「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」2周年記念曲に注目
sasakure.UKの『AMARA(大未来電脳)』はリズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の2周年記念楽曲として書き下ろされました。2022年10月11日の公開と同時にゲーム内に実装された超高難易度譜面楽曲で、わずか7時間で1万再生を突破しておりプレイヤーの注目度の高さが窺えます。
この楽曲は、人がいなくなりボーカロイドのような「ヒト為らざる者」だけが生きる未来の電脳世界を舞台にしているようです。
初音ミクとKAITOのどこか不安定な歌唱がほかの楽曲とは違った印象で引き込まれます。
まるで遠い未来を覗き見しているかのような壮大な歌詞の意味を考察していきましょう。
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無数のジオラマが呑まれる応答
引き摺られた心が輝く惑星で
言葉の剥ぎ方も忘れて
銃声とナニカに囚われて
月の闇を漕ぐ
ファンタジーを暴く
声に逆らい
(ヒカリナクモアレ)
現実か虚構か、誰にもその先は解らない
現実か虚構kkkkk
≪ÅMARA(大未来電脳) 歌詞より抜粋≫
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ここの歌詞では世界が電脳で作り上げられた音楽に呑み込まれていくようなイメージが伝わってきます。
そんな歪な世界の中で主人公はうまく生きられないでいるようです。
「言葉の剥ぎ方も忘れて銃声とナニカに囚われて」のフレーズに、窮屈さや不安感が込められているような気がします。
そして誰かの「声に逆らい」、このファンタジーのような世界の真相を暴こうとしていると思われます。
とはいえ自分の目に映っているものさえ不確かで、「現実か虚構か、誰にもその先は解らない」という言葉の通り一寸先も見えない状況です。
自分が知っている世界とは違うから受け入れがたく感じていますが、何が現実なのかを知る力は主人公にはありません。
私たちの文明では到底理解できない言葉
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無縫のしがらみが震える応答
刻みつけられたシ考の砦
詩が待つ彼の名も忘れて
流星と涙に攫われて
硝子の心臓覆う
ファンタジーを暴く
声に逆らい
≪ÅMARA(大未来電脳) 歌詞より抜粋≫
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「無縫」は縫い目がない天成のもののことなので、「無縫のしがらみ」は人が初めから背負わされている社会のルールのことと解釈しました。
先人たちによって刻みつけられてきた古臭い考えが幅を利かせ、自由に考えることを邪魔しているのです。
そのせいで大切な人の名前も忘れて、ただ誰かの指示通りに生きる存在になってしまっているのでしょう。
続く部分の「流星」は願いを、「涙」は悲しみを表していると考えられます。
主人公は流星を見て、こんな世界から抜け出したいと祈りながら涙しているのかもしれません。
それがこの世界に対する罪だとしても、自分の脆い「硝子の心臓」を守ろうと行動しているようです。
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XXXXXXXXX
(何が綴られていたのか、私たちの文明では到底理解できない)
XXXXXXXXX
(何が綴られていたのか、私たちの文明では到底理解できない)
≪ÅMARA(大未来電脳) 歌詞より抜粋≫
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この楽曲の中で特に印象的なのがこのフレーズです。
歌詞冒頭とラストにも出てくる「XXXXXXXXX」は意味がないわけではなく、「何が綴られていたか、私たちの文明では到底理解できない」からこその表記であることが分かります。
過去の時代の人たちに今の時代について説明してもきっと理解されないのと同じように、未来の文明では新しい言葉や考え方が生まれているはずなので、現在の私たちが理解できない言葉があっても不思議ではありません。
理解はできなくても、その言葉にはこの時代を生きている存在の想いが込められているはずです。
このフレーズがあることによって、文明は変化していっても世界はひと続きで永遠に続いていくということや人がいつまでも生き残り続けられる保証はないということが示されているように思えます。
ちなみに聞き取りづらい日本語の歌詞が歌われているようなので、低倍速にして自分の耳で何と歌われているか聴いてみてください。
「AMARA」が示す意味とは
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文明と不思議が脈打つ回路
透明な怪物に花束を―
星を飲み込んで!
夢の毒吐く回廊
再生の祝祭が千切れるまで
天国を這う、夜に!
≪ÅMARA(大未来電脳) 歌詞より抜粋≫
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そこは「文明と不思議が脈打つ回路」。
現在の私たちでは到達できない不可解なもので成り立っている世界なのでしょう。
そんな世界で主人公は目には見えない「透明な怪物に花束を」捧げ、「星を飲み込んで!」と叫んでいるようです。
「夢の毒」が今見ている状況は現実ではないという空想に苦しめられていることを表しているのだとしたら、希望の光となる星も消していっそ夢なんて見させないでほしいと願っているように聴こえます。
「天国を這う、夜に!」というフレーズには、明るいイメージと暗いイメージが共存しています。
人間が生きてきた世界は終わり再生して新しい時代が始まったことを、ヒト為らざる者たちが祝っているのを見ながら、主人公が受け入れるべきか反発するべきかと心を揺らしているのかもしれませんね。
タイトルに注目してみると、「AMARA」は正式には長さの単位を表す「Å(オングストローム)」が使われており、1Å=0.1nm(ナノメートル)という原子や分子、可視光の波長などの小さな長さを表すのに用いられます。
これはおそらく電脳世界の緻密さを表現しているのでしょう。
そして「AMARA」を単語として見ると、英語で「苦味薬」、イタリア語で「苦い」という意味になります。
しかし、チベット語では「母」、ヒンドゥー語では「不死」、サンスクリット語では「汚れのない・天」、ラテン語では「愛される・輝き続ける」といった意味があるようです。
それぞれ異なる意味を持つ言葉ですが、総じて楽曲の神秘的な世界観やその裏に潜む苦しさを表現するのにぴったりな言葉と言えるのではないでしょうか。
また、MVで登場する花はアマランサスのようで、花言葉は「不滅」。
美しく壮大な世界を描きながらどこか不穏な雰囲気も漂う『AMARA(大未来電脳)』は、聴けば聴くほど様々な景色を見せてくれる名曲です。
このメッセージをあなたはどう解釈する?
sasakure.UKは『AMARA(大未来電脳)』について、「彼らが奏でる複雑なmassageを“天国”と解釈するか、“奈落”と捉えるのか それはこの謳に触れる貴方に委ねたい。」と記しています。この楽曲を含めボカロ曲の歌詞は難解なものが多いですが、そこに込められたメッセージは大抵リスナーに委ねられています。
自分が納得できる意味を考察していけば、きっとボカロ曲を聴くのがもっと楽しくなりますよ!