ドラマ「unknown」主題歌で描く主人公の愛
大人気バンド・RADWIMPSがいま大注目の若きシンガーソングライター・aoを迎えた楽曲『KANASHIBARI』は、高畑充希と田中圭W主演のテレビ朝日系ドラマ『unknown』の主題歌として書き下ろされました。ドラマ『unknown』は、週刊誌のエース記者である闇原こころと交番警察官の朝田虎松を主人公に、互いに重い秘密(unknown)を抱えた男女の“究極の愛”を描く本格ラブサスペンスです。
主題歌の作詞作曲を務めた野田洋次郎は、ドラマサイドからの「絶望的なラブソングを」というキーワードを起点に楽曲を制作したそうです。
先の読めないドラマのストーリーを彩る歌詞の意味を考察していきましょう。
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その声で僕の名を 呼ばれるたびに
僕の身体は明日を生きる意味を 一つもらうよ
君のすべてを記した 手紙を僕が今手にしたら
迷わず破り捨てて ここで飲み込むよ
≪KANASHIBARI feat. ao 歌詞より抜粋≫
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1番では虎松からこころへの想いが歌われています。
彼女に名前を呼ばれるだけで「明日を生きる意味」をもらえると感じるほど、大切な存在と見ていることが伝わってきます。
「君のすべてを記した手紙」にはこころの秘密が記されているのでしょう。
そのように秘密を知るチャンスが目の前にあっても、愛する人が知られたくないと思っているのなら知らないままで全てを受け入れようとする深い愛が表現されています。
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「一体何回生まれ変わったら」 悲しみなんかも愛せるのかな
一回こっきりの人生一気して 飛び込んだんだ この世のど真ん中
泣きたくなるような君の笑顔とか 明日みたいに光るその声も
君がいないなら意味なんかないから 君に歌う キ ミ ニ ウタウ
LOVE SONG
≪KANASHIBARI feat. ao 歌詞より抜粋≫
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人生には悲しいことが幾度となく訪れ、きっとそのつらさは何回生まれ変わったとしても慣れるものではないはずです。
だから「一回こっきりの人生」を後悔なく生きたいと願います。
彼は見ていると泣きなくなるような彼女の幸せな笑顔や希望に満ちた声を愛しています。
しかしそれらは彼女がそこにいなければ存在しないものです。
虎松がこころにずっと隣にいてほしいと願ってこの歌を歌っている様子を想像させます。
金縛りのように襲い来る複雑な感情
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2倍速の世界 4倍速で通過 そんな時代だが 君のことは
2分の1倍速でも足りないな スーパースローで一生見てたいや
行ってみたいとこ やってみたいこと 無限にあるけど君がいないと
味がどうゆうわけかしないの 言ってる意味 わかるでしょ?
≪KANASHIBARI feat. ao 歌詞より抜粋≫
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「2倍速」ほどの目まぐるしいスピードで日々は流れていくのに、それすら遅いと言うように生き急ぐ人たち。
その中にあっても「君のことは2分の1倍速でも足りないな スーパースローで一生見てたいや」と、彼女の様々な姿を一瞬でも見逃したくない気持ちを言い表しています。
また「君がいないと味がどうゆうわけかしないの」というフレーズも、彼女と過ごす時間の尊さを物語っています。
そして彼女にも同じ気持ちでいてほしいという想いが「言ってる意味わかるでしょ?」という問いかけから垣間見えますね。
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金縛りのように 身動き取れない 得体の知れない 気持ちの正体
知りたいようでやっぱ一生知らないでいたい 神様さえ知らないような愛し方したい
差し違える寸前で抱き合っていたい
≪KANASHIBARI feat. ao 歌詞より抜粋≫
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虎松の心の中では、愛する人のことを全て「知りたい」と思う一方で、純粋に愛し続けるために「一生知らないでいたい」という矛盾した感情がぶつかっているようです。
そうした複雑な感情が「金縛り」のように彼を縛りつけています。
それでも全てを知っている「神様さえ知らないような愛し方したい」と、自分なりの方法で彼女を愛し続けることを決意していることが分かります。
「差し違える」とは相撲で行司が間違えて負けた力士へ軍配を上げることを指す言葉です。
そのため「差し違える寸前で抱き合っていたい」のフレーズは、秘密を知って自分がどう反応するかなんて考えずに彼女を秘密ごと愛したいという意味と解釈できそうです。
絶望さえあなたとなら幸せ
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この日々だけは 何言われても 私が確かに 掴んだ光
私の全部なんて知らないでいい あなたの全部で 私を見てて
君の痛みと私のこの痛みは 生まれも育ちも違う他人同士だ
けど私たちで二人の細い手と手 繋がせて結ばせてあげられないかな
≪KANASHIBARI feat. ao 歌詞より抜粋≫
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2番はこころから虎松への想いが表現されています。
2人で愛を育んできた日々は、誰が何と言おうと幸せに満ちていました。
相手の全てを知らなくても愛し合うことはできるから「あなたの全部で私を見てて」と、これまでの幸せな日々がずっと続いてほしいという願いが伝えられています。
続く部分にあるように、現実でも誰もがそれぞれ違う痛みや秘密を抱えながら生きています。
そんな「生まれも育ちも違う他人同士」でも、互いに近づこうと行動するなら信頼し合える関係になれるということを示しているのではないでしょうか。
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絶望なんてきっと 生きようによっちゃリアル体験版 障害物競走
それならばもういっそ 走り切る 今を 君と
わからないことばかり溢れてる それが何?
そんなステキな世界を私たち二人で
一緒に笑って迷子になろう
「迷子の最後」を確かめにいこう
≪KANASHIBARI feat. ao 歌詞より抜粋≫
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「絶望」を感じるような出来事に直面した時、ただその苦しさに打ちのめされる人もいれば、前向きに乗り越えていく人もいます。
状況は同じでも生き方によって人生を変えられるのであれば、絶望を「リアル体験版 障害物競走」と捉えて2人で走り切りたいと考えているようです。
また「わからないことばかり溢れてる」世界を不安視することもできますが、こころは「ステキな世界」とポジティブに見ているところも印象的です。
一緒に迷うことすら幸せで、その結果が本当につらいだけなのか「「迷子の最後」を確かめに行こう」と虎松を誘っている様子に温かな愛が感じられます。
これが究極の愛だ!
全く他人同士の2人が出会って愛し合うということは、当たり前のようでいて夢のように素晴らしい奇跡です。だからたとえ言えない秘密を抱えていようとこの先に困難が待っていようと、この人を愛し続けるという堅い絆と決意が『KANASHIBARI』の歌詞から読み取れました。
ぜひ野田洋次郎とaoのドラマチックな歌声のハーモニーで歌詞の世界を堪能してください。