史上最も売れたクリスマスソングはどのように誕生した?
毎年世界中で様々な楽曲が誕生する中、史上最も売れたシングルとして長年君臨し続けているのが、1942年にリリースされたBing Crosby(ビング・クロスビー)の『White Christmas(ホワイトクリスマス)』です。
アメリカを代表する音楽家Irving Berlin(アーヴィング・バーリン)が作詞作曲した『ホワイトクリスマス』は、1935年に彼が音楽を担当したミュージカル映画『トップ・ハット(Top Hat)』の撮影中に生れました。
劇中歌の案として監督のMark Sandrich(マーク・サンドリッチ)に鼻歌を聴かせたものの、当時は残念ながら認められませんでした。
しかし1940年にBing Crosby、Fred Astaire(フレッド・アステア)主演のミュージカル映画『スイング・ホテル(Holiday Inn)』の音楽担当を務めた際に使用を許可され、映画公開直前にシングルが発売に。
そして映画が公開されると瞬く間に大ヒットを記録し、Billboardのポップ・チャート11週連続首位に輝くと共に、映画の挿入歌としてアカデミー歌曲賞を受賞しました。
さらに、1954年にはBing主演のミュージカル映画『ホワイトクリスマス』の主題歌として再びフィーチャーされ、世界中でカバーされるクリスマスソングの代表曲となったのです。
ではどのような歌詞なのか、改めて歌詞を和訳しながらそこに込められた意味を考察していきましょう。
かつて過ごしたホワイトクリスマスを思い出す
----------------
I'm dreaming of a white Christmas
Just like the ones
I used to know
≪White Christmas 歌詞より抜粋≫
----------------
冒頭の歌詞では「夢見ている ホワイトクリスマスを あの頃のように」と歌われています。
このことから今は雪の降らない街に住んでいる主人公が、子どもの頃楽しんでいた雪の降るクリスマスを待ち望んでいる様子が見えてきます。
この背景には作者であるIrvingの生い立ちが関係しているようです。
Irvingは5歳の時にベラルーシからニューヨークに移住しました。
ベラルーシは世界最北の内陸国で、12月には多くの雪が降る地域です。
そのためクリスマスにもよく雪が降り、いつもワクワクした気持ちでホワイトクリスマスを楽しみにしていたのでしょう。
しかし、移り住んだニューヨークではクリスマスに雪が降ることはほとんどありません。
大人になって人気の映画音楽家として名を馳せたIrvingは、忙しい生活の中でふと幼い頃の無垢な気持ちを思い出したのかもしれません。
この楽曲には郷愁の思いが込められていると解釈できます。
----------------
Where the tree tops glisten
And children listen
To hear sleigh bells in the snow
≪White Christmas 歌詞より抜粋≫
----------------
この部分は「梢は煌めき、子どもたちは耳を傾けて聞いていた 雪の中のそりの鈴の音を」と訳せるでしょう。
雪が積もった梢は太陽の光に照らされてキラキラと輝きます。
そして子どもたちは、雪の中を走っていくそりの鈴が鳴り響かせる音に耳を澄ませているようです。
何気ない景色と情景にスポットを当てることで、懐かしい記憶の中にあるホワイトクリスマスの特別感を際立たせているように感じます。
大切な人のクリスマスが幸せであってほしい
----------------
I'm dreaming of a white Christmas
With every
Christmas card I write
≪White Christmas 歌詞より抜粋≫
----------------
主人公は「クリスマスカードを書く度に」ホワイトクリスマスを夢見ています。
つまり、クリスマスを迎えるにあたって親しい人に向けて感謝や祝いの気持ちを伝えようとする時にはいつも、かつての記憶を思い出すということでしょう。
主人公にとってホワイトクリスマスは幸せの象徴なのかもしれません。
作者のIrvingはユダヤ教徒でしたが、この楽曲は1人のアメリカ人として作ったそうです。
多くの人たちのクリスマスを楽しむ気持ちをすくい上げ、そこに宿る家族の幸せや温かさ、大切な人を想う気持ちの素晴らしさが繊細に表現されています。
----------------
And may all be merry and bright
And may all your Christmases
be white the beguine
≪White Christmas 歌詞より抜粋≫
----------------
ラストの歌詞にはまさにそのようなイメージが表れています。
この部分は「あなたの毎日が楽しく輝き、クリスマスはいつも白くなりますように」と訳せるでしょう。
雪が降ると景色が美しく輝くように、大切な人の生きる日々がまばゆい輝きで満ちてほしいと願う優しいフレーズです。
クリスマスという日を取り上げながら、人生の末永い幸せを想う気持ちに心が温まりますね。
歴史に残る名曲を聴き続けよう!
Bing Crosbyが歌う『ホワイトクリスマス』は、ジャズのゆったりとした心地よいメロディと穏やかなメッセージが込められた愛を感じるクリスマスソングでした。洋楽・邦楽ともに毎年多くのクリスマスソングがリリースされますが、この楽曲はシンプルだからこそ全ての人の琴線に触れるのでしょう。
この先もクリスマスになると必ず聴きたい不朽の名曲です。