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ネイサン・エヴァンズ「ウェラーマン」歌詞の意味は?TikTokで話題となった船乗りたちの労働歌を考察!

2020年から2021年にかけてTikTokで一大ブームを巻き起こしたネイサン・エヴァンズが歌う『ウェラーマン』は、船乗りが歌う伝統的な労働歌の1つです。捕鯨船とクジラの戦いを描いた歌詞の意味を紐解きます。

郵便局員の青年を歌手に押し上げた話題のシー・シャンティーを徹底解釈!


2020年末、スコットランド出身の郵便局員ネイサン・エヴァンズ(Nathan Evans)がTikTokに投稿した『ウェラーマン(Wellerman)』のカバー動画が反響を呼び、大流行しました。

『ウェラーマン』という楽曲は1860年頃にニュージーランドで誕生したもので、19世紀当時の伝統的な船乗りの労働歌「シー・シャンティ」の代表曲です。

ネイサンのカバーで広まると民謡の分かりやすいリズムと歌詞が人気となり、世界中の多くのユーザーがハモりを加えていく動画やアップテンポバージョンを投稿するなど、バイラルヒットを記録。

また、オリジナルバージョンとダンスリミックスバージョンをリリースすると、Spotify Global Viral50チャートで同時に1、2位を独占。

その結果、元々YouTubeやSNSでギター演奏やカバー動画を投稿していたネイサンが、メジャー契約をきっかけに郵便局員を退職するというサクセスストーリーも話題を集めました。

そのようにしてこの21世紀に再び注目を集めた『ウェラーマン』ですが、タイトルであり歌詞にも度々登場するウェラーマンとは、ニュージーランドで捕鯨船に食糧を供給していたウェラー兄弟の補給船で働く人たちのことを指しています。

しかし曲の主人公はウェラーマンではなく、捕鯨船の乗組員たちのようです。

どのような歌詞なのか、英語詞を和訳しながら歌詞の意味を考察していきましょう。

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There once was a ship that put to sea
The name of the ship was the Billy of Tea
The winds blew up, her bow dipped down
Oh blow, my bully boys, blow (huh)
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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冒頭は「その昔、一隻の船が海へ出た」という一節から始まり、「その船の名はBilly of Tea(ビリー・オ・ティー)」であることが紹介されます。

続く歌詞には「風が吹き荒れて船首が沈んだ」ともあり、荒々しい海に乗り出しているさまがイメージできるでしょう。

乗組員たちは勇ましく強い風に「さあ吹け、いじめっ子、吹いてみろ」と挑発さえして、この仕事を楽しんでいることが伝わってきます

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She'd not been two weeks from shore
When down on her a right whale bore
The captain called all hands and swore
He'd take that whale in tow (huh)
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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ここで出てくる「She/her」と「He」はどちらも自分たちの船のことを表しています。

その点をふまえると、前半は「沖に出て2週間も経たない頃、船はミナミセミクジラに襲われた」と訳せるでしょう。

ちなみにミナミセミクジラが「right whale」と呼ばれているのは、泳ぎが遅い上に体脂肪分が豊富で死んだ後でも水に浮かんでいることから、捕鯨する漁師にとって「right(最適)」だったことに由来しているそうです。

そんなミナミセミクジラとの対面に「船長は総員を集めて誓った 必ずあのクジラを仕留めると」と歌っており、務めを果たす絶好の舞台を前に船長が皆の士気を高めようとしている様子が見えてきます。

捕鯨船とクジラの長きにわたる攻防戦


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Before the boat had hit the water
The whale's tail came up and caught her
All hands to the side, harpooned and fought her
When she dived down low (huh)
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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しかしそんな彼らを嘲笑うかのように「ボートが着水する前にクジラの尻尾が船を襲った」とあります。

この前半に出てくる「she」は船のことですが、後半ではクジラのことを指して使われているようです

彼らは「全員が銛(もり)で戦った」ものの「クジラは深く潜っていった」ため、一筋縄ではいきません。

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No line was cut, no whale was freed
The captain's mind was not of greed
And he belonged to the Whaleman's creed
She took that ship in tow (huh)
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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戦う彼らの「銛のロープは切れず、クジラを放さない」ように必死です。

