歌声で心を惹き付ける中島みゆき
その力強い歌声で、圧倒的なスケールの大きさを私たちに感じさせる中島みゆき。中島みゆきの歌が持つテーマは、『糸』のような巡り合いを歌ったものから、時の流れに浄化されていく様を歌った『時代』、女の哀しさを歌った『空と君のあいだに』など、私たちの「生」に直接寄り添った作品が多いんです。
知名度が高い『荒野より』
そんな中、今回取り上げる「荒野より」は、木村拓哉主演の映画「南極大陸」の主題歌にもなりましたし、世界の果てまでイッテQ!内の企画でもテーマ曲としても使われている、近年の中島みゆきの曲のなかでも、知名度が高い曲です。MVでも描かれた見守る親の愛
この曲のミュージックビデオは、父親が亡くなったという知らせを受けて、成長した子供が昔の家族の様子を思い返す内容。映像のなかで父親が、補助輪をとり自転車に乗る子供を見守っている描写がありますが、歌詞のなかでも、独り立ちしていく子を見守る、親の目線を随所に感じることができます。
親の願い
----------------
望みは何かと訊かれたら 君がこの星に居てくれることだ
力は何かと訊かれたら 君を想えば立ち直れることだ
≪荒野より 歌詞より抜粋≫
----------------
親の望みは、「君がこの星にいてくれること」。そばにいてくれなくてもいい。元気で生きていてくれさえすればいい。
それが親にとってなにより嬉しいのだから。
この部分から親の子に対する無償の愛を感じることができます。力になるものはなにかと問われたら、子供のことを想えば立ち直ることができること。
親にとって子供の存在は何よりの支えで、たとえ嫌なことがあっても、子供のことを想えば乗り越えることができるのでしょう。
----------------
僕は走っているだろう 君と走っているだろう
あいだにどんな距離があっても
僕は笑っているだろう 君と笑っているだろう
あいだにどんな時が流れても
≪荒野より 歌詞より抜粋≫
----------------
いつまでも二人三脚
親と子はいつでも二人三脚です。子供の頑張りの裏には、必ず親の苦労がある。ふたりはいつも一緒に走っているのです。それは例え物理的な距離がどれだけあっても、親と子の精神的なつながりは切れることはありません。
また、親の笑顔は、いつでも子供の笑顔のそばにあります。そのあいだにどんなに時が流れたとしても、ふたりは笑いあっているでしょう。
親子は、何年たっても親子なのです。
計り知れない親の愛情
----------------
荒野より君に告ぐ 僕の為に立ち停まるな
荒野より君を呼ぶ 後悔など何もない
≪荒野より 歌詞より抜粋≫
----------------
そんなに子供に気持ちを傾けてきた親、その親のためになにかしてあげたいと思うのが、子供の気持ちでしょう。けれど親は言います。
「僕の為に立ち停まるな」。
親の為に、子供になにかを犠牲にしてほしくないのです。君を育てたことに、後悔はなにもない。だから君は君の人生を、精一杯生きておくれ。
歌詞からは、そんな親の気持ちを感じることができます。
中島みゆきのこの歌をきくと、親の子供に対する計り知れない愛情を感じます。春先、親元を離れて暮らす方も多いでしょう。そういう方にぜひこの曲を聴いてほしいと思います。
TEXT:毛布