「チェンソーマン」× 豪華アーティスト
ずっと真夜中でいいのに。は、ACAね(あかね)を中心に2018年にデビューしたバンド。1stデジタルシングル『秒針を噛む』をはじめ、『ヒューマノイド』『お勉強しといてよ』といった斬新な楽曲で若者を中心に人気を獲得しています。
そんな彼らの最新作『残機』は、現在放送中のTVアニメ『チェンソーマン』第2話のエンディングテーマに起用されました。
このアニメは、全12話のエンディングテーマを毎週異なるアーティストが担当していることでも注目を集めています。
ずっと真夜中でいいのに。のほか、ano、Eve、Aimer、Kanaria、女王蜂、syudou、TK from 凛として時雨、TOOBOE、Vaundy、PEOPLE 1、マキシマム ザ ホルモンといった豪華アーティストが集結。
さらに、オープニングテーマには米津玄師の『KICK BACK』、挿入歌にマキシマム ザ ホルモンの『刃渡り2億センチ』を起用するなど、現在における日本の音楽業界の盛り上がりがそのまま投影されています。
ハイクオリティな映像美や演出でも話題を呼んでいるアニメ『チェンソーマン』。
原作は2019年から週刊少年ジャンプで連載開始された、藤本タツキの同名の漫画作品です。
現在はジャンプ+で第2部の「学園編」が連載中。
単行本の累計発行部数は1800万部以上に上り、今もっとも熱い漫画作品の1つです。
今回は『チェンソーマン』のストーリーに触れながら、『残機』の歌詞の意味を読み解いていきましょう。
アニメの世界観に没入出来る歌詞
歌詞の意味を考察する前に『チェンソーマン』を知らない方のために、ここで簡単なあらすじをご紹介しましょう。
主人公の「デンジ」は、相棒であるチェンソーの悪魔「ポチタ」と共にデビルハンターとして生計を立てています。
亡き父の借金を返済すべく、ヤクザから仕事の斡旋を受けますが、彼らに騙されたことで一度命を落としてしまいました。
しかし「ポチタ」がデンジの心臓となることで「チェンソーの悪魔」として生き返ったデンジ。
ひょんなことから力を手にしたデンジが、個性豊かなキャラクターと出会いながら悪魔達と対峙していくというアクションストーリーです。
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しょっぱいぜ 初めて嗅いで舐めた出会い
自暴自棄です 平均的な正論が貧乏
いらっしゃいませ ニンニク増しで目指した健康体
腹歌満たしてる
≪残機 歌詞より抜粋≫
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1番の歌詞には、デンジとポチタの出会いが投影されています。
父を亡くしたデンジは、残された多額の借金を背負うこととなり、人生に絶望していました。
そんな中、彼は瀕死の状態のポチタと出会います。
過酷な状況下でも生きる気力を失わないポチタに触発されたデンジは、自分の血を飲ませることでポチタを回復させ、自身も生きる活力を見出すのでした。
「ニンニク増しで目指した健康体」とは、一時的なエネルギー投与を思わせます。
自暴自棄だったデンジと、その血を舐めたことで契りを交わし、共に生きることになったポチタ。
突発的な行動だったとしても、2人の出会いはお互いにとって“生きる理由”になったのではないでしょうか。
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優等生 無知なフリして踊っちゃって
欠点です 現状把握しちゃうから中断中
もう譲渡 見せびらかし合いましょ劣等感妄
変えられゃしないってわかってるからぁ?
≪残機 歌詞より抜粋≫
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一方で、こちらの歌詞は現代社会にも通じるものがあります。
優等生として振る舞うことで、無難に生活していた主人公。
自分の欠点や厳しい現実から目を背けていれば、確かに傷付くこともないでしょう。
しかし、最終的には自身が抱えるコンプレックスをさらけ出して「本当の自分」のまま生きていくことを決意します。
自分の本質を変えられないならば、周りの目を無視して自分らしさを開放してやろうという気概すら感じられます。
絶妙に織り込まれた活力と危うさ
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直感で自己中な理解不能プレイヤ
求められたなら惨事会
くだらん口喧嘩でマシになんだ
モットーもっと?もう意外と辛いのに
≪残機 歌詞より抜粋≫
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「直感で自己中な理解不能プレイヤ」とは、まさにデンジそのものを表したようなフレーズです。
彼は自分の夢見た生活のためならば、時に凶暴なモンスターと化すからです。
心根は優しい青年ですが、感情の赴くまま行動してしまう一面は危うさも孕んでいます。
しかし、その爆発的なエネルギーが彼を突き動かしているのもまた事実。
考えるより先に行動できるアクティブさが、楽曲のスピード感と共に表現されています。
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うざいくらい 叫んだって喰らったって
譲れない日々よ 栄養になってまた 汚しあえ
残機わかんなくて 上がんなくて
脊髄反射の涙腺は 濁った声で歌えば感謝です
≪残機 歌詞より抜粋≫
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タイトルの『残機』とは、ゲームの中で用いられるプレイヤーの残数のこと。
いつ限界が来るか分からない状況でも、決して立ち止まることのない強い意志を感じさせます。
どれだけ泥臭く生きようと、譲れないものがある。
その確固たる覚悟が、デンジを突き動かすのでしょう。
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試したいわ あたたかくて
絶体絶命な 夜は気持ちい
平凡な生活 ゆめみたけど
先手必勝が 気持ちいいな
≪残機 歌詞より抜粋≫
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『チェンソーマン』では随所に他人や動物、心を許した悪魔とのふれあいに心地よさを感じる描写が登場します。
死と隣り合わせの毎日の中で、ふと感じられる鼓動や体温の温かさは、えも言えぬ安心感を与えてくれるのでしょう。
デンジが夢見たのは、紛れもない「平凡な生活」でした。
その生活が当たり前になるまで、彼はこの残酷な世界を駆け抜けていくのでしょう。
「残機」とは命そのもの
今回は、ずっと真夜中でいいのに。の最新曲『残機』の歌詞の意味を考察してきました。ここまで歌詞を辿り、改めて『残機』が指すものを考えてみると、それは“命そのもの”を指しているように感じられます。
それは、デンジの命のリミッターだけでなく、彼らが所属する公安のメンバー1人ひとりの命を指すのかもしれません。
いずれにせよ、残機が残りひとつになったとしても、この過酷な世界に挑み続けなくてはならないのです。
そんな厳しい現実の中でも、その都度小さな夢を思い描くことで歩みを進めていくデンジ。
ぜひ『残機』を通して『チェンソーマン』の世界観からACAねが汲み取った想いを体感してみてください。
ずっと真夜中でいいのに。は作詞・作曲・ボーカルのACAねによる、特定の形をもたない音楽バンド。 YouTubeチャンネル登録数175万人を超え、YouTubeの総再生回数は4.2億回、初投稿楽曲「秒針を噛む」は現在9,500万回再生を突破。 1st mini ALBUM『正しい偽りからの起床』は第11回CDショップ大···