クリープハイプの代表曲「憂、燦々」の歌詞に注目
クリープハイプのメジャー3枚目となるシングル『憂、燦々(ゆうさんさん)』は、資生堂「アネッサ」の2013年度CMソングに起用されたタイアップ曲です。同年リリースの2ndアルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』の収録曲にも加えられ、ここからさらに多くのファンを獲得していった代表的な1曲としてファンに愛されています。
タイアップが決定した際、企業側から「You Sun Sun(あなたは太陽みたいに輝いている)」のフレーズを入れるよう依頼されたそう。
そのため、同じ読みの「憂、燦々」が楽曲名と歌詞に用いられています。
しかし「燦々」のフレーズは太陽が降り注ぐ明るいイメージですが、「憂」は思うようにならなくてつらく切ない気持ちを表す言葉です。
メロディーもキャッチーでポップな雰囲気でありながらどこか切なさもあり、クリープハイプらしい独特な空気感のある楽曲となっています。
さらにMVでは気性の荒い男性と気の弱い女性が登場し、まさに憂鬱な状況が映し出されています。
尾崎世界観・小野建作詞の歌詞の意味を徹底解釈していきましょう。
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小さな約束も守れないから 大きな欠伸でごまかしていたな
小さな幸せも見つけられないから 大きな目から涙を流してたな
愛しいだけじゃ足りないし 嬉しいだけじゃ不安だし
優しいだけじゃ意味ないし
≪憂、燦々 歌詞より抜粋≫
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『憂、燦々』はあるカップルの女性目線で綴られているようです。
自分との「小さな約束も守れないから大きな欠伸でごまかしていた」悪びれる様子もない彼。
そんな彼との関係の中で「小さな幸せも見つけられないから大きな目から涙を流して」耐えてばかりの自分。
普通の恋愛とは言えない関係を悲しみながらも、彼女は彼と別れられないでいます。
それは彼の存在に自身の理想を見ているからなのでしょう。
彼女は「愛しい」と感じるだけの甘い関係では物足りなく、「嬉しい」ばかりでは不安になり、「優しい」だけの恋人では一緒にいる意味がないと思っています。
だからこそつらく当たられて悲しさや痛みを伴いながらも、自分の複雑な気持ちを満たしてくれる彼を選んでしまうのです。
つまり『憂、燦々』は、いわゆるダメンズに惹かれてしまう女性の繊細な気持ちが綴られた楽曲です。
「憂、燦々」に込められた意味の解釈とは
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連れて行ってあげるから 憂、燦々
離さないでいてくれるなら 何でも叶えてあげるから
≪憂、燦々 歌詞より抜粋≫
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1番のサビでタイトルの「憂、燦々」のフレーズが出てきます。
この対照的な意味を持つ2つの言葉も、主人公と彼のいびつな恋愛関係を通してみると意味が伝わってくるように感じます。
彼女はほかの人では満たされなかった憂いの気持ちを、彼に燦々と晴らしてほしいと願っているのでしょう。
また、実際の歌唱ではこのフレーズは「憂」が5回繰り返されます。
「燦々」も同じ言葉を2回繰り返していると捉えると、彼と過ごす一週間の中で彼女が抱いている気持ちの割合を示しているとも考察できます。
それは悲しくてつらい日が5日あり、幸せを感じる日が2日あるということ。
恋人と過ごしているのに暗い気持ちになる日が圧倒的に多いことになりますが、こう考えると彼に依存してしまう彼女の異常性がはっきりと見えてきますよね。
また「連れて行ってあげるから」「何でも叶えてあげるから」の歌詞は、気の弱い彼女にしては意外と上から目線な物言いです。
それも「離さないでいてくれるなら」という条件つきで、彼に縋っているようでもあります。
彼女自身は少しも彼から離れることは考えておらず、むしろ離さないでいてくれたらお返しに何でもしてあげたいとさえ思っています。
もしかしたら「憂、燦々」には、思い切り自分勝手に振る舞い自分を憂鬱にさせ続けて心を縛りつけてほしいという想いも込められているのかもしれません。
離さないでいてくれるなら
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これからあたしたちどうなるのかな 今どうでもいい事考えてたでしょ
憎しみだけじゃキリないし 悲しいだけじゃ不満だし
厳しいだけじゃ笑みないし
連れて行ってあげるから こっちにおいでよダーリン
離さないでいてくれるなら いつでも許してあげるから
≪憂、燦々 歌詞より抜粋≫
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彼女は「これからあたしたちどうなるのかな」と、自分たちの未来について真剣に考えています。
しかし、彼はそんな時さえどうでもいいことを考えて他人事のようです。
もちろん、彼女は彼にたくさんの不満があります。
「憎しみ」だけ持ち続けていてもキリがなく、「悲しい」と一人で感じていても満たされず、「厳しい」態度ばかり向けられていては笑って流せません。
そんな中で彼女は「こっちにおいでよダーリン」と優しく彼に呼びかけます。
不満はあってもやはり彼は彼女にとって愛する人。
彼が「離さないでいてくれるならいつでも許してあげるから」と、どんなに我儘で傍若無人な彼のことも受け入れる姿勢を見せています。
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どこにでも どこにでも どこにでも
どこにいても どこにいても どこにいても
連れて行ってあげるから…
離さないでいてくれるなら…
≪憂、燦々 歌詞より抜粋≫
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「どこにでも」連れて行ってあげるから「どこにいても」離さないでいてと、彼への切実な想いを伝えていますね。
諭すような言葉で対等に振る舞っているようでいて、彼女は常に彼に捨てられることに怯えているように見えます。
だからほかの女性の元にいるとしても彼を非難することができず、自分と別れないでいてくれるならそれでいいと彼の行動を認めてしまうのでしょう。
本当はこんな関係が虚しいだけでどんどん彼との距離が開いていることも感じていますが、もはや執着にも似た気持ちで彼を求め続けている彼女の想いが切ないですね。
歌詞の世界を表現するMVもチェック!
『憂、燦々』はダメンズにハマって離れられない女性の複雑な心情を綴ったポップチューンです。クリープハイプの楽曲の中でも特に人気曲として挙げられている理由は、女性の共感を呼ぶだけでなく切なさを抱える心を受け止めて包み込んでくれる温かさがあるからなのでしょう。
心を揺さぶるようなMVも歌詞のイメージをさらに膨らませてくれるので、ぜひ合わせてチェックしてみてくださいね。