日テレ系・水曜ドラマ「母になる」主題歌
2017年5月31日にリリースされた安室奈美恵『Just You and I』。
代表曲『Can you celebrate?』と並んで、結婚式で使いたい邦楽として高い人気を誇っている1曲です。
もともと『Just You and I』は、沢尻エリカが主演を務める日本テレビの水曜ドラマ『母になる』の主題歌でした。
『母になる』は、生みの親と育ての親の人間模様をとおして「母親になること」や「家族になること」の本質を問うドラマです。
主題歌の起用に関して、安室奈美恵本人は「かけがえのない存在を想う無償の愛、そしてその愛から芽生える真の強さを歌いました」とコメントしています。
「愛」と「強さ」が重要なテーマである『Just You and I』。
ここでは、その歌詞の意味をじっくり考えてみましょう。
子を産んだ母親の愛
まずは1番の歌詞です。
1番は「生みの親」の心情を描いていると解釈できます。
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星のない世界に たったひとつ真実を
見つけたの 君の手に触れた日
柔らかな愛に そっと包まれていた
Just you and I ふたりで
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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「星のない世界に たったひとつの真実を見つけたの」。
子どもを産む前の不安や緊張、そして産後にあふれ出す母性がイメージできますね。
小さな小さな我が子の手に触れ、これからふたりで成長していくのだと実感しているように読み取れます。
続きの歌詞はこちらです。
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(Half of me just disappeared)
心が灼けるような 空白を
君のほかには 埋められない
I believe in love
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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ドラマ『母になる』では、3歳の息子が誘拐され、9年の月日を経て生みの親のもとへ再び現れます。
「Half of me just disappeared(私の半分がパッと消えた)」や「心が灼(や)けるような空白」といった歌詞は、子が突然いなくなった喪失感を表しているのでしょう。
また、離れ離れになっていっそう「愛を信じたい」という気持ちが強くなっていることも読み取れますね。
続くサビの歌詞はこちらです。
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君を抱きしめる時間を
君と生きていく未来を
信じていたい Days of delight
永遠に変わるまで
君を抱きしめられないなら
私の両手に意味はない
What we got is true love
愛を この腕に
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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「君を抱きしめられないなら 私の両手に意味はない」。
はじめて我が子を抱きかかえたときの温もりにこそ、真実の愛(true love)がある。
子どもの喪失のことも考えると、この温もりがずっと感じられる日々を「信じていたい」という気持ちも切実に響いてきます。
子を育てる母親の愛
続いて、2番以降の歌詞を見ていきましょう。
2番は「育ての親」の視点で解釈することができそうです。
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平穏な日々に ありふれた煌めきが
眩しくて いつも目を伏せてた
ずっと遠くまで そう疑わなかった
Just you and I ふたりで
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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平穏な日々にある「ありふれた煌(きら)めき」とは、親子が手をつないで歩いていたり、公園で遊んでいたりする風景のことでしょうか。
母親になりたいという思いがあっても、事情があって叶わない人もたくさんいます。
そのような人にとって、ありふれた親子の日常風景は眩しすぎるものなのかもしれません。
疑うことのなかった「ずっと遠くまで」とは、このまま一人だけで長い人生を歩んでいくという直感のことだと解釈できそうです。
しかし末尾は「Just you and I ふたりで」。
子どもを引き取ったことで人生が大きく変わったことがうかがえますね。
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(We always find a way)
手に入れたいものは 何もない
君のためなら 強くなれる
I believe in love
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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「We always find a way(いつだって方法はある)」は、ここでは「子を産まなくても母親になれる」というような意味合いでしょうか。
続く「手に入れたいものは何もない」というフレーズからは、君さえいてくれたら何もいらないという「子のかけがえのなさ」が伝わってきます。
生みの親でなくても、自分がこの子の母親であると胸を張って言えるようになる。
その強さに、1番とはまた違った「愛」が読み取れますね。
続くサビの歌詞はこちらです。
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君を愛してる時間は
君を抱きしめる想いは
色褪せない Shining so bright
永遠に変わるまで
君を愛せない未来なら
私の明日に意味はない
What we got is true love
すべて この胸に
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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「君」と出会えたことで明るく輝いた日常。
そして「君を愛せない未来なら 私の明日に意味はない」。
子どもと一緒に過ごす時間にこそ「真実の愛」があるということでしょうか。
子に恵まれなかった「私」にとっては、ふたりの時間はいっそう尊い「愛」の結晶なのかもしれませんね。
続いて、終盤の歌詞を見てみましょう。
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君を抱きしめる時間を
('Cause you're the only one, you're the only one I want)
君と生きていく未来を
君を抱きしめる時間を
('Cause you're the only one, you're the only one…)
君と生きていく未来を
Stop everything ここから
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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ここからは「生みの親」と「育ての親」の両方の視点で読むことができそうです。
「'Cause you're the only one(君は私にとって唯一無二の存在だから)」というフレーズからは、愛情や希望があふれている様子が伝わってきますね。
子を産んだ人も、育てる人も、どちらも一人の母親になる。
「Stop everything ここから」は、すべてが変わって新しい人生が始まる、それこそ「母になる」という1つの始まりを予感させます。
最後のサビは1番と同様です。
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君を抱きしめる時間を
君と生きていく未来を
信じていたい Days of delight
永遠に変わるまで
君を抱きしめられないなら
私の両手に意味はない
What we got is true love
愛を この腕に
≪Just You and I 歌詞より抜粋≫
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“我が子”と一緒に過ごす時間、ともに歩み、成長していく将来。
それらと温かな「愛」を胸に歩んでいく人生は、紛れもない親子の人生です。
「産む」や「育てる」にとらわれない、ただふたりが存在すること(=Just You and I)にこそ「母になる」ことの本質があるように思えてきます。
「無償の愛」と「真の強さ」
今回は、安室奈美恵『Just You and I』の歌詞の意味を考察しました。ドラマ『母になる』の主題歌ということもあり、子に対する母親の愛が強く伝わってくる歌詞でしたね。
「生みの親」と「育ての親」の2つの視点を想定できる点も、歌詞の味わいをグッと深めるポイントだったように思えます。
とはいえ「無償の愛」や「真の強さ」といったテーマは普遍的なものです。
母と子にかぎらず、自分自身の大切な誰かを思い浮かべて聴くことでも曲の感じ方は変わってくるでしょう。
ぜひそれぞれの『Just You and I』に思いを馳せてみてくださいね。