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童謡「荒城の月」歌詞の意味を考察!美しい情景に切ない思いを乗せた日本の名曲

明治時代に生まれた日本を象徴する童謡であり、滝廉太郎の代表曲としても愛され続ける『荒城の月』。月光に照らされる荒城の美しさと悲哀をありありと表現した歌詞の意味を考察します。

土井晩翠作詞・滝廉太郎作曲の名曲を徹底解釈


日本には長年大切に歌い継がれてきた情緒豊かな童謡が数多くあります。

そのひとつが作詞を土井晩翠、作曲を滝廉太郎が手がけて生まれた『荒城の月』です。

日本で音楽教育が始まったばかりの明治34年、東京音楽学校が校内の教員や学生に中学校唱歌を編纂するための懸賞募集を行いました。

そして詩人・土井晩翠が書いた『荒城月』という詩に当時学生だった滝廉太郎が曲をつけて応募したことで、のちの名曲が生まれることとなります。

その後ソプラノ歌手・三浦環からの依頼を受けた山田耕筰により1917年に編曲され、さらに広く親しまれる楽曲となりました。

あまりにも有名な童謡ですが、今では使われない表現もあり意味が理解しにくいと感じている方もいるでしょう。

どのような思いが込められているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。

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春 高楼の 花の宴
めぐる盃 かげさして
千代の松が枝 わけ出でし
むかしの光 いまいずこ
≪荒城の月 歌詞より抜粋≫
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季節は春、「花の宴」とあることから花見の宴会が開かれていたと解釈できます。

「高楼」は高い楼閣という意味で、簡単にいえば高い建物のことです。

天守閣の中から眼下の桜を眺めながら、または桜の木のそばから天守閣を見上げながら、人々が酒盛りを楽しんでいる様子が想像できます。

「めぐる盃」というフレーズから、そこでは1つの盃を回し飲みしていると考えられます。

回し飲みすることにより、仲間同士の結束力を確かめ合い鼓舞し合っているのでしょう。

ふとその盃の水面に「千代の松が枝」、つまり太古からある大きな松の木の枝ぶりが月の光に照らされて映り込みます。

松は太い幹から枝がいくつにも分かれて成長することから繁栄を象徴する植物で、その松の存在が示す通り繁栄していたため賑やかな宴会が行われていたと思われます。

しかし「むかしの光 いまいずこ」とあり、様子は一変します。

主人公は時代が移り変わって今ではすっかり寂れてしまった城を見つめ、あの頃の栄光はどこに行ってしまったのかと考えているようです。

宴会が行われていた時代の華やかさとは対照的にひっそりしている城は、同じ月光に照らされながらも全く違う印象を見る者に与えています。

様変わりした城の姿


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秋 陣営の 霜の色
鳴きゆく雁の 数見せて
植うる剣に 照りそいし
むかしの光 いまいずこ
≪荒城の月 歌詞より抜粋≫
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秋になると戦のために陣営を組んで忙しくも充実感を抱きながら働いていたあの時代。

月の光で煌めく「霜の色」や鳴きながら飛んでいく渡り鳥の雁(かり)の群れの姿が思い出されます。

「植うる剣(つるぎ)」についてはさまざまな解釈がありますが、「植うる」とあることから剣がそこに生え出ているかのようにたくさん地面に刺さっている光景が想像できそうです。

その剣はおそらく大勢の敵たちのものなのでしょう。

あの頃は地面に刺さった無数の剣が月光で輝き、自分たちの強さや勇ましさを物語っていたけれど、そんな面影もなくなってしまったことを悲しんでいる様子が伝わってきます。

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今 荒城の 夜半の月
かわらぬ光 誰がためぞ
垣に残るは ただかつら
松にうたうは ただ嵐
≪荒城の月 歌詞より抜粋≫
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3番でタイトルにもある「荒城」のフレーズが登場します。

真夜中に月を見上げて、周りのどんなものが変わってもその月光だけは変わらずに輝いているのを切ない気持ちで見ていることが分かります。

そして主のいないこの城を誰のために照らし続けているのかとぼんやりと考えているようです。

石垣を見てみると「かつら」のツタに覆われているのは誰も手入れしていない証拠。

賑やかだった頃には楽しい宴会の歌を聴いていたはずの松の木が、いま聴いているのはただ嵐のような強い風の音だけになっているとも表現されています。

そこに見える情景全てがかつての栄華などなかったかのようにすっかり変わっていることが、魅力的なフレーズで綴られています。

滝廉太郎が思い描いた情景とは


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天上 影は 変らねど
栄枯は移る 世のすがた
写さんとてか 今もなお
ああ荒城の 夜半の月
≪荒城の月 歌詞より抜粋≫
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天上に浮かぶ月が照らす影は今も昔も変わりません。

その姿を見て、主人公は月が世の中の栄枯盛衰を映し出そうとしているのではないかと考えていると解釈しました。

良い時もあれば悪い時もある。

どれほど素晴らしい栄華を誇っていても長くは続かず移り変わるのが世の常だということを、月は人間に示そうとしているのかもしれないと受け止めたのでしょう。

かつての輝きを失ってしまった城への悲しさはあっても、時代の変化を受け入れることも大切であることを教えているように感じます。

滝廉太郎が作曲した際、思い浮かんだのは幼少期を過ごした大分県竹田市の岡城だといわれています。

文治元年に緒方惟義が源頼朝を迎えるために築城し、以後700年にわたっていくつもの戦を乗り越えた末、石垣が残るのみとなってしまった城址に幼いながら思うところがあったかもしれません。

だからこそ歌詞の主人公が見ている情景を明確に思い描くことができ、歌詞にぴったりの儚いメロディを作ることができたのでしょう。

編曲版が聴きなじみがあるという方は多いですが、ぜひこの機会に原曲版も聴いてみてください。

日本の魅力あふれる名曲に思いを馳せよう

荒城の月』は月光に照らされる城の昔と今の姿に栄枯盛衰の世を思う歌詞が心に沁みる童謡です。

春の美しさと悲哀を感じる繊細なメロディが歌詞の思いを際立たせ、日本らしい趣を感じさせますよね。

きっと聴く人によって解釈が変わるので、情景を思い浮かべながら自分なりに歌詞を考察してみてはいかがでしょうか。

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