浜田省吾の代表的名曲は片想いの歌
浜田省吾の『もうひとつの土曜日』は、1985年5月22日リリースの18thシングル『LONELY-愛という約束事』のB面カップリング曲として収録された楽曲。
多くのファンに愛され続ける浜田省吾の代表的なバラードで、これまで様々なアーティストにカバーされてきた不朽の名曲です。
なぜこれほどまでに聴く人の心を打つのか、歌詞の意味を考察しながら『もうひとつの土曜日』の魅力に触れていきましょう。
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昨夜眠れずに
泣いて いたんだろう
彼からの電話
待ち続けて
テーブルの向こうで
君は笑うけど
瞳ふちどる
悲しみの影
≪もうひとつの土曜日 歌詞より抜粋≫
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この部分の歌詞から主人公の男性はある女性と会っていることが読み取れます。
彼女が「昨夜眠れずに泣いていた」ことを目元の様子から即座に察する主人公。
その原因が「彼からの電話」を待ち続けていたせいであることも分かっています。
これらの点から女性には愛する男性がいること、その相手が彼女をないがしろにしていること、主人公はそうした状況を詳しく知り得るほど彼女と親しい仲であることが分かるでしょう。
この楽曲は不倫の曲と考えられることがありますが、「テーブルの向こうで君は笑う」という表現が彼女と同じ部屋にはいても一定の距離から踏み込めない主人公のもどかしさを表しているようで、2人が不倫関係にあるようには思えません。
むしろ彼女を愛するがゆえに自分の気持ちを隠している男性の純粋で不器用な片想いの曲のように感じられます。
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息がつまる程
人波に押されて
夕暮れ電車で
アパートへ帰る
ただ週末の僅かな
彼との時を
つなぎ合わせて
君は生きてる
≪もうひとつの土曜日 歌詞より抜粋≫
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彼女が愛している人は決して良い男とは言えませんが、忙しなく窮屈な日々の暮らしに追われる彼女の拠り所であることも確かです。
会えるのは「週末」のわずかな時間だけであるものの、そのささやかな時の中で感じる幸福感をつなぎ合わせるように大切に心に抱きながら日々の糧としているのでしょう。
その人の存在だけが生きがいになっていることが「君は生きてる」という短いフレーズからありありと伝わってきます。
君を愛する人に気づいて
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もう彼のことは
忘れてしまえよ
まだ君は若く
その頬の涙
乾かせる誰かが
この町のどこかで
君のことを
待ち続けてる
woo 振り向いて oh…
woo… 探して 探して
≪もうひとつの土曜日 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞で主人公は彼女に直接言えない本音を明かします。
ほかの男を想って泣いていることに気づいても彼女の想いを否定しなかった優しい彼は、心の中では「もう彼のことは忘れてしまえよ」と叫んでいるのです。
「まだ君は若く」1人の男のために人生をすり減らす必要なんてない。
君を泣かせることなく、むしろ笑顔にしてくれるような男性が「この街のどこかで君のことを待ち続けてる」から探してと語りかけています。
その言葉の中で「振り向いて」と告げているところに、一番身近にいる自分の愛に気づいてほしいという気持ちが表れているように感じます。
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君を想う時
喜びと悲しみ
ふたつの想いに
揺れ動いている
君を裁こうとする
その心が
時におれを
傷つけてしまう
≪もうひとつの土曜日 歌詞より抜粋≫
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主人公は彼女に対して「喜びと悲しみ」の感情の両方を持っているようです。
友人として愛する彼女の一番近くにいられる喜びと、友人以上にはなれない悲しみのことを指していると解釈できるでしょう。
「君を裁こうとするその心」のフレーズは、彼女の恋が幸せに繋がるものではないと決めつけていることを言い表しているのかもしれません。
それは彼女の幸せを願っているようでいて、本心では自分の想いを叶えたいだけなのではないかと葛藤している様子が見えてきます。
明るい面ばかりではないリアルな恋愛感情に共感するのではないでしょうか。
「もうひとつの土曜日」が示す意味とは
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今夜町に出よう
友達に借りた
オンボロ車で
海まで走ろう
この週末の夜は
おれにくれないか
たとえ最初で
最後の夜でも
woo 真直ぐに oh…
woo… 見つめて 見つめて
≪もうひとつの土曜日 歌詞より抜粋≫
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2番のサビは1番冒頭のシーンの続きのように思えます。
相手からの電話がなく週末の予定がなくなってしまった彼女に対し、主人公は「今夜町に出よう」と誘います。
「友達に借りたオンボロ車で海まで走ろう」という提案はかっこいいものとは言えませんが、彼女の友人の立場で満足していた彼が遂に一歩踏み出して行動に出た瞬間であることが感じ取れるでしょう。
「たとえ最初で最後の夜」になるとしても、逃げずに自分の想いを伝えようとする主人公の覚悟が表れていますね。
そして、自分が彼女を真っ直ぐに見つめているのと同じように、この時だけは彼女にも自分だけを見つめてほしいという気持ちも垣間見えます。
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子供の頃君が
夢見ていたもの
叶えることなど
出来ないかも しれない
ただ いつも傍にいて
手をかして あげよう
受け取って欲しい
この指輪を
受け取って欲しい
この心を
≪もうひとつの土曜日 歌詞より抜粋≫
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どんな恋愛がしたいか、どんな家族を作りたいかなど「子供の頃 君が夢見てたもの」を主人公は知っています。
おそらく2人は子供の頃から一緒にいる幼馴染みなのでしょう。
彼女の願いは知っているけれど自分には「叶えることなど出来ないかもしれない」とこぼしながらも、「ただいつも傍にいて手をかしてあげよう」と決意していることを伝えています。
最後の二文は明らかにプロポーズの言葉です。
これまでは言いたくても彼女を想って言わないようにしていた自分の想いを指輪に乗せて、どれほど真剣に彼女を愛しているのかを示そうとしているのです。
この楽曲には叶わぬ恋の相手を想って過ごすいつもの孤独な土曜日とは違う「もうひとつの土曜日」を自分と過ごそうという誠実なメッセージが込められています。
一心に彼女を愛する主人公の想いを目の当たりにした時、彼女はどんな反応を見せるのでしょうか?
結末は明かされていませんが、主人公と彼女のどちらにとっても幸せな結末になってほしいですね。
色褪せない愛のバラードが心に沁みる
『もうひとつの土曜日』には時代を経ても変わることがない片想いの切なさや愛の温かさが描かれていました。誰にとっても身近なテーマを丁寧に表現しているため、聴く人それぞれが自分自身と重ねて共感できるところが人気の大きな理由と言えるでしょう。
ぜひ歌詞に描かれているシーンを想像しながら、浜田省吾の珠玉のラブバラードに耳を傾けてください。