アニメ映画「君を愛したひとりの僕へ」主題歌を担当
人気3ピースバンド・Saucy Dog(サウシードッグ)が2022年10月4日に配信リリースした新曲『紫苑』は、アニメ映画『君を愛したひとりの僕へ』の主題歌として書き下ろされました。TikTokで話題の小説が原作となった『君を愛したひとりの僕へ』と『僕が愛したすべての君へ』は2作同時公開されています。
“並⾏世界”を⾏き来することができる世界を舞台に、同じ名前の2人の少年がそれぞれの世界で1人の少⼥と恋に落ちるラブストーリーとなっています。
その主題歌のタイトルに使われている「紫苑」は、9〜10月に咲く薄紫色の花のこと。
「追憶」「君を忘れない」「遠方にいる人を思う」といった花言葉を持っていることから、この楽曲は今は隣にいない大切な人に向けた歌であることが伝わってくるでしょう。
ピアノを取り入れた優しいメロディにボーカル・石原慎也の切なく美しい歌声が重なり、映画の世界観を引き立てています。
どんな内容なのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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いつのまにか。僕らはこんなに傍に居たのにね
時間を戻せたら、違った運命だったかな。
いくつになっても。奇跡なんかを信じていたかった
しわしわのヨボヨボになっても必ず迎えに行くから。
≪紫苑 歌詞より抜粋≫
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主人公の男性は愛する人が傍にいない現状を見つめながら、幸せだった過去を思い出しています。
「時間を戻せたら、違った運命だったかな。」という問いは、過去に後悔のある人ならきっと一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
大人へと歳を重ねていくにつれて現実的な見方をするようになりますが、主人公は少年の頃のように「奇跡なんかを信じていたかった」と純粋な気持ちを語っています。
そして「しわしわのヨボヨボになっても必ず迎えに行くから」と愛する人に誓いました。
「いつのまにか」という言葉で過去の月日を、「いくつになっても」のフレーズで未来の時間を想像させる歌詞に冒頭から惹きつけられます。
どこかでまた会えることを信じて
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もしもの話ならもう嫌と言うほどしたよな
「どうせ」より「きっと」その方がずっと
楽だと思っていたかった
≪紫苑 歌詞より抜粋≫
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思い返せば2人の間にあったのは「もしもの話」ばかりでした。
受け止めたくないけれど変えられない現実に「どうせ」と投げやりになるよりも、「きっと」と希望を持っている方が楽だと自分に言い聞かせていたようです。
夢見がちなわけでも現実逃避でもなく、ただそう信じることで逃れられない運命の中にいる自分たちの心を守ろうとしていたのかもしれません。
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涙の所為だね さよならが苦しいのは
いつもみたいにさ 笑って「じゃあね」
今日からひとりずつ。でもどこかで
また会えるような、そんな気がしてる。
≪紫苑 歌詞より抜粋≫
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ずっと一緒にいたいと願いながらも別れることになってしまった2人。
交わす「さよならが苦しいのは」思わずあふれ出る「涙の所為だね」という言葉に、切ない別れの様子がイメージできるでしょう。
また明日も会えるかのような気軽さで笑って「じゃあね」と言えればいいですが、互いの心にあるのはそんなに簡単な気持ちではありません。
今日までは2人で時間を共にしてきたため、それぞれ別の道を歩むということは寂しく心が欠けてしまうようにさえ感じてしまいます。
それでも「どこかでまた会えるような、そんな気がしてる。」と前向きな姿勢を貫いているところに、主人公の強さと想いの深さが読み取れます。
思い出話はその時にしよう
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思い出した。あの夏僕らは風を追い越して
まだ見ぬ未踏の地へ、ふたりだけの未来の為。
変わってしまう事。何をしたってもう変わらないモノ
時間を戻せたら、違った運命だったかな。
≪紫苑 歌詞より抜粋≫
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主人公は「ふたりだけの未来の為」に、今生きている世界と似ているようで少し違う平行世界へ飛び出したと解釈できます。
しかし世界が異なるということは、愛する人と出会えるかどうかもまた恋をするかも分かりません。
状況は全く変わってしまい、「何をしたってもう変わらない」のは別れたという事実だけになってしまいました。
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夜の帳に沈んでいくのは
未来を見つけ出したくて
ほら僕らどうせもう後戻りはできないんだ
掴み損なった未来を迎えに行く
≪紫苑 歌詞より抜粋≫
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主人公はどうしても2人で生きる未来を諦めきれないようです。
そして「僕らどうせもう後戻りはできないんだ」と覚悟を決めます。
思い通りになる保証はありませんが、「掴み損なった未来を迎えに行く」と強気に運命に立ち向かいます。
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世界が全てを忘れても迎えに行くよ
初めから全部が繋がってるんだ
今日からその日まで。きっとどこかで
また会えるように、そんな気がしてる。
思い出話はその時にしよう。
≪紫苑 歌詞より抜粋≫
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「世界が全てを忘れても迎えに行くよ」という表現から、取り巻く状況はあまり良くないことが分かりますね。
しかし、もし訪れた平行世界で2人の恋が消えてしまって、愛する人の存在そのものが隠されてしまっても、必ず再会するという確信の気持ちが感じられるでしょう。
どうなるかは誰にも分からないものの、主人公はまた想いを通わせることをひたむきに願い続けています。
「初めから全部が繋がってるんだ」という歌詞も、出会った時から2人が共に生きる未来は決まっているんだという強い想いを伝えてきます。
今自分が経っている場所は決して望んでいた未来ではないけれど、「きっとどこかでまた会えるように」と信じて今を懸命に進んでいくのです。
また会えたら「思い出話はその時にしよう。」とあるように、一緒にいられなかった間のことを含めて過去のことを語り合う幸せな時間を想像しています。
最後までその未来を現実のものとして信じる熱い気持ちに胸を打たれます。
Saucy Dogのさらなる活躍に期待!
『紫苑』は出会いと別れ、愛や切なさといった映画の物語で描かれているテーマを詰め込んだラブソングです。同じように後悔を抱えている人たちの心に寄り添う歌詞に、前を向けるよう背中を押されるのではないでしょうか。
2023年には自身最大規模となる全国ライブツアーを控えるSaucy Dogの新たな名曲にぜひ注目してください。