ライブで人気の曲「エソラ」の意味とは?
Mr.Childrenの『エソラ』は2008年にリリースされた15枚目のアルバム『SUPERMARKET FANTASY』のリード曲。のちにベストアルバム『Mr.Children 2005-2010<macro>』にも収録され、ライブの定番曲としてファンに親しまれています。
「エソラ」というタイトルは「絵空事」から取られたものです。
大げさで現実にはあり得ないことを表す「絵空事」ですが、作詞作曲を務める桜井和寿は末尾に“事”とついているからネガティブな意味合いになるだけでそれを取ればポジティブな意味になると考えていたそう。
そんな経緯で生まれたタイトルの通り、楽曲自体も絵に描かれた美しい空のようなきらめきを感じるポップソングとなっていて、聴く人の心を晴れやかな気分にしてくれます。
アーティストとしての想いを感じる歌詞の意味を考察していきましょう。
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二足歩行してる 空っぽの生きもの
無意識にリズムを刻んでいる
フルボリュームのL-Rに
萎んでた夢が膨らんでく
≪エソラ 歌詞より抜粋≫
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主人公は自分自身を「二足歩行してる空っぽの生きもの」と表現しています。
自分の取り柄は周囲の人たちと同じように二足歩行していることくらいで、ほかに良いところなんてないと思っているようです。
そんな時、イヤホンをフルボリュームにして爆音でお気に入りの音楽を聴くと、気持ちがポジティブになって「萎んでた夢が膨らんでく」のを感じます。
過去の失敗や挫折によって自分の価値を見失っていた主人公が、音楽の力で生きる希望を見出している様子が見えてきますね。
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君が話してたの あそこのフレーズだろう?
まるで僕らのための歌のようだ
君は どんな顔して聞いてたの?
甘く切なく 胸を焦がす響き
≪エソラ 歌詞より抜粋≫
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主人公のお気に入りの曲は、大切な人との思い出の曲だったようです。
いつか「君」が話していたのはあの楽曲の「あそこのフレーズだろう?」と心の中で問いかけています。
そして「甘く切なく胸を焦がす響き」を「君はどんな顔して聞いてたの?」と聞いているため、主人公がその人に恋をしているか、両思いでありながら距離を縮められない理由があるのかもしれません。
愛する人が好んでいた曲を自分たちの関係に重ねて「まるで僕らのための歌のようだ」と言っているところに主人公の健気さが感じられます。
音楽って素晴らしい
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メロディーラインが放ったカラフルな魔法のフレーズ
輝きを撒き散らしては僕らに夢を見せる
明日へ羽ばたく為に
過去から這い出す為に
Oh Rock Me Baby Tonight
ほらもっとボリュームを上げるんだ
≪エソラ 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞には音楽の素晴らしさを表現する言葉が詰まっていますね。
1つの音楽の中には「カラフルな魔法のフレーズ」が並んでいて、それらが「輝きを撒き散らしては僕らに夢を見せる」と歌われています。
時には前向きに「明日へ羽ばたく為に」、時には苦しい「過去から這い出す為に」力をくれ、自分も変わることができるかもしれないという夢を見せてくれるのが音楽の魅力です。
「Oh Rock me baby tonight」は意訳すると「今夜は僕を興奮させてくれ」となるでしょう。
音楽でもっと気分を高めたいという想いが伝わってきます。
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天気予報によれば 夕方からの
降水確率は上がっている
でも 雨に濡れぬ場所を探すより
星空を信じ出かけよう
雨に降られたら 乾いてた街が
滲んできれいな光を放つ
心さえ乾いてなければ
どんな景色も宝石に変わる
≪エソラ 歌詞より抜粋≫
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天気予報で夕方からの降水確率が上がっていると知れば、大抵の人は雨に濡れないで済む場所にいようとするはずです。
しかし主人公はそれよりも「星空を信じ出かけよう」と、悪い状況の時にもポジティブな気持ちで行動するのがいいという考え方を示しています。
雨はマイナスなイメージが強いですが、夜景は雨の後の方が空気の汚れが落ちてより美しく見えるものです。
雨が上がったばかりで星空は見えなくても、夜景の輝きが楽しませてくれることがあるでしょう。
「心さえ乾いてなければどんな景色も宝石に変わる」という言葉の通り、心が豊かに潤っているなら普段当たり前に見ている景色でさえも素晴らしいものと見ることができます。
ネガティブに思える状況をポジティブに捉えることさえできるのです。
心を躍らせる音楽が人生を彩る
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やがて音楽は鳴り止むとわかってて
それでも僕らは今日を踊り続けてる
忘れない為に
記憶から消す為に
Oh Rock Me Baby Tonight
また新しいステップを踏むんだ
≪エソラ 歌詞より抜粋≫
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心を潤す1つの方法が音楽です。
どの曲も流れ始めればいつかは鳴りやむ時がやってくることは、誰もが知っている事実。
しかしいつか終わるからといって、それを理由に音楽を聴かない人はいないですよね。
大切な思い出や沸き立つ感情を「忘れない為に」、またはつらく苦しい出来事を「記憶から消す為に」今日も多くの人が音楽を聴いています。
これは人生においても同じで、いつか終わりが来ることは分かっていますが、それでも毎日を懸命に生きています。
音楽に心を躍らせながら日々「新しいステップ」を踏んで前向きに生きていこうとする主人公に共感するリスナーは多いのではないでしょうか。
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メロディーラインが描いたカラフルな希望のフレーム
輝きを撒き散らしては僕らに夢を見せる
めぐり逢う度に
サヨナラ告げる度に
Oh Rock Me Baby Tonight
さぁ踊ろうよ ボリュームをもっと上げるんだ
≪エソラ 歌詞より抜粋≫
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音楽は何の変哲もない日常ですら「カラフルな希望のフレーム」で飾ってくれます。
そしてその輝きが今ある夢をさらに膨らませてくれたり、なくした夢を取り戻せるように背中を押してくれたりします。
誰かと「めぐり逢う度に」、誰かに「サヨナラ告げる度に」心を打つ楽曲は当然それぞれ違うでしょう。
とはいえどんな時にも音楽が人を勇気づけ、助けの手を差し伸べてくれることに変わりはありません。
音楽のボリュームを上げると同時に自分の心も高鳴らせて、もっと毎日をポジティブに楽しもうというメッセージが読み取れます。
音楽の力を感じよう!
Mr.Childrenの『エソラ』は、音楽が人生に欠かせない存在であることを爽やかに歌い上げています。歌詞はポジティブでありながらメロディが少し切なく感じられるところも、楽しいことも悲しいこともある人生を象徴しているように思えますね。
まさに「まるで僕らのための歌のようだ」と言える共感性の高い『エソラ』を聴きながら、改めて音楽の素晴らしさを感じてください。
1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。 1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。 「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングル···