「ピョンチャンオリンピック・パラリンピック NHK放送」テーマソング
『Dragon Night』や『Habit』など、メッセージ性の強いポップな歌詞やキャッチーなメロディーで人々を魅了するSEKAI NO OWARI(通称:セカオワ)。テーマパークさながらのダイナミックなライブパフォーマンスでも知られる、子供から大人まで幅広い層に愛されている大人気アーティストです。
今回考察する『サザンカ』は、そんな国民的バンド「セカオワ」が2018年にリリースした1曲(作詞:Fukase、Saori)。
MVでは、俳優・神木隆之介がFukaseの弟役として出演し、夢を追う弟とそれを見守る兄の心温まるストーリーが大きな反響を呼びました。
そんな優しい応援ソング『サザンカ』は、2018年に開催された「ピョンチャンオリンピック・パラリンピック(NHK放送)」のテーマソングとして制作された楽曲です。
選手たちの背中を押すような優しい歌詞は、オリンピック閉幕後もたくさんの夢追い人の心を支えています。
今回は、そんな温かい応援歌『サザンカ』の歌詞の意味を解釈していきましょう。
夢を追う「君」へのメッセージ
まずは1番の歌詞です。
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ドアの閉まる音 カレンダーの印
部屋から聞こえる 君の泣き声
逃げる事の方が怖いと君は夢を追い続けてきた
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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「カレンダーの印」からは、受験や面接、大会など、入念に準備して挑む大切な一日が連想されます。
そんな大事な勝負の日、よい結果を得られなかった「君」が無言で部屋に入り、ひとり泣いている様子です。
一方、主人公はひた向きに努力する「君」をただただ見守っています。
次の歌詞です。
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努力が報われず 不安になって
珍しく僕に当たったりして
ここで諦めたら今までの自分が可哀想だと
君は泣いた
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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「君」が抱えている行き場のない怒りや悲しみが伝わってきますね。
「ここで諦めたら今までの自分が可哀想」という考え方は、1つのことを必死で頑張ったからこそ湧いてくるものでしょう。
報われない未来への不安もまたしかりです。
ひどく気持ちが落ち込んでいる「君」ですが、主人公は優しく言葉かけをします。
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夢を追う君へ
思い出して つまずいたなら
いつだって物語の主人公は笑われる方だ
人を笑う方じゃないと僕は思うんだよ
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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「いつだって物語の主人公は笑われる方だ 人を笑う方じゃない」。
失敗を恥じることなく、ひたすら前に進んでいこうと思える熱いメッセージですね。
得てして大きな夢は笑われるもの。
ひとたび壁にぶつかったら、なおさらのこと。
それでも、笑う側に身を落とさず、苦難を乗り越え、ときに仲間と協力し、最後に成功をつかむのが「物語の主人公」だといえます。
最後に添えられる「と僕は思うんだよ」には、身近で見守っている「僕」の照れ臭さも垣間見えて心が温まりますね。
サザンカの花言葉は「困難に打ち勝つ」
ここからは2番以降の歌詞を見ていきましょう。
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誰よりも転んで 誰よりも泣いて
誰よりも君は 立ち上がってきた
僕は知ってるよ
誰よりも君が一番輝いてる瞬間を
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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主人公「僕」は、誰よりも近くで「君」の頑張りを見守ってきました。
もしかすると「君が一番輝いてる瞬間」は、晴れ舞台で努力を実らせる瞬間ではなく、転んでは立ち上がる一瞬一瞬そのものなのかもしれません。
続くサビの歌詞も見てみましょう。
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夢を追う君へ
思い出して くじけそうなら
いつだって物語の主人公が立ち上がる限り
物語は続くんだ
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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1番と同様、「僕」からの強く優しいメッセージが綴られているようです。
挑戦を続ける限り、何度くじけても夢は終わらない。
「立ち上がる限り 物語は続く」からは、そんな果てのない大きな希望が感じられます。
次に、Cメロの歌詞です。
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嬉しいのに涙が溢れるのは
君が歩んできた道のりを知っているから
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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「君」が苦悩し、努力する様子を間近で見てきた主人公。
「嬉しいのに涙が溢れる」というフレーズからは、その歩みが1つ報われる瞬間が来たことがうかがえます。
嬉し涙は「晴れ姿以外も知っているからこそ流せる涙」なのかもしれません。
そんな感涙の瞬間を経て、最後のサビです。
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夢を追う君へ
思い出して つまずいたなら
いつだって物語の主人公は笑われる方だ
人を笑う方じゃない
君ならきっと
≪サザンカ 歌詞より抜粋≫
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これまでは「失敗に対する激励」として読み取れたサビのフレーズ。
ここでは「これからの生き方」を指し示しているようにも思えてきますね。
「君ならきっと」と余韻を残して終わるのも印象的です。
あえて言葉に出さずとも「君」が報われることを信じている。
主人公のそんな想いがくみ取れる一言なのではないでしょうか。
最後に、「サザンカ」の花言葉は「困難に打ち勝つ」や「ひた向きさ」。
困難に立ち向かう人をひた向きに支える応援歌として、これからも『サザンカ』はたくさんの人に活力を与えてくれそうです。
応援者もまた「主人公」
今回は、SEKAI NO OWARI『サザンカ』の歌詞の意味を考察しました。努力を続ける人を優しく包み込むような心温まる応援歌でしたね。
今まさに何かに打ち込んでいる人にとっては大きな力になる1曲だったのではないでしょうか。
また一方で、MVを見てみると「弟を応援していた兄の孤影」がラストカットとなっています。
弟のために作ってきた季節感あふれる料理も、寂しげなカップラーメンに変わっている様子です。
このラストからは「夢を追う人を支える側の孤独や苦悩」が垣間見えます。
一枚ずつ花びらを落とす「サザンカ」さながら、応援する側も少しずつ消耗し、複雑な思いに悩まされるもの。
もがきながら身を粉にして応援する人もまた、立ち上がって物語を続けていく「主人公」の1人なのでしょう。
2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。 同年1stアルバム「EARTH」をリリース後、2011年にメジャーデビュー。 圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーに浸透し、「セカオワ現象」とも···