Billboardの記録を塗り替えた話題作!
ゆる可愛い音楽で人気急上昇中のボカロP・ゆこぴ。日常を細やかに切り取った脱力感のある音楽が多くの共感を呼び、中毒者が続出している今注目のアーティストです。
今回考察する『強風オールバック』は、そんなゆこぴの人気を爆発的に高めた1曲。
イラスト動画クリエイター・小津とコラボしたMVは、強風にあおられながら小学生の女の子が行進する、キュートで中毒性の高い作品となっています。
ボカロ小学生として知られる「歌愛ユキ」とも相性抜群のアニメーションです。
その再生回数は公開から2週間足らずでミリオンを達成し、その後わずか数ヶ月で1000万回を突破しました。
さらに、Billboard JAPAN「ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20」では6週連続で首位を獲得し、歴代最多首位の新記録を樹立しています(2023年5月20日現在)。
楽曲それ自体も強大な旋風を巻き起こしている『強風オールバック』。
その歌詞には、果たしてどのようなストーリーが見出せるのでしょうか。
「強風」が引き起こす悲劇
まずは歌い出しの歌詞を見てみましょう。
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外出た瞬間 終わったわ
天気は良いのに 進めない
風 強すぎて お亡くなり
定期 定期 的にオールバック
≪強風オールバック 歌詞より抜粋≫
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イントロはなく、それこそパッと外に出て強風に吹かれるような歌い出しです。
お出かけ日和で外出したのに、風にあおられてオールバックになる主人公。
せっかくの前髪も「お亡くなり」になったようです。
しっかり髪をセットしたのに風に台無しにされる悲劇。
多くの人が一度は経験するあるあるですね。
ただ、MVの女の子は平然とスキップを続け、髪の毛のことは全く気にしていない様子。
カスタネットやトライアングル、ちょっと気の抜けたリコーダーが印象的な間奏を経て、次の歌詞に入ります。
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地下に潜りたいな って 思いました
風さえなくなれば あったかいのに
ずっと座りたいな って 思いました
いやいや と 外でたら
ハト ハト ハト ハト 大乱闘
≪強風オールバック 歌詞より抜粋≫
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とにもかくにも風を避けたい主人公。
「風さえなくなれば あったかいのに」という言葉から察するに、おそらく季節は春ごろなのでしょう。
続く歌詞は「ずっと座りたいな って 思いました」。
主人公は、強風を回避できる地下鉄や建物の中に入ったのかもしれません。
とはいえ、いつまでも安全地帯に留まることはできず、嫌々ながらまた外に出たようです。
しかし、そこで待ち受けていたのは「ハト ハト ハト ハト 大乱闘」。
風にあおられてハトがぶつかり合っている情景でしょうか。
平和の象徴が「大乱闘」しているわけで、どこか和やかで面白いですね。
一方、主人公はもはや諦めモードで、再び「外出た瞬間 終わったわ」と歌い出しに戻ります。
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外出た瞬間 終わったわ
天気は良いのに 進めない
風 強すぎて お亡くなり
定期 定期 的にオールバック
≪強風オールバック 歌詞より抜粋≫
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どう頑張っても「オールバック」
間奏中、MVでは、作画崩壊したキャベツを一刀両断する音がビートを刻んでいます。
髪の毛が台無しになったことによる虚無感がコミカルに伝わる演出ですね。
そんな間奏を経て、いざ後半戦です。
しぶとく強風が吹き続けるように、以下の歌詞が繰り返されます。
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外出た瞬間 終わったわ
天気は良いのに 進めない
風 強すぎて お亡くなり
定期 定期 的にオールバック
≪強風オールバック 歌詞より抜粋≫
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「定期 定期 的にオールバック」からは、直しては飛ばされ、直しては飛ばされ、主人公の髪の毛が強風に襲われ続ける情景がイメージできますね。
すぐに崩される髪型を何度も直してしまう点も、1つの共感ポイントかもしれません。
そして、最後の歌詞へと続きます。
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そっ と出た瞬間 終わったわ
天気は良いのに 進めない
風 強すぎて お亡くなり
定期 定期 的にオールバック
髪の毛 強風オールバック
≪強風オールバック 歌詞より抜粋≫
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今度こそやられまいと「そっ と出た」らしい主人公。
しかし出方を変えても効果はなく、あえなく「強風オールバック」です。
自然の力には逆らえませんね。
「強風オールバック」を受け入れる
今回は、ゆこぴ feat. 歌愛ユキ『強風オールバック』の歌詞の意味を考察しました。風に吹かれて髪型が崩れるという誰もが共感できるシーンがコミカルに表現された歌詞でしたね。
強風に屈して「終わったわ」とこぼす主人公には、どこか癒されるゆる可愛い魅力がありました。
一方、MVの女の子は一貫して髪の毛を気にすることなく歩みを進めている様子です。
単に全てを諦めているようにも見えますが、凛と伸びた背筋からはどことなく高潔ささえ感じられます。
髪型など気にしない無邪気な小学生のように、私たちも「強風オールバック」を受け入れて堂々と人生を歩むべきなのかもしれません。