新海誠×RADWIMPSで魅せる新世界
2022年11月11日に公開された新海誠監督の最新作アニメ映画「すずめの戸締り」。新海監督ならではの映像美やファンタジックな世界観が、本作でも惜しむことなく盛り込まれています。
主題歌『カナタハルカ』に加え、20曲以上に及ぶ劇伴音楽を担当したのは、いまや国民的バンドとなったRADWIMPSです。
新海監督とRADWIMPS のコラボは2016年の「君の名は。」、2019年の「天気の子」に引き続き今回で3度目となります。
さらに作曲家の陣内一真(じんのうちかずま)を迎え、音楽を通して「すずめの戸締り」にさらなる彩りを添えました。
11月10日には『カナタハルカ』のOfficial Music Videoが公開され、わずか数日で100万回再生を突破。
今回はそんなRADWIMPS『カナタハルカ』の歌詞の意味を辿りながら、色彩豊かな楽曲の世界観を考察します。
僕が導き出した「恋」の答え
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恋の意味も手触りも 相対性理論も
同じくらい絵空事なこの僕だったんだ
大人になる その時には 出逢えているのかな
何万とある愛の歌 その意味が分かるかな
≪カナタハルカ 歌詞より抜粋≫
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冒頭では「相対性理論」というフレーズが異様な存在感を放っています。
これは、アインシュタインが導き出した世紀の大理論ですが、体感でこの事象を理解するには経験が必要となります。
誰もが知っているのに、経験してみないとその実態が上手くとらえられないという点では、恋も相対性理論も同じなのでしょう。
また、この1フレーズだけで僕にとって「恋」というものがどれだけ不確かな存在であるかが伝わってきます。
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でも恋は革命でも焦燥でも天変地異でもなくて
君だった
≪カナタハルカ 歌詞より抜粋≫
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「恋に落ちる」とは、世界がひっくり返るような凄まじい衝撃を伴うのかと思っていた「僕」。
しかし実際は、気づけば傍にいる「君」への感情が”恋そのもの”だったのです。
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君の笑い方はなぜか淋しさに似てた
君の歌い方は今日の朝焼けに見えた
何千年後の人類が何をしているかより
まだ誰も知らない顔で 笑う君を見たい
≪カナタハルカ 歌詞より抜粋≫
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儚くも美しい「君」の一挙一動に、「僕」は今まで感じたことのない感情を抱いていました。
「僕」にとって、人類の未来より「君」の笑顔の方が何倍も価値があるのでしょう。
「君」と寄り添いながら、まだ知らない一面をもっと見てみたいという慈しみの気持ちが溢れ出しています。
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僕にはない 僕にはないものでできてる
君がこの僕を形作ってる
そんなこと言うと笑うんでしょ?
そんな顔でさえ見たいと思ってる
≪カナタハルカ 歌詞より抜粋≫
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「僕」が持っていないものを持っている「君」。
その存在自体が「僕」に生きがいを与え、「僕らしさ」を引き出してくれるのでしょう。
“感情”という一言ではくくれない、様々な「君の表情」を「僕」は守りたいと強く感じているのではないでしょうか。
野田洋次郎の才能が歌詞に凝縮
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僕ひとりのため今日まで 使ってきたこの心
突然君に割り込まれ 大迷惑 大渋滞
でもすると君はこの僕が今宇宙で一番ほしかった
言葉を言うの
≪カナタハルカ 歌詞より抜粋≫
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自分のためだけに費やしてきた「心」が、いつからか「君」でいっぱいになっていました。
初めての感情にかき乱され、振り回される主人公。
鼓動が跳ね上がったり、多幸感に満ち溢れたり、時には傷付くこともあったでしょう。
しかし、そんな感情ですら「君」と出会わなければ知ることもなかったのです。
初めての「恋」に戸惑いながらも、一番欲しかった言葉を言ってくれる相手に出会い、充実感を感じる主人公の様子が伝わってきます。
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「あなたさえいれば」 「あなたさえいれば」
そのあとに続く言葉が どれだけ恐ろしい姿をしていても
この両の腕でいざ 抱きしめにいけるよ
あなたと見る絶望は あなた無しの希望など霞むほど輝くから
≪カナタハルカ 歌詞より抜粋≫
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この部分の歌詞には、野田洋次郎の圧倒的な才能が光っています。
「あなたさえいれば」というフレーズは、その後に続く言葉次第で薬にも毒にもなります。
どんな恐ろしい言葉が続こうが、それがどんな呪いを持とうが、「僕」にとって「君」と一緒にいることに意味があるのでしょう。
「僕」から「君」に対する想いの強さは「あなたと見る絶望は あなた無しの希望など霞むほど輝くから」という歌詞に集約されています。
最新のRADWIMPSが詰まったサントラ
『カナタハルカ』は音楽配信サービスおよび各種サブスクリプションサービスで、10月28日から配信リリースが開始されています。また、映画 『すずめの戸締り』の公開に伴い、『カナタハルカ』を含む29曲が収録されたサウンドトラックも11月11日からリリースを開始。
ぜひ映画鑑賞と共に、最新のRADWIMPSが詰まったサウンドトラックを楽しんでみてはいかがでしょうか。