭して連れて行こうとしています。
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誤魔化して強がらないでもう
ほら早くこっちおいで
全てが楽しいこのステージ上 一緒に歌おうよ
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞によると、仮想世界での幸せを認められない人たちは本当の気持ちを誤魔化して強がっているだけだと思っているようです。
苦しみなんて何もない「全てが楽しいこのステージ上」で一緒に歌おうと招きます。
幸せな日々にするから一緒にいて?
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I wanna make your day, Do my thing 堂々と
ねえ教えて何がいけないの?
この場はユートピア だって望み通りでしょ?
突発的な泡沫なんて言わせない
慈悲深いがゆえ灼たか もう止まれない
ないものねだりじゃないこの願い
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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「I wanna make your day(私は君の一日を作りたい)」というのがウタの願いです。
「Do my thing」は「私のしたいことをするんだ」というようなイメージの言葉と解釈できるでしょう。
そして、人々の幸福な日々を作りたいという願いの「何がいけないの?」と問いかけます。
これこそが人類の望みであるはずなのに、どうして受け入れようとしないのか疑問に思っていることが伝わってきますね。
ある人はウタのもたらす幸せは「突発的な泡沫」で、すぐに壊れてしまうような不安定なものだと言いますが、ウタはそうではないとはっきり否定します。
「灼たか」という言葉は、神仏の利益が際立ってあるさまを表しています。
慈悲深くも人々の想いを汲んで生まれたウタワールドに来さえすれば、誰もがその恩恵を享受できることを意味しているのかもしれません。
この願いはないものねだりではなく、確かに実現するのだと主張しています。
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I wanna know 君が欲しいもの
本心も気付かせてあげるよ
見返りなんて要らない あり得ない
ただ一緒にいて? True heart
Oh my “F” word
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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「君が欲しいもの」が幸福だと知っているため、まだ君さえ分かっていない「本心も気付かせてあげるよ」と自信を見せています。
「見返りなんて要らない」から「だた一緒にいて?」と求めるウタ。
人々の幸せを願う一方で、その本音は自分が孤独でいたくないという気持ちのようです。
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全身がふわふわっと不安などシャットアウト ~Bye~
半端ない数多のファンサは愛
ずっと終わらない You & I ここにいる限り
Trust me 超楽しい That's all
心奪われてうっとりと
道理もなくなってしまうほど渇望させちゃう
一抜けも二抜けもさせない させない!
I got a mic so you crazy for me forever
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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ウタワールドへ行った人たちは現実世界では眠った状態にあり、現実で経験する苦しみも不安も「シャットアウト」した夢の中にいるような状態です。
そのため、彼らにとってウタの歌はタイトル通り「ララバイ(子守唄)」であると理解できるでしょう。
この世界にいる限り、私たちの関係はずっと終わらないから「Trust me(私を信じて)」と言っています。
「心奪われてうっとりと」深く考えることも忘れて「道理もなくなってしまうほど」ひたすらウタワールドのもたらす幸せだけを渇望するようにしてしまいたいと暴走していきます。
自身が歌手としてマイクを持ち続ける限り永遠に続く新時代に、人々を捕らえようとする狂気的な気持ちが見えてくるのではないでしょうか。
救いを求める人々のためにわたしがやらなきゃ
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迷わないで
手招くメロディーとビートに身を任せて
全てが新しいこのステージ上 一緒に踊ろうよ
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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ウタワールドに飛び込むか現実世界で苦しみ続けるか「迷わないで」、ただ「手招くメロディーとビートに身を任せて」と人々に告げます。
目の前に広がるのは誰も見たことがない「全てが新しい」世界だから、夢中になって一緒に踊ろうと誘っていると思われます。
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この時代は悲鳴を奏で救いを求めていたの
誰も気付いてあげられなかったから
わたしがやらなきゃ だから邪魔しないで お願い...
もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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ウタは人々が救いを求めているのに誰も気づいていないのを知り「わたしがやらなきゃ」と新時代を築くことを決意したようです。
「だから邪魔しないで お願い…もう戻れないの」という歌詞を見ると、本心では今の自分のやり方が正しくないことに気づいているのでしょう。
しかし多くの人を巻き込んだ今、もう後戻りはできず進むしかないと考えています。
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直に脳を揺らすベース 鼓膜ぶち破るドラム
心の臓撫でるブラス ピアノ マカフェリ
五月雨な譜割りで Shout out! Doo wop wop waaah!
欺きや洗脳 お呼びじゃない
ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで
それだけでいい Hear my true voice
≪ウタカタララバイ (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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ここでは様々な楽器の音が、激しさを増していく様子が描かれています。
「Doo wop(ドゥーワップ)」とはポピュラー音楽における合唱スタイルの一種で、ソロのバックにハミング風のコーラスがからむのが特徴です。
一緒に歌ってウタワールドを盛り上げようと伝えるイメージなのかもしれません。
その世界は「欺きや洗脳」なんてものとは無縁で幸せだけを感じることができるから「ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで」と歌います。
そして「Hear my true voice(私の本当の声を聴いて)」と、ウタ自身の想いを知り賛同してほしい気持ちを伝えています。
そのようにして自分の願いが正しいものであると何とか証明したいという切羽詰まった心情も読み取れますね。
ヲタきち制作のダークポップなMVも必見!
『ウタカタララバイ』は孤独に苦しんできたウタの時代を変えたいという切実な心情から生まれた楽曲でした。映像ディレクターのヲタきちが制作したMVは、CGやモーションキャプチャーなどを駆使し、純粋な想いと狂気が入り混じるウタの心の中を映したようなダークポップな世界観が表現されています。
映画とはまた違う雰囲気を味わえるので、ぜひ合わせてチェックしてくださいね!