「わたしのお嫁くん」ってどんなドラマ?
SEKAI NO OWARIの新曲『サラバ』は、フジテレビ水曜ドラマ『わたしのお嫁くん』の主題歌に決定した楽曲です。
歌詞を考察するにあたり、まずはドラマのあらすじをご紹介します。
『わたしのお嫁くん』とは、柴なつみさん作の同名コミックを原作とするドラマで、主人公は、波瑠が演じる速見穂香です。
速見は大手家電メーカーの営業部に勤めるOLで、5期連続で営業成績ナンバー1を獲得し、同僚たちにとって憧れの存在。
気配りのできる女性としてみんなの理想のお嫁さん的存在でもありますが、それは営業のためであり、プライベートでは汚部屋で暮らす“働くズボラ女子”…。
会社の後輩で“家事力最強男子”の山本知博に、主人公のズボラな一面を知られてしまうことから話が展開していきます。
“働くズボラ女子”が“家事力最強男子”を嫁に迎え、共同生活を送る、社会派ラブコメディーです。
「サラバ」の歌詞が描く焦燥感
ドラマのストーリーを踏まえて、『サラバ』の歌詞を考察していきます。
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失ったものばかり値がついた
いつだって時の中で変わった
何でだってこんな! Ahよってたかってそんな!
でも何度だって悩まされるもんで
≪サラバ 歌詞より抜粋≫
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冒頭の「失ったものばかり値がついた」という歌詞は、「失ったもの」に何を当てはめるかで解釈が変わってくるでしょう。
別れた恋人、退職した仕事、浪費した時間やお金など、さまざまな人や事柄が当てはまりそうです。
続きの「いつだって時の中で変わった」という歌詞は、時が経つにつれて、自分の価値観が変わっていったことを表しているのではないでしょうか。
「今は恋愛じゃない」と思って仕事に専念してきたものの、歳を重ねるにつれて、「もっと恋愛に時間をかけた方が良かったのかもしれない」と思えてきたり。
「今を楽しむことが一番大事だ」と考えてお金を自由に使ってきたけど、「貯金しておいた方が良かった」と思えてきたり。
「何でだってこんな! Ahよってたかってそんな!」という歌詞の「よってたかって」という表現も気になりますね。
時の中で価値観が変わっていくのは、周りの人間からよってたかって様々な言葉をかけられるからなのかもしれません。
ドラマ『わたしのお嫁くん』では、そろそろ結婚してほしいという思いを両親に伝えられたり、理想のお嫁さんとして家事や気配りができることを求められたりして、苦しげな表情を浮かべる主人公が描かれます。
周りの人々や社会からの見えない圧力を受け、自分の生き方が正しいのかを自問自答し、板挟みになって焦る気持ちが表現されている歌詞だと考察できそうです。
「君」との出会いが解放したものとは
続きの歌詞を見ていきましょう。
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怪物だとか 夜の魔人とか そんなの出てこないのに
戦ってる
間に合わなくなって 全速力で駆けて
ため息ついてたけど
≪サラバ 歌詞より抜粋≫
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「怪物だとか 夜の魔人とか そんなの出てこないのに戦ってる」という歌詞は、目に見えない敵と戦っている状況を表現しているのだと解釈できそうです。
周りから見れば幸せそうに見えても、人はそれぞれの内面で周りの人々や社会からの見えない圧力と戦っているのかもしれませんね。
ドラマ『わたしのお嫁くん』の主人公もまた、同僚たちに営業成績ナンバー1で気配り上手な最強のOLと思われている一方で、実は様々な圧力と戦っていました。
「間に合わなくなって」という歌詞も、自分の人生を歩んできただけなのに、気が付けば周りの人々や社会からの要請に応えられなくなっている、という苦しみを表現していると解釈できそうです。
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サラバ 普通が苦痛だった日々
手を振ってみれば ほら今はもう
私の隣には君がいて
失敗しながら一緒に歩いてる
≪サラバ 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞は、そんなため息をついてしまうような日々に「サラバ」と別れを告げています。
「普通が苦痛だった日々」という歌詞は、“普通で退屈な日々”という意味でも解釈できますが、“普通を求められて苦痛だった日々”という意味で捉えることもできるでしょう。
「君」と出会ったことによって、歌詞の主人公は“普通”という苦痛から解放されたようです。
ドラマ『わたしのお嫁くん』でも、山本知博をお嫁に迎えた共同生活は、主人公がこれまで過ごしてきた普通の日々とは異なるものです。
また、理想のお嫁さんだと言われ続けてきた主人公が、お嫁さんになるのではなく、“お嫁くん”を迎えるという構造も、周りの人々や社会からの圧力からの解放に繋がっているでしょう。
完璧なOLを演じてきた主人公を思い浮かべると、「私の隣には君がいて 失敗しながら一緒に歩いてる」という歌詞があたたかく胸に響きます。
「遠回り」に込められたメッセージ
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サラバ 変わりゆく街並みを抜け
歩いてこう 遠回りで帰ろう
散らばった星と腑抜けたビール
いつだって変わった常識のルール
≪サラバ 歌詞より抜粋≫
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「変わりゆく街並み」と「変わった常識のルール」という歌詞が出てきます。
『サラバ』の歌詞では、周りの人々や社会からの圧力に苦しむ心境が描かれていると解釈してきました。
しかし、街並みが変わっていくように、常識のルールも変化していくのだと考えれば、周りの人々や社会の価値観に合わせる必要はないのかもしれません。
現に、結婚して子どもを育てるのが普通の女性の人生だと捉えられてきた時代は過ぎ、男性が働いて女性が家事をするという役割分担も今は古い考え方となっています。
未来の価値観は、現在の価値観とはまた異なるものになっているでしょう。
「歩いてこう 遠回りで帰ろう」という歌詞は、“間に合わない”と焦っていた主人公が“遠回りで帰ろう”と思えるようになった、「君」との出会いのあたたかさを表現していると解釈できます。
一方で、周りの人々や社会の価値観に合わせる必要はなく、あなた自身のペースや価値観を大切にしていいのだというメッセージとしても受け取れそうです。
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両手いっぱいの花束みたいに
幸せだって受け取っていいと
恐れることは何もないんだと
ふと思っていた 君の隣で
≪サラバ 歌詞より抜粋≫
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周りの人々や社会の提示する幸せと、自分自身が幸せだと感じることが違ったとしても、恐れる必要はないのかもしれません。
自分自身が幸せだと感じることを両手いっぱいの花束みたいに受け取って、大切に抱きしめていきたいですね。
セカオワの新曲『サラバ』は、ドラマの主題歌である一方で、聴き手の人生を肯定して包み込んでくれる楽曲でもあると言えるでしょう。
2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。 同年1stアルバム「EARTH」をリリース後、2011年にメジャーデビュー。 圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーに浸透し、「セカオワ現象」とも···