作ってる途中で“これはいいぞ!”と確信したアルバム『CHECKMATE』
──待望のセカンドフルアルバム発売ということで、まずはこのアルバム『CHECKMATE』がどういうアルバムになったか説明していただけますか?手越:そうですね、簡単に言うと今回のアルバムはフルアルバムとしては2枚目、ミニアルバムの「Music Connect」をいれたら3枚目という位置付けのアルバムになります。
そして自分の中では…もちろん毎回、その時々で今出せる最高のものを作ってるっていう自信はあります。けど、その中でも特に、今回はさらにも増して自信作だと言えるものになりました。
──おおー! それは『CHECKMATE』というタイトルにも表れている気がします。
手越:タイトル決めた時にはまだアルバムは完成してなかったんですけどね(笑)。
──あ、そうなんですね(笑)。でもタイトル決めの時点で、すでに『CHECKMATE』な感じはありましたか?
手越:ありましたね~。タイトルって早めに決めないといけないじゃないですか、ジャケットとかも作っていかないといけないんでね。とはいえある程度レコーディングが進んで自分で歌ってからじゃないとイメージも湧かないんですよ。
で、半分くらいレコーディングが終わってから曲を聴きまくってバランスをみながらどんどんどんどん練り上げていく…その途中くらいの段階で、すでに「これはいいぞ!」って自分的に確信した瞬間があって。
その時に、「これは、CHECKMATEだな」と。そこでタイトルを決めました。
──それだけ手応えがあったんですね。ちなみに今回収録されている楽曲はどのようにして決めたんですか?
手越:僕は、アルバムの中で似ている曲が揃っているより、1曲ずつのキャラクターが立ったアルバムの方が好きで。今まで自分が作ってきたものもそうだし、他の方のを聴いてもそう思うので、1曲1曲ある意味完全には溶け込まないような、そんな曲作りをしていきたいなっていうのがありました。なのでコンセプトも含めてこんな楽曲が欲しいな、こんな歌詞がいいなっていうのをまずは作家の方々に細かくリクエストさせてもらいました。
さらに、今回は4月5日リリースなので、7曲目の『この手とその手』みたいな卒業の曲は絶対に欲しい、と。僕自身、福島にサプライズで卒業式に行ったりとかもしているので、そういう時に歌いたいというのもあって絶対卒業ソングは欲しかったんですよね。
あとは6曲目の『Peaceful for you』。世界平和を歌ったスケールの大きいピースフルな曲は欲しいなと思ってました。肌の色とか国境とか関係なく、「みんなで助け合おうよ」っていう曲が。
あとはボカロ曲入れたいとかもありましたね。で、そういうリクエストをして集まった楽曲を、何度も何度も聴いて、今回入ってない曲も含めてもう何十曲って聴いて精査していって、いいなと思った曲に歌詞を付けてもらって、それをまたさらに聴いて聴いて生き残ったのがこのアルバムの曲たちっていう感じです。
──まさに精鋭たちって感じですね。決め手になったというか、選ぶにあたってこだわったのはどういうことですか?
手越:そうですね、けっこう応援歌でもいろんな角度があるし、ラブソングでもいろんなラブソングがあるじゃないですか。今回はそんな中でわりと一個一個のメッセージのエッジが効いた強い曲を集めたっていうのと、今までなかった曲…例えばライブのセットリストを組んだ時にこういう曲があったらいいな、みたいなのも盛り込ませてもらいました。
──音づくりにもかなりこだわって作られたそうですね。
手越:こだわりましたねー。オケの細かいところまで要求して、ここにこんな楽器が欲しいとか、もっとこういうイメージに変えて欲しいとか和テイストにして欲しいとか。そうやって曲が決まってからも細かく詰めていってレコーディングしてって感じでした。
──そうやって作ってきたアルバムがもうほぼ完成というところまで来ていますが(取材時点)、いかがですか?
