『BUMP OF CHICKEN 18祭』テーマソングとして誕生した『窓の中から』
BUMP OF CHICKEN『窓の中から』は、2023年4月5日にリリースされた28枚目のシングル『SOUVENIR』に収録されている楽曲です。
『SOUVENIR』は2022年9月29日に配信シングルとしてリリース済みですが、改めてCD音源としてリリースされる際、新曲として加わったのが『窓の中から』。
3月31日にNHKで放送された『BUMP OF CHICKEN 18祭(フェス)』のテーマソングとして制作され、CDリリースに先駆けて4月1日に配信リリースされました。
『SOUVENIR』『クロノスタシス』共にアニメ主題歌、そして新曲の『窓の中から』という収録内容で、かなり豪華なシングルだといえます。
藤原基央が作詞作曲を手がけ、まるで自分の家の小さな小窓から世界を覗いているような、不思議な感覚に囚われる一曲。
独特の表現力が生み出す世界観は、BUMP OF CHICKENらしさそのものともいえるでしょう。
タイトルにもなっている『窓の中』が意味するものは何なのか、歌詞の意味にも注目しつつ徹底解説していきます。
自分のためだけに歌う孤独な歌
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ハロー ここにいるよ 生まれた時から ここまでずっと
同じ命を削り 火に焚べながら生きてきた
瞼の裏の 誰も知らない 銀河に浮かぶ
すごく小さな窓の中から 世界を見て生きてきた ここにいるよ
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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人は、自分だけの世界を持っています。
人と関わり、共有できる世界とは別の、自分一人だけの世界。
命の灯火を絶やさないよう、必死に火をくべる冒頭の歌詞には、どこか孤独さも漂っています。
瞼の内側に広がる世界は、誰とも分かち合えない自分一人の世界。
「ここにいるよ」という歌詞は、自分という存在を精一杯、世界に訴えているようです。
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カーテンの内側限定のため息 愛読書みたいに並んでしまった独り言
痛くない事にした傷に 時々手を当てながら 一人で歌うよ
この体だけの鼓動を この胸だけの感情を
音符のひとつ 言葉のひとつに変えて 繋げて見つける はじめの唄
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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自分一人の世界だけでしか吐き出せないため息は、誰にも言えない息苦しさを感じさせます。
部屋に響くのは自分のため息。
並ぶのは愛読書ではなく独り言。
誰にも吐き出せない言葉と、抱えた傷の痛み。
誰もいない部屋で一人歌う歌は、心のよりどころでありながら、もの悲しさも感じさせます。
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この体だけの鼓動を この胸だけの感情を
音符のひとつ 言葉のひとつに変えて 繋げて見つける はじめの唄
止まるまで続く鼓動を 名付けようのない感情を
心が望むとおりの声に乗せたら ようやく気付けたよ 同時に 響く声
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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生きている証である鼓動や、溢れ出す感情。
それは時に、自分自身でもコントロールできないものです。
頭ではなく、心のままに綴ったものが声になり、歌になる。
そう考えると、誰しも歌を生み出すことはできるのかもしれません。
自分の心から目を逸らさず、まっすぐに受け入れることの大切さが伝わってくる歌詞です。
たった一人の味方が与える生きる力
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ああ ここにいるよ 少し似た色の 知らない光
同じように生きる灯に 手を振っても 分からないかな
ハロー 遠い隣人 あまりに巨大な 銀河で出会う
こんな小さな窓の中にも 届いたあなたの灯 ここにいるよ
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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一人きりだと思っていたら、思いも寄らぬ仲間を見つけた時の心強さはどれほどでしょうか。
自分と似た人を見つけると、分かり合える気がして嬉しくなります。
相手も同じように、孤独に耐え、誰にも見えない痛みを抱えて生きているなら、語り合いたい、手を取り合いたいもの。
思いを分かち合えるかもしれない他人というのは、孤独の中で生きる人にとって貴重な存在です。
ほんの小さな灯りでも、自分と似た誰かの存在をキャッチする。
それは、人と人が出会う奇跡そのものではないでしょうか。
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昨日と明日に毎日挟まれて 次から次の今日 強制で自動更新される
痛くない事にした傷が 見失わない現在地 ここから歌うよ
綺麗事のような希望を いつもそばにいた絶望を
他の誰とも分かち合えない全てで 喉を震わせろ 自分の唄
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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当たり前に過ぎて行く日々の中で忙殺されながらも、胸に抱えた痛みだけは忘れないように。
