山崎朋子が手がける卒業ソング
中学校の卒業ソングとしても知られる、混声三部合唱の名曲『大切なもの』。卒業式や合唱コンクールなど、思い出深いイベントでクラスの仲間と歌った人もいるかもしれません。
作詞作曲を手がけたのは、中学校教諭で作曲家の山崎朋子。
『絆』や『手のひらをかざして』など、卒業シーズンによく歌われる楽曲で有名な作曲家です。
ゆるやかなメロディーと、優しく温かな日本語で紡がれる合唱曲『大切なもの』。
果たしてその歌詞には、どのようなメッセージが込められているのでしょうか。
日常にひそむ「大切なもの」
まずは1番の歌詞から見ていきましょう。
----------------
空に光る星を
君と数えた夜
あの日も今日のような
風が吹いていた
あれからいくつもの
季節越えて
時を過ごし
それでもあの想いを
ずっと忘れることはない
≪大切なもの 歌詞より抜粋≫
----------------
『大切なもの』に登場するのは「僕」と「君」です。
冒頭の歌詞は「空に光る星を 君と数えた夜」。
天体観測や修学旅行の思い出でしょうか。
かつての美しくノスタルジックな情景を、「風」が「僕」に思い出させたようですね。
また「あれからいくつもの季節越えて」という歌詞から、語り手「僕」の視点が、思い出の夜から多くの時間が過ぎた後だとわかります。
そして、それほどの時間をおいてなお「あの想いを ずっと忘れることはない」とのこと。
「想い」には、愛情や恋心、誰かを大切にする気持ちといった意味があります。
恋人なのか親友なのか、はたまた部活の仲間なのか。
「君」と「僕」の関係については、はっきりとは示されていないようです。
ただ「君」は「僕」にとって、不意に思い出すほど大きな存在だったのでしょう。
今この記事を読んでいるあなたにも、そんな大切な誰かがいるのではないでしょうか。
「ずっと忘れることはない」だろうその人への気持ちを思い起こしつつ、サビの歌詞に入っていきましょう。
----------------
大切なものに
気づかない僕がいた
今胸の中にある
暖かいこの気持ち
≪大切なもの 歌詞より抜粋≫
----------------
「大切なものに気づかない僕がいた」というフレーズは、当時の自分が「君」の存在の大きさや「君」と一緒にいれることの大切さをわかっていなかったという意味に解釈できそうです。
そんな当たり前の日常にひそむ尊さこそが、この曲のメインテーマ「大切なもの」なのかもしれませんね。
また「今胸の中にある暖かいこの気持ち」という歌詞から、今の「僕」は尊い日常をしっかり噛みしめて生きているようです。
「君」と離れ離れになった経験が、きっと「僕」を成長させたのでしょう。
道が分かれていたからこそ気づけた「大切なもの」。
おそらく誰しも、思い当たる何かがあるのではないでしょうか。
大切な人がそばにいること
続いて2番以降の歌詞を見ていきます。
----------------
くじけそうな時は
涙をこらえて
あの日歌っていた
歌を思い出す
がんばれ
負けないで
そんな声が
聴こえてくる
本当に強い気持ち
優しさを教えてくれた
≪大切なもの 歌詞より抜粋≫
----------------
どうやら「僕」は、かつて歌っていた歌を思い出すことで、苦しい場面を乗り越えてきたようですね。
聴こえてくる「がんばれ」や「負けないで」は、昔かけられた「君」からの声援でしょうか。
続く歌詞「本当に強い気持ち 優しさ」というのは、大変な状況を耐え抜く強い精神、苦しそうな人に声をかける優しさなど、大切な「君」から学んだ生き方のことだと考えられます。
そんな「君」に対して、今「僕」が伝えたいこと。
次のサビの歌詞には、それが綴られているようです。
----------------
いつか会えたなら
ありがとうって言いたい
遠く離れてる君に
頑張る僕がいると
≪大切なもの 歌詞より抜粋≫
----------------
一番に伝えたいのは「ありがとう」の一言。
なかなか会えない「君」に対して「今の自分があるのは君のおかげなんだ」と感謝の気持ちを示したいのでしょう。
一緒にいたあの日から時を経て、強く優しく成長した「僕」。
そんな「僕」だからこそ気づけた「大切なもの」。
最後のサビでは、それがより明確に述べられています。
----------------
大切なものに
気づかない僕がいた
一人きりじゃないこと
君が教えてくれた
大切なものを…
≪大切なもの 歌詞より抜粋≫
----------------
「君」が教えてくれたのは、「一人きりじゃない」ということ。
どんなにくじけそうなときも、星を数えた夜と同じように「君」がそばにいてくれました。
そして「君がいる」という当たり前がいかに尊いものなのか、今の「僕」にはしっかり自覚できています。
大切な人が当たり前のようにそばにいるという日常こそ、この歌が伝えたい「大切なもの」なのかもしれませんね。
ときには「大切なもの」を思い出そう
今回は、合唱曲『大切なもの』の歌詞の意味を考察しました。単調に生きていると忘れがちな「当たり前の尊さ」を思い出させてくれる歌詞だったのではないでしょうか。
また、「僕」と「君」について多くを語らず、歌う人や聴く人がそれぞれの人生を投影できるような歌詞表現も魅力的でした。
ときには大事な人のことを想いながら、強く優しい合唱曲を聴き、心をリセットするのもいいですね。