「テトの日2023」に誕生した注目曲をチェック!
天才的な音楽の感性と表現力で注目される若きアーティスト・原口沙輔。ボカロイベント「ボカコレ2023夏」で11位にランクインした『人マニア』に続く2作目のボカロ曲『ホントノ』を10月10日にリリースしました。
この日は歌唱に使用されている重音テトの15回目の誕生日である「テトの日2023」です。
『人マニア』でも重音テトを通して語られる人間の姿が表現されているのが印象的でしたが、『ホントノ』ではどんな想いがつづられているのでしょうか?
さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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道徳
ドンと得
イイこと
ほどほど
潰し
リテラシー
愛でネ
≪ホントノ 歌詞より抜粋≫
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冒頭では「道徳」について語っています。
「ドンと得」という表現は「ドン」と音がするほど、どっしりと大きな得があるというポジティブな意味と捉えられるでしょう。
その一方で、歌唱を聴くと「Don’t 得」と言っているようにも感じられ、道徳を守ることには得なんてないというネガティブな意見を発しているようにも思えます。
続く「イイこと ほどほど」のフレーズが「道徳」にかかっているとすると、後者の意味と考える方が妥当かもしれません。
得はなくイイことも、ほどほどしかない道徳の現状を嘆いているかのようです。
愛という言葉で誤魔化され、人々の「リテラシー(読解記述力)」が潰されていく様子を見て皮肉っていると解釈できます。
ボーカロイドのミライはどうなる?
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ただの機械で
ただのハツ
アー
タダのリスクで
買って砕く
アホと違って
パフォでした
アー
まぬけバカんす
≪ホントノ 歌詞より抜粋≫
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「ただの機械でただのハツ」は、ボーカロイドの代表格である初音ミクのことを指していると思われます。
使用することにリスクがないから、人々はボーカロイドを「砕く」ように消耗してきました。
何も知らない「アホ」とは違い、パフォーマンスで無知なふりをして好き放題する人々を観察して嘲笑っているように思えます。
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コケたりしたいな
天国だって終いだい!
アー
ニセモノみたいな
天国だ
天国だった
~♪
ボケたりしたいな
天寿の@知りたい!
あー!だめだ!
ミライが
グチャグチャになっちゃった!
≪ホントノ 歌詞より抜粋≫
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「コケたりしたいな」という気持ちは、体を持たない重音テトがコケる動作を純粋に試したいと思っているとも考えられますし、楽曲が成功続きだからたまには失敗を経験してみたいという意味とも考えられそうです。
後者と断定すると、今の人気は「ニセモノみたいな天国」でいつか終わってしまうという現実的な見方をしていることが伝わってくるのではないでしょうか。
「@(アットマーク)」は通常、単価や場所を表す記号です。
そのため、天から授かった寿命を意味する「天寿」と合わせると、自分の人生の価値もしくは今の自分が人生のどの地点にいるのかということを知りたがっていると考察できるでしょう。
しかし考えても答えは出ず、「ミライがグチャグチャになっちゃった!」と混乱している様子が読み取れます。
喜びと警戒が入り交じる心
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回答
命日
ミックス
鑑みね
コテと
単純な音
ホントノ
≪ホントノ 歌詞より抜粋≫
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この部分ではこれまで登場してきたボーカロイドたちの名前を順に入れ込むことで、ボーカロイドの歴史を表現していると思われます。
「回答」と「命日」はボーカロイド文化の初期に誕生したKAITOとMEIKOを指しているようです。
続く「ミックス」と「鑑みね」はボーカロイドの名を大きく世界に広めた初音ミクと鏡音リン・レンのことでしょう。
「コテと」には「てと」という音が入っているため、重音テトのことを意味していると推察できるでしょう。
UTAU音源が公開されたのは鏡音リン・レンよりも後なので、この位置に含められています。
そして「単純な音」は“純音(じゅんおん)”から巡音ルカを表していることが分かりますね。
人間と機械として比べると“ニセモノ”であるボーカロイドたちの名前を挙げた後に「ホントノ」と歌われています。
人間ではなくても本当の存在として生きてきたのだ、というボーカロイドとしての誇りを示しているように感じるでしょう。
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ウケたりしたいな
天国だって芝居だ
アー
ニセモノしかない
全部ウソ
天国だった
~♪
毒にも
薬にも
なれない
はずだった
セカイが
ワタシに
着いてきちゃった!
アッチ行け!
≪ホントノ 歌詞より抜粋≫
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得ている人気を「ニセモノしかない全部ウソ」と思いつつも、その状況に幸せを感じていることが「天国」の言葉から明らかです。
元々は「毒にも薬にもなれない」存在だったのに、今はこうして歌うことを高く評価されています。
「セカイがワタシに着いてきちゃった! アッチ行け!」というフレーズは、『人マニア』で大きく注目され認知度が上がったことを示しているのでしょう。
突然周囲の反応が変化したことに戸惑い、注目されもてはやされたくないと感じているようです。
良い評価を受ける喜びと鵜呑みにしてはいけないという警戒心の狭間で揺れていると思われます。
ここからどのように気持ちが変化するのかは、今後のボカロ曲で表現されるのかもしれませんね。
原口沙輔×重音テトの楽曲から目が離せない!
原口沙輔の『ホントノ』はポップなメロディと怒涛の電子音が混ざり合う中毒性の高い楽曲です。MVに映し出されるリアルな景色とアニメーションの融合、そして人の手を体に見立てたいわゆる“手ト”のダンスといった独特な世界観に引き込まれるでしょう。
動画の最後には「またネ♭」と書かれているので、原口沙輔と重音テトの次回ボカロ作にも期待が高まります。