自分の本音から目を背けないために、心の声が痛みとなって現れているのかもしれません。
明るく輝く希望は、生きていく上で欠かせないもの。
希望を見出せないまま生き続けることは非常に苦しいことです。
しかし、実際に身近にいるのは絶望。
理想とする世界に近付けないまま、絶望を抱えて生きていく。
きっと、心の声に蓋をしても、胸の痛みは大きくなるばかりでしょう。
もがいたところで簡単に覆ることのない現実を前に、傷だらけになりながら生きていく。
その苦しみは、誰も分かってくれません。
誰にも理解されず、誰にも助けてもらえない中で吐き出された歌は、どんなに不格好でも、魂の歌。
今この瞬間を生きている証そのものです。
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グーの奥にしまった本当を 鏡からの悲鳴に応答を
同じように一人で歌う誰かと ほんの一瞬だけだろうと 今 重ねた声
この体だけの鼓動を この胸だけの感情を
音符のひとつ 言葉のひとつに変えて 繋げて見つける はじめの唄
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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本音を握り拳に隠しても、消えるわけではありません。
どれだけ取り繕っても、鏡に映った自分の姿に見え隠れする心の叫びから逃れることもできません。
それでも、ほんの一瞬でも心の叫びを誰かと分かち合えるなら、それは大きな救いになりえるでしょう。
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生み出してしまった希望を 頷いてくれた絶望を
他の誰とも分かち合えない全てで 宇宙を震わせろ 今
化けの皮の下の本当を さあ この声に応答を
同じように一人で叫ぶあなたと 確かに見つけた 自分の唄
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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絶望がすぐ隣にあるような人生の中で希望を見出すことは、無謀なことかもしれません。
すぐまた絶望の淵に立たされるかもしれない。
希望を見出してしまうことで、この先一層生きることが辛くなる可能性もあります。
それでも、一度気付いてしまった自分の本心を無視することは、もうできないのでしょう。
何より、心の叫びを抱えているのは自分一人ではないことに気付けたから、自分と向き合う勇気を持てたのです。
孤独な世界に閉じこもり、自分だけが世界から切り離されていると思っていたのに、そうではなかった。
本当は誰もが、誰にも癒えない悩みや痛みを抱えて生きているのです。
一人ではないことを知ることができれば、痛みを抱えても前を向いて生きていける。
大きな一歩ではないけれど、小さな気付きが大きな力になる瞬間です。
『窓の中』に描かれる「窓」が意味するもの
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ああ 君と出会えて良かった
きっとずっと出会いたかった
ほんの一瞬だけだろうと
今 今 重ねた声
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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名前も知らないその人が、自分と同じ痛みを知っていると分かった喜び。
長い人生の中で、それはほんの一瞬のすれ違いかもしれません。
共に痛みを分かち合い、人生を進んでいけるパートナーではなくても、分かり合えたという事実が大切なのです。
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これからの世界は全部
ここからの続きだから
一人で多分大丈夫
昨日 明日 飛び越える声
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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かけがえのない人に出会えたことで、これまでと何ら変わることのない日常が待っていたとしても、一人で戦っていけるのです。
現状を変えることは難しくても、自分の心持ちを変えることはできます。
たった一人、自分の気持ちを分かってくれる人に出会えるだけで、戦っているのは自分一人ではないことを知ることができるだけで、人は強くなれます。
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ああ もっと話せば良かった
言葉じゃなくたって良かった
すれ違っただけだろうと
今 今 重ねた声
≪窓の中から 歌詞より抜粋≫
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人生の中でほんの一瞬、すれ違っただけの他人が、その後の人生の支えになることもあります。
『窓の中から』は、自分の心という窓の中から世界を見渡し、小さな味方を見つける物語です。
誰もが抱える孤独という闇から、ほんの少し前進できる、わずかな希望。
たとえ小さな光でも、それを見つけることが人生を幸せに生きるコツなのかもしれません。
BUMP OF CHICKENは、トイズファクトリーに所属する4人組のロックバンド。独特な世界観とボーカル藤原の圧倒的歌唱力、更にはドラマの他、アニメやゲームとのタイアップ曲も多く、幅広い年齢層から支持を集めている。 幼稚園時代からの幼馴染であり、1994年、当時中学校の同級生であった4人が、文···