3rdアルバム「純愛クローゼット」収録曲
『たばこ』や『あたしを彼女にしたいなら』など、女の子の等身大の日常を切り取った楽曲で話題を集めるコレサワ。ライブのみで素顔を公開し、普段はクマのキャラクター「れ子ちゃん」がビジュアルを担当している大人気アーティストです。
今回考察する『この恋はスクープされない』は、そんなコレサワが2021年3月にリリースした曲で、3rdアルバム『純愛クローゼット』に収録されています。
同年5月にはレトロな雰囲気のMVも公開され、そのタイトルや歌詞の文字デザインをシンガーソングライター・ヒグチアイが手がけたことでも話題になりました。
一般人にとっては当たり前で、それでいてかけがえのない日常の恋愛観を描く『この恋はスクープされない』。
その歌詞には、果たしてどのような想いが込められているのでしょうか。
誰も知らない「あたしたち」の恋
まずは1番の歌詞です。
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嫌いなところがないわけじゃないの
直して欲しくないから言わないわ
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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嫌いなところもあるけど直してほしいわけではない。
主人公は恋人に「ありのままの自分でいてほしい」と考えているように読み取れますね。
あるいは、欠点を1つ1つ直してしまったら、他の誰かに目をつけられたり自分と釣り合わなくなってしまったりするのでは…という不安もあるのかもしれません。
続く歌詞はこちら。
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君のどれもこれもが 鮮やかに騒いで
ずっと見ていられるの 今日はどこに行こうかな
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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嫌いなところも受け入れるほど「君」に夢中な主人公。
「どれもこれもが鮮やかに騒いで ずっと見ていられる」というフレーズからは、相手の1つ1つの表情や仕草が愛おしく、気になって気になってしょうがない様子が伝わってきます。
そばにいると世界が明るくなるような「君」と一緒なら、毎日がワクワク楽しいものになるのでしょうね。
主人公のピュアな恋模様が垣間見えたところで、サビの歌詞に入ります。
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駅前で君を待ってても 道端でキスをしてても
この恋はスクープされない
あたしたちのことなんて誰も知らないから
近所でラーメンを食べても すっぴんで手を繋いでても
この恋はスクープされない
あたしたちのことなんて誰も知らないから この恋は
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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駅前での待ち合わせ、道端でのキス。
ばっちりデートモードの日でも「この恋はスクープされない」。
ありきたりな日常のなかで恋愛をする「あたしたち」は、パパラッチとも熱愛報道とも無縁です。
ラーメンを食べたりノーメイクで会ったり、ちょっと油断したような状況でも同様。
しっとりした曲調も相まって、誰にもスクープされない恋に主人公はどこか物足りない感覚を覚えているようにも聴こえますね。
もしかしたら、本当は大手を振って歩きながら「この人があたしの恋人です!」と世界中の人にアピールしたいのかもしれません。
周りから見ればモノクロの二人
続いて、2番以降の歌詞を見ていきましょう。
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ダメなところも素敵に見えるから
あたしはきっと頭がおかしいわ
他の誰かが君を 鮮やかに見てたら
考えるたびに ちょっと不安だわ
今日はどこにも行かないで
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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相手のダメなところも素敵に見える主人公は、すっかり恋の病にかかっているようです。
同時に、愛おしくて仕方ない「君」を自分と同じように魅力的に思っている人がいたら…と不安にも思っている様子ですね。
「君」が一人でどこかに行くときはなおさら不安になり、つい「どこにも行かないで」と願ってしまう。
そんな切実な思いが高まるなか、サビへと続きます。
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電車で並んで座っても コンビニで肩を寄せても
この恋はスクープされない
あたしたちのことなんて誰も見てないから
ファミレスでずっと話しても 夏フェスで手を繋いでても
この恋はスクープされない
あたしたちのことなんて誰も見てないから この恋は
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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電車の座席やコンビニの店内といった見慣れた場所でさえ、二人一緒なら主人公にとっては「鮮やか」です。
ちょっとした外食や、夏フェスのような非日常の体験ももちろん、当人にとってはスクープされるべき一大イベントでしょう。
それでも「あたしたちのことなんて誰も見てない」。
当たり前を生きる二人の恋は、世の中の誰からもスクープされません。
さらに続く歌詞はこちらです。
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我愛你 je t'aime 사랑해요 Ti amo I love you
しわくちゃに歳を取ったら世界中旅をして
いろんな「愛してる」をあげる
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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中国、フランス、韓国、イタリア…
さまざまな国の「愛してる」が並べられています。
これからも「君」と多くの時間や経験を共有し、ゆくゆくは日本を飛び出して世界中を巡りながら「愛してる」を伝えたい。
一気にスケールが大きくなったこれらの描写は、主人公の想いが日に日に大きく、そして深くなっていくようなイメージを喚起させますね。
最後のサビでは、1番と同様の想いが綴られます。
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駅前で君を待ってても 道端でキスをしてても
この恋はスクープされない
あたしたちのことなんて誰も知らないから
近所でラーメンを食べても すっぴんで手を繋いでても
この恋はスクープされない
あたしたちのことなんて誰も知らないから この恋は
あたしたちのことなんて誰も知らないから
この恋だけは
≪この恋はスクープされない 歌詞より抜粋≫
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ドキドキワクワクするデートも、ちょっとした油断のある日常も、よほどの有名人でなければ誰かに邪魔されることはありません。
「あたしたち」のカラフルな恋は、周りの人にとってはモノクロの背景。
彩りがなくなり、繋いだ手だけが映されるMVのラストも、雑踏に紛れながら続いていく「あたしたち」の特別な日常を表しているように思えます。
最後のひと言「この恋だけは」の先の言葉については、さまざまな推測ができそうですね。
その一案として、ここでは「この恋だけはずっと離したくない」という切望のひと言を挙げたいと思います。
スクープされない日常の幸せ
今回は、コレサワ『この恋はスクープされない』の歌詞の意味を考察しました。当たり前に恋愛をするなかで抱く愛情や不安などがしっとりと綴られた歌詞でしたね。
切ない曲調も相まって、二人の恋がスクープされない独特の静けさや寂しさなども伝わってきました。
恋をすると少し恥ずかしかったり照れてしまったりする一方、心のどこかで誰かに知ってもらいたい気持ちにもなりますよね。
そんな絶妙な心持ちであるように読み取れた「あたし」。
今後もスクープされることなく当然のように「君」と人生を歩めるなら、それも1つの幸せの形なのでしょう。