日本が誇る富山民謡「こきりこ節」とは
富山県の五箇山地方や上梨地方に伝わる日本最古の民謡『こきりこ節』。
田植えや稲刈りの間に行われた日本の伝統芸能である田楽や田踊りとして発展し、『越中おわら節』と『麦屋節』に並んで富山県の三大民謡として親しまれてきました。
1953年に無形文化財に選定、さらに1973年に“五箇山の歌と踊り”の一曲として国の選択無形民族文化財に選択されており、県のみならず日本を代表する民謡のひとつに数えられています。
古い民謡ということもあり、使われている言葉の意味が少し難しく感じてしまう人も少なくないでしょう。
言葉の意味に触れながら、歌詞全体の内容を考察していきたいと思います。
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こきりこの竹は 七寸五分じゃ
長いは袖のかなかいじゃ
≪こきりこ節 歌詞より抜粋≫
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タイトルにも含まれている「こきりこ」とは、2本の細竹を使った打楽器の名称です。
漢字では竹を意味する「筑」を用いて「筑子」と書きます。
大化の改新で豊作祈願のために山伏が詠んだ「コケラ経」が訛って「こきりこ」となったという説があると言われています。
こきりこに使われる竹の長さは、歌詞の通り「七寸五分(約23㎝)」。
「かなかい」は「邪魔」という意味で、竹が七寸五分以上あると狩衣の袖に引っかかって邪魔になってしまうため、この長さで決まっているということを示しています。
狩衣の衣装を身にまとい、こきりこを打ち鳴らしながら唄い踊る姿が目に浮かびます。
「デデレコデン」「サンサ」…何を意味している?
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まどのサンサもデデレコデン
はれのサンサもデデレコデン
≪こきりこ節 歌詞より抜粋≫
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曲の中で特に印象的なのが、この一節です。
まず「デデレコデン」は地方の太鼓の擬音語と言われています。
では「まどのサンサ」や「はれのサンサ」にはどのような意味があるのでしょうか?
意味のない囃子言葉というのが通説ですが、日本語と響きが近く異なる意味を持つ言葉が多数あるイスラエルの公用語・ヘブライ語と紐づけて考えると、筋の通る内容が見えてきます。
たとえば「まど」は、ヘブライ語の「モエッド」を言い換えたものだとしたら「祭り」を意味すると読み取れます。
また「サンサ」は「喜び」を意味する「サッサ(sas)」と似ています。
「はれ」がハレルヤの語源である「ハレ(halel)」のことだとすれば、「賛美」を表していると言えるでしょう。
さらに接続詞のような「の」も、願いを込めて「祈る」ことを示す「ナ(na)」から取られていると解釈できるかもしれません。
そうであればこの歌詞は「祭りの時を喜べ」「神を褒め讃えて喜べ」と歌っていることになり、田楽にぴったりの豊作に歓喜する叫びとして理解することができます。
そしてその合間には、想いを湧き立たせる「デデレコデン」という太鼓の音が力強く聴こえてくるかのようです。
実際にヘブライ語から歌詞が作られたかどうかは定かではありませんが、このように考えると当時の人々の気持ちが伝わってくるのではないでしょうか。
自然と共に生きる人々
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向かいの山に啼くひよどりは
啼いては下り 啼いては上り
≪こきりこ節 歌詞より抜粋≫
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「ひよどり」は日陰で鳴く習性がある鳥です。
太陽が移動することで山の影の位置が変化するため「啼いては下り 啼いては上り」を繰り返します。
それでひよどりの鳴き声を聞いた人たちは、その鳴き声がする位置によって時刻を知ることができたそうです。
ひよどりの鳴き声を頼りに、一日の仕事を進める当時の人の様子が垣間見えます。
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向かいの山に光るもんは なんじゃ
お星か螢か 黄金の虫か
≪こきりこ節 歌詞より抜粋≫
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これは日が暮れてきた山にふと何かが光るのを見つけ、あれは何かと話している場面のようです。
空の星が光ったのか、はたまた蛍や黄金虫などの虫の姿だったのか。
人が自然と共に生きる穏やかで温かな風景が想像できます。
後世に残したい日本の文化に触れよう
長い歴史を持つ日本民謡『こきりこ節』の歌詞から、日本の原風景を感じることができました。メロディもシンプルなので、どの地域の方でもなじみやすく歌いやすい曲です。
日本の大切な文化として、いつまでも受け継いでいきたい楽曲ですね。