独自の世界観とミックスボイスで魅了
わずか15歳という若さで歌手デビューを果たした、シンガーソングライター・宇多田ヒカル。音楽好きのファンの間では「ヒッキー」の愛称で親しまれています。
多様性と独創性の高い歌詞、R&Bや要素が強いサウンド。
さらには、美しいミックスボイスで多くのファンの心を掴み、平成の歌姫として一世を風靡しました。
今回は、1998年12月9日に発売された『Automtic』の歌詞の意味を考察していきます。
今作は宇多田のデビュー曲で、15歳とは思えない歌唱力の高さや独特な世界観が話題となり、日本レコード大賞・最優秀賞を受賞した平成の大ヒットソングです。
また、フジテレビのバラエティ番組「笑う犬の生活-YARANEVA!!」のエンディングテーマにも抜擢されました。
歌詞にどのような意味が込められているのか、早速紐解いていきましょう。
恋する感情のメカニズム
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七回目のベルで受話器を取った君
名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる
唇から自然とこぼれ落ちるメロディー
でも言葉を失った瞬間が 一番幸せ
≪Automatic 歌詞より抜粋≫
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「七回目のベル」「受話器」といったキーワードから、固定電話で連絡を取り合っている様子を表現しています。
現代の連絡手段はスマホが主流ですが、1990年代は携帯電話の普及が始まったばかりで、多くの人が固定電話で連絡を取り合っていました。
また、当時の固定電話は発信者の名前が表示されなかったため「誰からだろう?」と、電話を取る前にドキドキわくわくした方もいるのではないでしょうか。
「名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる」といった点に、大きな喜びを感じている様子がうかがえます。
お互いにとって親密な関係なのが伝わってきますね。
また「唇から自然とこぼれ落ちるメロディー」を会話のリズムとし、「言葉を失った瞬間」を沈黙と表現していると考えられます。
会話中はもちろん、沈黙の時間も心地よいものだと感じ、相手を愛おしく思っている様子がひしひしと伝わってきますね。
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It's automatic
側にいるだけで その目に見つめられるだけで
ドキドキ止まらない Noとは言えない
≪Automatic 歌詞より抜粋≫
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曲名の『Automatic』は「自動的な・無意識に」という意味です。
このフレーズでは、自然と身体が反応して「あなたに見つめられるとドキドキが止まらない」といった、恋する感情のメカニズムを唱えているように思います。
「Noとは言えない」は、相手を想う気持ちが増し、気持ちが高まっている様子がうかがえますね。
まさに恋焦がれるという言葉がぴったりではないでしょうか。
あえて「語らない」愛情表現
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あいまいな態度がまだ不安にさせるから
こんなにほれてることは もう少し秘密にしておくよ
やさしさがつらかった日も
いつも本当のことを言ってくれた
ひとりじゃ泣けない rainy days
指輪をさわれば ほらね sun will shine
≪Automatic 歌詞より抜粋≫
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相手の「あいまいな態度」に心をかき乱され、相手を想う気持ちは本物だけれど、その感情をあえて語らない。
大人になろうとしているけれど幼さが残っている、あどけなさが可愛いですね。
「やさしさが辛かった」とは、おそらく相手に恋愛感情があるのか分からないまま、電話や会う時間を作ってくれた「やさしさ」を表しているのではないでしょうか。
そのやさしさが思わせぶりだと深読みしてしまう、そんな複雑な恋心が伝わってきますね。
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It's automatic
側にいるだけで 愛しいなんて思わない
ただ必要なだけ 淋しいからじゃない
I just need you (Oh Yeah)
≪Automatic 歌詞より抜粋≫
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「側にいるだけで愛しいなんて思わない」に込められた思いは、会う回数が多いから好きになったのではなく、心の繋がりを感じるから好きなんだと訴えているのでしょう。
また、淋しさを埋めるためではなく「わたしにとってあなたの存在が必要」だから側にいたい。
素直に伝えるのは恥ずかしいけれど、相手を想う気持ちは本物であると解釈しました。
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It's automatic
抱きしめられると 君とparadiseにいるみたい
キラキラまぶしくて
≪Automatic 歌詞より抜粋≫
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相手に抱きしめられた幸せな感情を「キラキラ」と表現しており、この上ない幸せを感じている様子が伝わってきます。
一つひとつの感情を言葉にして表さず、オノマトペ(擬態語)で表現するのも想像力を掻き立てられて面白いですね。
きっと無意識に聴きたくなる至高のラブソング
今回は、宇多田ヒカル『Automatic』の歌詞の意味を考察しました。恋愛は自分の思い通りにならないことが多いですが、それ以上に楽しさや嬉しさを無意識に感じられるでしょう。
誰かを好きになった経験がある人なら共感できるところが多く、きっと心に響くでしょう。
1990年代のエモーショナルな雰囲気も感じられるので、少しでも気になった人は歌詞に注目しながら聴いてみてくださいね!