てるてる坊主の由来とは
てるてる坊主の「てる」は「照る」という字があてがわれ「照る照る坊主」と表記されます。
「翌日の晴天を願う」もので日本の風習の一つとされ、白い布や紙、ティッシュペーパーなどで作った人形を軒先に吊るし、次の日が晴れることを願います。
幼少の頃、運動会や遠足などのイベントごとの前日にお願いをした記憶があるのではないでしょうか。
----------------
てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
≪てるてる坊主 歌詞より抜粋≫
----------------
童謡『てるてる坊主』は浅原鏡村と中山晋平によって大正時代に発表され、その後教科書にも掲載されるようになりました。
現在『てるてる坊主』は3番までありますが、全て同じフレーズから歌が始まります。
いわゆるサビが最初にくる形ですが、それが繰り返されるためとても耳に残りやすいです。
「てるてる坊主さん、頼むから明日天気にしておくれよ!」と子どもが一生懸命懇願している様が目に浮かびますね。
てるてる坊主は平安時代頃に中国から伝わってきたそうですが、当時中国では坊主ではなく女の子だったそうで、日本では坊主(坊さん)になったとか。
これは坊主の方が願いを叶える力が強いとされることからそうなったと言われているそうです。
たしかに、お坊さんの方が雨雲を飛ばしてしまいそうな何か見えない力を持っていそうですよね。
知恵を使って願いをする、等価交換を試みる子どもたち
----------------
てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
いつかの夢の 空のよに
晴れたら金の鈴あげよ
てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
私の願を 聞いたなら
あまいお酒を たんと飲ましょ
≪てるてる坊主 歌詞より抜粋≫
----------------
1番・2番の歌詞では「自分の願いを叶えたならば、ご褒美をあげるよ」と言っています。
実際風習でも、次の日が晴天になるとてるてる坊主に御神酒を注いでいたようです。
子どもたちは「金の鈴」や「あまいお酒」がてるてる坊主にとって自分達の願いと同等のご褒美だと思い、それを引き合いに出して願いごとをしているのが伺えます。
子どもならではの正直なお願いの仕方ですね。
幻の1番の存在
----------------
てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
それでも曇って 泣いたなら
そなたの首を チョンと切るぞ
≪てるてる坊主 歌詞より抜粋≫
----------------
今までの歌詞では、子どもがご褒美を用意してお願いをしている様子が微笑ましかったのにも関わらず、ここにきて一気に不穏な空気を感じます。
3番では「晴れなかったら、てるてる坊主の首をチョンと切る」と脅しをかけています。
チョンと切ると言うことは、少し切るのではなく人形の首と胴体が完全に切り離されるような状態にするという意味だと思われます。
ここまで言うということは、それだけ子どもにとって「絶対的な願い」=「叶えてもらわないとならない理由」があったのではないか、「願い」というより「懇願」に近い状態だったのではないかと推測できます。
また、実は『てるてる坊主』は発表当初は全部で4番まで存在していました。
ですがのちに1番が削除され、全部で3番で構成される曲になりました。
幻の1番というのが「てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ もしも曇って泣いてたら 空をながめてみんな泣こう」という歌詞でした。
なんだかこちらの方が優しさが詰まっていていわゆる一般的にいう「子どもらしさ」があるように感じました。
なぜ、本来あった優しさが溢れる1番は削除され、今の3番はそのまま存在するのか。
謎は深まるばかりです。
大人への警告
改めて『てるてる坊主』の歌詞をじっくりと読んで感じたことは、いわゆる私たち大人が表現する「子どもらしさ」は本来の子どもたちをきちんとみていない証拠なのではないかということです。3番の歌詞のように、子どもが秘めている残酷さ、そしてそれをストレートに表現してしまうのも子どもならでは、を私たち大人は見ないふりをしているのではないかと。
善悪のついていない子どもに願いが叶わなかったからと言って誰かの(それがたとえてるてる坊主という人形であろうと)首をチョンと切るような行為はさせてはいけない。
ある意味、大人への戒めも含めた歌なのではないでしょうか。