ミセスの楽曲提供で話題のワンピース劇中歌
『私は最強』は2022年公開の映画『ONE PIECE FILM RED』でメインキャラクター・ウタの歌唱を担当したシンガーのAdoが歌う劇中歌です。同年3月に活動を再開した“ミセス”ことMrs. GREEN APPLEの大森元貫が、作詞作曲し楽曲提供していることでも注目を集めました。
楽曲を制作するにあたり、大森は「強くありたいと自分を奮い立たせてステージに立つ、強さと弱さの両面を持ち合わせたウタの繊細なニュアンスを表現しよう」と考えたとのこと。
ミセスらしい突き進んでいくような爽やかなバンドサウンドに『ONE PIECE』らしいワクワク感を意識したアレンジがされています。
表現力豊かなAdoの歌声が合わさったポップソングです。
MVのイラストはアニメーション作家の藍にいなが担当し、鮮やかな色彩が楽曲の華やかな音色と歌声を美しく演出しています。
ウタの感情をどのように楽曲に落とし込んでいるのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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さぁ、怖くはない
不安はない
私の夢は みんなの願い
歌唄えば ココロ晴れる
大丈夫よ 私は最強
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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劇中で『私は最強』が歌われるのは、海賊がウタのステージに襲いかかるシーン。
「ウタウタの実」の能力者であるウタは自身の歌を聴いた人を眠らせ仮想世界に閉じ込める力を持つため、恐れることなく海賊たちを翻弄していきます。
冒頭のサビで出てくる「怖くはない 不安はない」という堂々とした言葉は彼女の自信の表れであり、心の奥にある捨てきれない弱い部分に言い聞かせている言葉でもあります。
ウタが歌い「ココロ晴れる」ことをみんなが願っているのだから、この歌を必ず歌いきってみせる。
Adoのパワフルな歌声で高らかに歌い上げられる「私は最強」のフレーズに、ウタの力強い想いが表れています。
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私の声が
小鳥を空へ運ぶ
靡いた服も踊り子みたいでさ
あなたの声が
私を奮い立たせる
トゲが刺さってしまったなら ほらほらおいで
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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ウタの声は「小鳥を空へ運ぶ」ように軽やかに響き、「靡(なび)いた服も踊り子みたい」に周囲の視線を引きつけます。
そんな彼女を奮い立たせるのは「あなたの声」です。
この「あなたの声」とは人々の助けを求める苦悩の声なのかもしれません。
心に「トゲが刺さってしまったなら」私のところに来るようにと招いています。
生きて歩き続ければ見られる新しい景色
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見たことない 新しい景色
絶対に観れるの
なぜならば
生きてるんだ今日も
さぁ、握る手と手
ヒカリの方へ
みんなの夢は 私の幸せ
あぁ、きっとどこにもない アナタしか持ってない
その温もりで 私は最強
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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生きていればこそ「見たことない新しい景色」を見られます。
だから生きている限り、様々な人や経験との出会いを得るために歩き続けるべきだと訴えているのではないでしょうか。
「みんなの夢は私の幸せ」だと断言するウタは俯いている人々に手を差し伸べ、共に「ヒカリの方へ」進もうと語りかけます。
もし自分には価値がないと思っているとしても、その人にしかない素晴らしい魅力が必ずあるはずです。
「アナタしか持ってないその温もり」が私に力をくれるのだと人々を励ますフレーズに力づけられますね。
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回り道でも
私が歩けば正解
わかっているけど
引くに引けなくてさ
無理はちょっとしてでも
花に水はあげたいわ
そうやっぱ したいことしなきゃ
腐るでしょう? 期待には応えるの
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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周囲から見れば「回り道」に思えるような道でも「私が歩けば正解」になるのだと、自分の選択に自信を持っていることが分かります。
それでも時には不安になって、本当に間違っていないのだろうかと悩むことがあるのでしょう。
選んでしまったから引くに引けないだけで、途中で後悔することもあるのかもしれません。
しかしそんな時でも彼女は決して立ち止まろうとはしない人です。
少しくらい無理をしてでも「花に水はあげたいわ」と歌っています。
花は水を与えれば生き生きと咲きますが、水を与えなくなると枯れてしまいます。
ここでいう花は心のことなのではないでしょうか。
したいことをすると人の心は豊かになりますが、したいことがあるのにその気持ちを抑え込んでいると心は次第に「腐る」ものです。
だから迷いながらもしたいことを思いのままに行い、心という花に水を与え続けようとする姿に彼女の芯の強さが表れています。
アナタといれば私は最強
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いつか来るだろう 素晴らしき時代
今はただ待ってる 誰かをね
繰り返してる 傷ましい苦味
火を灯す準備は出来てるの?
いざ行かん 最高峰
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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今はまだつらいことばかりでも「素晴らしき時代」がいつか来ると信じています。
助けてくれる誰かを待っている間、苦々しく傷ましい経験は積み重なっていくでしょう。
ここでウタは早く今の苦しみから抜け出したいのならただ救いを待つのではなく、自分自身も「火を灯す準備」をしなくてはいけないと訴えかけます。
「いざ行かん 最高峰」と、先頭に立って人々を新時代へと導く様子が想像できます。
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さぁ、怖くはない?
不安はない?
私の思いは 皆んなには重い?
歌唄えば 霧も晴れる
見事なまでに 私は最恐
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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この部分では、冒頭と同じフレーズを用いながら周囲に問いかけると同時に、自問自答していると解釈できるでしょう。
みんなを救いたいと思って歌っているものの、その気持ちはみんなには重いものなのではないかと不安を覗かせます。
それでも歌を歌っている時は心の霧も晴れるから、自分をどんな敵も敵わないほど「最恐」にしてくれる歌の力を信じて進み続けようとしているところが魅力的です。
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さぁ、握る手と手
ヒカリの方へ
みんなの夢は 私の願い
きっとどこにもない アナタしか持ってない
その弱さが 照らすの
最愛の日々
忘れぬ誓い
いつかの夢が 私の心臓
何度でも 何度でも 言うわ
「私は最強」
「アナタと最強」
≪私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) 歌詞より抜粋≫
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みんなの夢が叶うことが自分の願いであり、必ずこの手で実現させてみせるという熱い感情が伝わってきますね。
そして誰もが持っている弱さが未来を明るく照らすのだから、臆することなく一緒に進んでいこうと明るく励まします。
最愛の日々の中で語り合った誓いや「いつかの夢」が、自分の生きる理由であり原動力になっている。
だから「私は最強」で、「アナタ」という存在がいてくれる限りさらに力を得てもっと最強になれるのだと、全ての力を開放して歌うエネルギッシュな歌声に心が揺さぶられます。
自分自身の心へ歌う力みなぎる応援歌!
Adoが歌う『私は最強』は作品の世界観を凝縮させた、聴く人に元気をくれる楽曲です。誰しも弱さや不安を抱えていますが、自分を信じる気持ちと大切な人への想いを失わないでいれば前進するための力を得られるということを教えてくれます。
思い悩む時にはぜひこの曲を聞いて自己肯定感を上げていきましょう!