手越:いやー、良いです! 今の段階では、アルバムの完成度はまだ8割ぐらいなんですよ。この後もまだコーラス録りしたり最終的に調整したりするので。でも今の時点でもう早く聴いてほしいですね! もう十分いいアルバムです。
でも、ここからさらにクオリティを上げて世に放つって感じです。
──このアルバムはご自身でもおっしゃっていたように、それぞれに強い個性のある曲が集まっている印象です。でも通して聴くと1枚のアルバムとしてしっかりまとまっていますよね。
手越:やっぱりアルバム全体を聴いた時のバランスとかはかなり意識しました。曲順は全部自分で決めてるんですけど、何回も変えて調整してっていうやり方ではなくて。ホント直感なんでバババッって30分くらいで決めちゃう。そこで大事にしているのは曲終わりから次の曲の頭がかかるまでの繋がり。ここは絶対意識します。
やっぱりこのアルバムを手にした時、最初はシャッフルじゃなくて絶対1曲目から聴いていくと思うんですよね。…ってなった時に、ある意味ライブのセットリストと一緒で、その1枚のアルバムの中での楽曲の流れが心地よくなるように、そこは大事にしますね。それは歌詞の意味もそうだし、曲調もそうだし。
──先ほど歌詞のコンセプトも手越さんが細かくリクエストされたっておっしゃってましたもんね。
手越:あ、でも歌詞はイメージを細かく伝えている曲と伝えずに作ってもらった曲があります。作詞するときって架空の人を描く人もいれば、自分の実体験な人、誰かの人生を描く人もいて、それぞれじゃないですか。細かくイメージを伝えずに作ってもらった曲で最近すごく多いのが、「手越祐也をイメージして書いた」っていう曲なんですよ。それはソロになってからより増えてきたんですけど、今回もそうで。
例えば1曲目の『OVER YOU』もマイキが僕をイメージして書いたし、2曲目の『Just Right』とか、8曲目の『MAKE ME ALIVE』、9曲目の『Comfort Zone』もそうですね。
僕、歌入れする前に、作詞者さんはどういう気持ちでこの詞を書いたのかっていう想いを必ず聞くんですよ。そしたら「手越さんをイメージして書きました」って方がけっこう多いんです。「手越さんが今チャレンジしてたり、いろいろ逆風が吹いても前を向いてチャレンジし続けて夢を叶えていく様子を書きました」っていう方が多い。
さっき言った4曲も、そういう歌詞なんですよね。社会に向けた、「そのままでいいの?」ってメッセージだったり、「もっと裸でいこうぜ、ありのままでいこうぜ」みたいな、僕が言いそうなメッセージが詰まってます。
──確かに、手越さんらしい「負けねえぜ」感にあふれてますよね。
手越:僕が常にそう思ってますからね(笑)。常にチャレンジ精神だし。
もちろん楽しいことも最高なこともポジティブなことも思う反面、人間なんでマイナスなことを思うこともあるじゃないですか。こんちくしょう精神というか。そんなゾンビどもに負けねーからなみたいな(笑)。チャレンジしてるヤツを笑ってるヤツに、いつかギャフンと言わせてやるからな。みたいなの、やっぱ男としてあるんで。そういうところが歌詞にも表れてますね。
天才で変態な1曲、『ドラキュラ』。
──ちなみにすごく難しいかとは思うのですが、このアルバムの中で手越さん的「この1曲のこの歌詞!」というのを挙げていただきたいのですが。好きな部分でも思い入れのある部分でも。手越:んー、今回けっこう歌詞が強い曲が多いので難しいですけど、最初に見たときに天才だし変態だなと思ったのは『ドラキュラ』。
──え、変態?(笑)
手越:ド変態ですよ! この歌詞を書いてくれた小林未奈さんって僕のデビュー曲の『シナモン』を書いてくれてたり、『Music Connect』に入ってる『サイダー』っていう曲も書いてくれてるんですけど、どっちもすごく可愛い恋愛の歌詞なんです。純粋なピュアな曲。
それがこのドラキュラの歌詞書けるってね、この歌詞って男目線の歌詞じゃないですか。それを可愛らしい女の子が書けるって…いや、すごい才能だと思いました。
俺、「全てを捧げて私の一部になりなさい」なんて書けないもん。自分で作詞するときも、わりとリアルな恋愛とか応援歌とかは書けるんですけど、こういう完全に作り込んだ曲ってまだ書いたことがなくて。俺の頭の中にないんですよね。
あ、エロい曲とかはありますよ。ワンナイトの夜の曲とかを書いたこととかはありますけど、こういうドラキュラになりきってその世界観を表現する、なんてことが今のところないので。いやー<全てを捧げて私の一部になりなさい 君の blood 飲みながら>ってやばいっすよね(笑)。
──すごい気に入ってるじゃないですか(笑)。
手越:気に入ってるっていうか気になっちゃうっていうか。サビの1番が<美しい髪が乱れていくのを待ってる>で、2番が<濡らした吐息も溢れないように頂こう>で、3番が<全てを捧げて私の一部になりなさい>ってS度具合が進化しちゃってるんですよ。ここ最初に見た時に「最高だな、変態だなー」っていう衝撃が走りましたね(笑)。
でも、アーティストにとって「変態」って、人と違うってことなので良い方に働きますからね。我々のような特殊な仕事をしてる人間にとっては褒め言葉です!
