デンジの生き方を表現した歌詞
2022年12月21日リリースのTK from 凛として時雨の新曲『first death』。人気シンガーやボカロPなど、豪華アーティストが主題歌や各話のエンディングテーマを担当していることでも話題のTVアニメ『チェンソーマン』の第8話で披露されました。
MVは映像ディレクターの依田伸隆が監督を務め、4面LEDに『チェンソーマン』からインスパイアされた映像やイラスト、CGが映し出されたスタジオで演奏する姿が印象的です。
TKの目線でどのような物語が描かれているのか、第8話のストーリーに触れながら歌詞の意味を考察していきましょう。
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カミソリ的 超支配的 不気味な不死身 無敵懲役
ちょうだい其方 恐怖のアバター 悪魔のバーター抱きしめたんだ
僕の心が何か欲しがっている 血と涙が僕を捜し出した
≪first death 歌詞より抜粋≫
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「超支配的 不気味な不死身 無敵懲役」のフレーズは、絶対的な存在のマキマの支配下で生涯デビルハンターとなったデンジのことを指しているのでしょう。
またバーターは物々交換という意味があり、悪魔と契約して戦っているデンジの生き方が端的に表現されています。
作品はチェーンソーをモチーフにしていますが、歌詞は「カミソリ的」という言葉で始まります。
カミソリはチェーンソーに比べれば殺傷能力は低いものの鋭利さの点で言えば勝っていて、身近にあるので自傷行為にも用いられてしまうものです。
これは自分の体の一部や感情、命さえ削りながら対価を差し出さなければならない悪魔の契約のリスクの大きさを物語っているのかもしれません。
続く「僕の心」はデンジ自身の気持ちと、その心臓となったチェンソーの悪魔・ポチタの両方を示していると解釈できます。
自分が何を求めているかも分からず苦しみながら生きてきた末に、生きる意味を見出した様子を思わせます。
デンジと姫野先輩がそれぞれ抱える想い
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エブリ バディそこで何してる? DEVILにすべて吸い取られちゃう
デビル バディそこで何してる? EVILにすべて染まって
≪first death 歌詞より抜粋≫
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この歌詞はデンジだけでなく、姫野先輩の状況も表していると思われます。
「エブリ バディ」には英語の「everybody(みんな)」と、「every buddy(全てのバディ)」の2つの意味がかかっているのでしょう。
バディを組んで活動するデビルハンターたち。
姫野先輩は現在のバディである早川アキの前に5人のバディがいましたが、いずれも殉職してしまいました。
「DEVILにすべて吸い取られちゃう」の歌詞は、悪魔に殺されてしまったこれまでのバディたちと、アキを救うために幽霊の悪魔に全てを渡した姫野先輩自身と重なります。
「EVIL」は災厄という意味があるので、その後姫野先輩を襲った出来事を連想させますね。
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永久完全臓器物 脳天Saw見せちゃおうかな
完全無血のデイジーチェーン ノーベルShowは僕のもの
とろける様なキスをして first deathは君に捧ぐから
≪first death 歌詞より抜粋≫
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「永久完全臓器物」は血を飲むことで再生し続けるデンジのことと解釈できるでしょう。
第7話で永久機関ができた、ノーベル賞ものだと笑いながら戦っていたデンジの姿が思い出されますよね。
「デイジーチェーン」とは複数のデンキや電子機器を数珠つなぎにしたり、全部まとめて1つの輪にしたりする接続方法の呼称です。
これはデンジの胸の紐や、困難を乗り越えながら何度も復活して戦い続けるデンジの命を表現する言葉と言えそうです。
続く「とろける様なキスをして first deathは君に捧ぐから」のフレーズは、酔った姫野先輩からキスされてからデンジが気づいた自身の気持ちを綴っていると考察しました。
姫野先輩から迫られ、自分の“初めて”はマキマに捧げたいと決意した純粋な気持ちが伝わってきます。
姫野先輩が見せた一途な愛
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君の視線のその先に 果たして僕は居たのかな
あの日の夢 壊れた普通 Iの匂い 居たのかな
僕の心が夢を欲しがっている 血と涙が僕を捜し出した
≪first death 歌詞より抜粋≫
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この部分からはアキに想いを寄せる姫野先輩の視点として解釈してみましょう。
「I」は自分自身を表しているようでもあり、読みから愛を示しているようでもあります。
アキの心に自分はいたのだろうか、そこに少しでも愛情があったのだろうかと自分たちの関係を振り返っている様子と捉えられるでしょう。
またあえて「I」と表現されているのは、姫野先輩とアキにとって特別な意味を持つたばこのシルエットを模しているのかもしれません。
自分が覚えさせたたばこの匂いで、これからも自分の存在を思い出してくれることを「夢」として思い描いているように感じます。
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永遠前にそこで何してる? 死ぬまで君を愛してる
単純明快愛楽死 マグマ 夢 愛 ラヴ 死
≪first death 歌詞より抜粋≫
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「愛楽死」は安楽死をもじった言葉だと思われます。
愛ゆえの死なら安らかな心で迎えられる...そんなイメージが伝わってくるのではないでしょうか。
死ぬまでアキを愛し続けただけでなく、その死さえもアキのために自ら選んだ姫野先輩の愛の深さが感じられますね。
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完全無血のデイジーチェーン ノーベルShowは僕のもの
最期の夢を抱きしめて last deathは君に捧ぐから
≪first death 歌詞より抜粋≫
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歌詞の流れを見ると、このサビにも姫野先輩の想いが反映されていると考えられます。
様々な出会いや出来事が数珠つなぎのように連なっているという意味で、人生は「デンジ―チェーン」のようと言えるかもしれません。
ちなみにデイジーの花言葉は「平和」や「希望」です。
この花言葉の意味も込められているとしたら、アキの人生を案ずる姫野先輩の優しさを示しているとも取れそうですね。
そして自分が死んだらアキに泣いてほしいという「最期の夢を抱きしめて」、最初で最後の正真正銘の死をアキのために捧げた一途さが心に沁みます。
ストーリーと音楽のリンクを楽しんで
TK from 凛として時雨の『first death』には、デンジと姫野先輩の生き方に共通する“大切な人に認められたい”という強い想いが込められていると感じました。歌詞だけでなく疾走感とダークさをかけ合わせた音楽や、チェーンソーを思わせるギターの音など、楽曲全体を通してアニメのストーリーと見事にリンク。
より没入感を与えてくれる、名曲に仕上がっています。
アニメの非日常感とその中に描かれるリアルな心情を、ぜひ『first death』の歌詞からも感じ取ってください。
凛として時雨のフロントマンでボーカル&ギターであり、全作曲、作詞、エンジニアを担当し鋭く独創的な視点で自らの音楽を表現している。 2012年にリリースした「abnormalize」は、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」OPとしても話題を呼んだ。 ソロプロジェクトである「TK from 凛として時雨」···