山下達郎の冬の名曲「クリスマス・イブ」
山下達郎が1983年にリリースした『クリスマス・イブ』。
JR東海のCMシリーズ『クリスマス・エクスプレス』に起用されたことでヒットし、リリースから時が経った今もクリスマスの名曲として知られています。
一方で、よく耳にしてはいるものの、歌詞の意味をじっくり考えたことのある方は意外に少ないかもしれません。
今回は、山下達郎『クリスマス・イブ』の歌詞の意味を考察していきます。
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雨は夜更け過ぎに
雪へと変わるだろう
Silent night,Holy night
≪クリスマス・イブ 歌詞より抜粋≫
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楽曲中で繰り返される「Silent night,Holy night」や楽曲タイトルからして、歌詞は12月24日(クリスマス・イブ)の出来事を描いていると思われます。
せっかくのクリスマス・イブにもかかわらず、空は雨模様。
この出だしだけでも、幸せなクリスマスではない、なんとなく悲しい雰囲気が感じられそうですね。
主人公と「君」の関係は?
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きっと君は来ない
ひとりきりの
クリスマス・イブ (mrn)
Silent night, (oh year)
Holy night
≪クリスマス・イブ 歌詞より抜粋≫
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『クリスマス・イブ』で最も印象的なフレーズといえば「きっと君は来ない」ではないでしょうか?
主人公はクリスマス・イブの夜に「君」が来るのを待っていたようです。
果たして「君」とは、主人公にとってどのような関係の人物だったのでしょうか?
続く歌詞とあわせて考察してみましょう。
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心深く 秘めた想い
叶えられそうもない
必ず今夜なら
言えそうな気がした (mrn)
≪クリスマス・イブ 歌詞より抜粋≫
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まだ消え残る 君への想い
夜へと降り続く
街角には
クリスマス・トゥリー
銀色のきらめき (mrn)
≪クリスマス・イブ 歌詞より抜粋≫
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「心深く 秘めた想い」の歌詞から考察すると、主人公と「君」はいわゆる“恋人”といったような特別な関係ではないように思えます。
おそらく2人は単なる友人関係ですが、実は主人公は「君」に「秘めた想い」=恋心を抱いているのでしょう。
そして主人公は「君」をイブの夜に呼び出し、想いを伝えようとしていたのかもしれません。
しかし「君」は待ち合わせた時間を過ぎても訪れないようです。
「きっと君は来ない」のはなぜ?
「君」が来なかった理由は、大きく2つのパターンに解釈できると思います。
1つ目は、急な予定が入ってしまい“来たかったけど来れなかった”パターン。
『クリスマス・イブ』がリリースされた1983年には、まだ携帯電話はありませんでした。
携帯電話の前に普及していたポケベルでさえも、世に浸透し始めたのは1980年代後半です。
都合が悪くなってしまった「君」ですが、主人公に連絡する術はなく、事情を知らない主人公がただ一人「君」を待ち続けていると考えられるでしょう。
2つ目は「君」が“あえて来なかった”パターンです。
クリスマスイブという大切な日に約束をした時点で「君」はなんとなく主人公の意図を察していると考えられるでしょう。
約束の場所に行かないことは、特別な関係にはなれないという「君」なりの意思表示だったのかもしれません。
主人公もまた、「君は来ない」=“返事はNo”だと気づいて、落胆しているとも考えられます。
「クリスマス・イブ」は失恋ソング?
ここまでの考察を踏まえると、『クリスマス・イブ』は悲しい失恋ソングと捉えられるでしょう。
そこで、あえてもう1つだけ考察を付け加えます。
『クリスマス・イブ』の歌詞は主人公の心情がメインで描かれており、「君は来ない」というのも主人公の憶測でしょう。
「君」についての事実は書かれていないので、もしかしたら「君」は待ち合わせの時間に遅れているだけで、実際は主人公の元へ向かっているとも考えられるかもしれません。
ちなみに『クリスマス・エクスプレス』も遠距離恋愛のカップルが最後に再会するストーリーで描かれていました。
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雨は夜更け過ぎに
雪へと変わるだろう (mrn)
Silent night, (oh…year)
Holy night
≪クリスマス・イブ 歌詞より抜粋≫
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考え方によって「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」のフレーズも「雪へと変わる」=状況が変わるというハッピーエンドを意味しているとも捉えられるかもしれませんね。
さまざまな物語が考えられる歌詞
山下達郎『クリスマス・イブ』の歌詞の意味を考察しました。『クリスマス・イブ』の歌詞では、あまり多くのことが語られていません。
余白がある分、歌詞からさまざまなエピソードが想像できると言えるでしょう。
皆さんは『クリスマス・イブ』の歌詞から、どのような物語を思い浮かべますか?