──確かに。そしてそのド変態の曲を手越さんが歌って表現するんですもんね。この曲を手越さんがライブで表現するのがすごく楽しみになってきました。
手越:今回のアルバムを聴いてくれた時に、これってどうやってライブでやるんだろう?って、たぶんすごい楽しみになる楽曲ではありますよね。僕もどう表現しようかなと思ってます。
──先程、曲選びの際にライブのセットリストに加えられる曲っていう観点でも選んだっておっしゃってましたけど、曲作りの段階でやっぱりライブでのパフォーマンスはかなり意識されますか?
手越:しますね。仮歌とか聞いた段階からなんとなく、こういう振りで踊りたいなとか、こういう音が欲しいなぁとか、こういう風なギミックを入れたいなとか。けっこうそういうのは感覚で出てくるので、色々想像しながらレコーディングしますね。
いま、8割くらいできてるって言ったんですけど、この後ももっとエッジを出した音にしたいなってのもあるし、例えばひずませるギターにしたり、和楽器入れたりとか。そういうのはライブでやることも含めてバランスを考えますね。
実は『この⼿とその⼿』のコーラスも中学生とか高校生、大学生に歌ってほしくて、このあと音大の学生の子たちのコーラスを録りにいきます。
──そうなんですね!? 合唱みたいな感じですか?
手越:そうですそうです。僕、今までハモりもコーラスも全部自分でやってるので、他の人の声が入るって今までないんですよ。でもこれは、『仰げば尊し』じゃないけど卒業式でみんなで歌ってるイメージが湧いて、実際卒業する子たちに歌ってもらいたいなと思って。だから僕的にも今までなかったチャレンジなので、すごく楽しみですね。
4月から始まるライブツアーはこれまでのツアーの“いいとこ取り”になる!?
──ここで少しだけ今後の活動についてお伺いしたいと思います。まずは4月からのツアーについて教えてください。手越:はい。ソロになって3本目のツアーが4月12日から始まります。どうしようかなって思ってます。ライブの設計はこれからなんで。
舞台や装置を派手にもできるし、この前の『Music Connect』ツアーみたいに踊り倒すでもいいですし、演出しすぎると音楽の邪魔になると僕は思っているのでそこはすごく考えますね。やっぱ散るじゃないですか、例えばスクリーンに僕の姿が映し出されたら、こっちを見たいけどこっちも見たいみたいになるし。プラス、こっちを見てあっちも見てってことは、その間の楽器の音って聞こえなくなるじゃないですか。というのがあるので、昔からライブを作るときにはすごく注意しています。
やっぱり音に集中してほしい時は余計なものを使わないべきだし、逆に演出スゲーって見せるのもアリだし。僕自身が踊って歌ってっていうのもイケるし、踊りなしのライブもやってるので、今回はどういう風に見せたいかなっていうところから考えて。
前々回のツアーの『NEW FRONTIER』と前回の『Music Connect』がけっこう対比のツアーになったので、それのいいとこ取りができればいいかなと思ってます。
去年もふたつツアーをまわって、今年もいろんな楽しいものがこの先も待っているのでそこともかぶらない内容にもしなきゃいけないから、いいバランスを取れたらなって思ってます。
──その今後の活動について、言える範囲で教えてください!
手越:それはもうずっと昔からやりたいなって言ってたようなことを、音楽活動もしかりですけどそれ以外でもやりたいなって言ってたことが、何個か叶いますね。
なんで、それも踏まえた今回のライブ作りをしなきゃいけないんです。ってそれ以上は今はまだ言えないですね(笑)。
──ありがとうございます(笑)。では最後に読者の方にメッセージをお願いします!
手越:はい。今回のアルバムも、今までずっと僕のことを応援してくれた人、『シナモン』からの楽曲を知ってくれている人も、たぶんすごいアルバムだなって思ってもらえると思います。
こうやって一人になっていろんなアーティストと対バンしたり、今まで出てなかったようなフェスで初めて「イッテQ」の手越ではなくアーティスト、歌を歌っている手越っていうのを見てくれた人もこの2年間でたくさんいて。
自分がステージに立ってても今まで見たことがない客層の方々も来てくださっていてすごくありがたいと思ってますし、そういう人たちにとっても心に刺さるアルバムになっていると思います。
そして今回初めて手越のアルバムを聴くよ、ライブも行くよって人も間違いなく満足してもらえるような心揺さぶられるようなアルバム、その先のライブも絶対満足してもらえる自信があります。
今まで応援してくれた人は引き続き、この僕の新しいアルバムでのキャラクターの違いっていうのを楽しんでほしいですし、期待しつつ待っていていただきたいなと思います。
TEXT 川畑貴美代(マイリブズ)
PHOTO Kei Sakuhara
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