そして彼らを指揮する「船長の心に欲はなく、あるのはウェールマンの信念だ」と歌っています。

船長がクジラと戦うのは自分の欲のためではなく、捕鯨船を任されている船長としての誇りのためであることが表現されている歌詞です。

それでも「クジラは船を引っ張っていく」ので、捕鯨船とクジラの戦いはまだ続きます。

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For forty days or even more
The line went slack then tight once more
All boats were lost, there were only four
But still that whale did go (huh)
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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「40日がそれ以上、ロープは緩んではまた締まった」とあることから、1ヶ月半もの間戦い続けたことが分かります。

その間に共に戦った「多くの船を失い、残りはたったの4隻」。

長い戦いによって疲弊しているだけでなく、戦力も残りわずかで絶体絶命の状況です。

しかし「それでもクジラは進み続けた」ため、彼らは戦い続けなくてはなりません。

彼らが戦い続ける原動力は?


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As far as I've heard, the fight's still on
The line's not cut, and the whale's not gone
The Wellerman makes his regular call
To encourage the captain, crew and all (huh)
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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この部分では、歌っているのは乗組員ではないようです。

一文目で「As far as I've heard(聞く限りでは)」とあるため、彼らの帰りを待つ土地の人たちが歌っているところと考察できます。

その人たちは「聞く限りでは、戦いはまだ続いている」と歌います。

数ヶ月に及ぶ戦いの中でも「ロープは切られていないし、クジラもいなくなってない」とのこと。

そして「ウェラーマンは定期的に連絡を入れて船長や船員皆を鼓舞している」とも歌っています。

残り少なくなった仲間と共に戦う彼らの過酷な状況に、きっと土地の人々も応援と不安の気持ちを抱えながら彼らの帰りを待っていたことでしょう。

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Soon may the Wellerman come
To bring us sugar and tea and rum
One day, when the tonguing is done
We'll take our leave and go
≪ウェラーマン 歌詞より抜粋≫
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最後に、繰り返されるコーラス部分の歌詞を見てみましょう。

乗組員たちは「もうすぐウェラーマンが来てくれる 砂糖と紅茶とラム酒を持って」と歌っています。

当時、彼らのような湾内捕鯨基地の労働者たちには金銭での賃金は支払われておらず、代わりに既製服や酒などが与えられていたようです。

そのため、「砂糖と紅茶とラム酒」のような贅沢品が支給されることを仕事の楽しみとしていたのでしょう。

後半には「クジラの解体が終わったら 休みをとっておさらばさ」とあり、過酷な労働の後に思う存分休みを謳歌しようと予定していることが分かります。

楽曲全体を通して繰り返しこの歌詞が歌われていることを考えると、捕鯨船の乗組員たちはいつもウェラーマンが届けてくれる物資とその後の休息を楽しみにしながら、過酷な仕事を乗り切っていたことが窺えます。

それと同時に彼の願いとは裏腹に、連絡を寄越すだけでいつまで経ってもウェラーマンはやって来ず、ただひたすら耐える日々を送る苦しい現実も見えてくるでしょう。

現代のように十分な通信手段がなかった時代に、海の真ん中で必死に生きる彼らには本当に連絡や助けが与えられたのでしょうか?

真相は分かりませんが、どんな時にも希望を持って目の前の仕事をやり遂げようとする船乗りたちのたくましい生き様が感じられます。

19世紀の海で歌われた労働歌の情熱を感じよう!

ネイサン・エヴァンズのカバーによってスポットを浴びた『ウェラーマン』は「海賊の歌」というイメージがついていますが、実際は船長や船員が一致団結するために歌っていたとされる力強い労働歌でした。

捕鯨船というなじみのない職種の人の歌ではあるものの、その土地ならではの空気やその時代の特色が反映されている興味深い楽曲です。

多くの人にシー・シャンティの魅力を広めたネイサン・エヴァンズの歌声と共に、歌詞に込められた船乗りたちの情熱を感じてください。

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