中島健人×キタニタツヤのコラボユニット「GEMN」が話題!
2024年7月3日放送開始のTVアニメ『【推しの子】』第2期のオープニング主題歌は、新たに結成されたユニット・GEMN(ジェム)が歌う『ファタール』です。
当初GEMNの正体は隠されていましたが、6月30日開催の第2期第1話先行会にて中島健人とキタニタツヤによるユニットであることが明らかになりました。
ユニット名の「GEMN」の由来はまだ明らかにされていません。
とはいえ、『【推しの子】』のメインキャラクターであるアクアとルビーの関係を示す「双子」を意味するラテン語の「GEMINI(ジェミニ)」から、亡くなった母親の星野アイの名前とリンクする“I(アイ)”を抜いたものだと考えられます。
また、キャラクターの名前が宝石にちなんでいるため、宝石を意味する英語の「GEM(ジェム)」にかけているとも考えられます。
これは音楽界で輝き存在感を放つアーティストである彼らの姿とも重なりますね。
今作のタイトルの「ファタール(fatale)」は、フランス語で「宿命的・致命的」を意味する言葉です。
原作漫画の読者で作詞作曲を担当したキタニタツヤは、この楽曲を「人生を狂わせてくれたものへのラブソング」として作ったと語っています。
どのような内容なのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
大切な存在を失った深い喪失感
----------------
また夢から覚める、濡れた瞼を開ける
狂おしいほど思い残す、遠い日の無力さを呪う
身を焼かれるような絶望も糧にはなろうか
憧れに焦がれるまま燃やし続けている
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
冒頭の歌詞から、大切な存在を失った人の切ない心情が描かれています。
主人公は失った日のことを夢で見て、涙を流して目を覚ます日々を送っているようです。
当時の自分の「無力さ」を思い出すたびに「狂おしいほど」の感情があふれ出し、自分を呪っています。
しかしもう取り戻せないことは分かっているため、この「身を焼かれるような絶望」を糧にして前進しようともしていることが伝わってきます。
その人への愛や情熱を「憧れに焦がれるまま燃やし続けている」主人公の深い感情が読み取れますね。
----------------
キラキラお星様宿したあなたのeyes
カラカラ渇いて可哀想なlack of 愛?
全てを孤独から救う眩しい光
僕にだけ落ちる影はあなたのせい?
致命的な欠落をくれたね
身勝手な巨星、狂わされた生
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
主人公は、星を宿したように煌めくその瞳をもう二度と見ることはできません。
「lack of」は「不足している」という意味のため、「lack of 愛?」は「愛が不足している?」という意味だと分かります。
愛する人の喪失によって心が渇き、可哀想なほど愛が不足している状態を示しているようです。
その人は自分の「全てを孤独から救う眩しい光」だったはずなのに、今や悲しみと苦しみに苛まれて人生に陰りが生じています。
それで「あなたのせい?」と愛したことを後悔しそうになっていると解釈できます。
「身勝手な巨星、狂わされた生」のフレーズは、推しという愛する存在が生き方になるほど心を奪われた経験がある人にとって深く共感できるフレーズなのではないでしょうか?
それは人生における「致命的な欠落」だと感じてはいますが、「くれたね」と続けている点からするとそれすら推しと自分を繋ぐ大切なものだと思っていることが読み取れます。
----------------
お願い、声を聞かせて、声を聞かせて
絡まって歪んでしまった傷さえ
くれたのはあなただけ、あなただけ
お願い、僕を見ていて、僕を見ていて
宿命に刻まれた痛みさえ武器にして
いつかの後悔すら照らせるように
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
この部分では、主人公の悲痛な叫びが綴られています。
「絡まって歪んでしまった傷」はその人を愛したからこそ生まれたものだから、それを勲章のように思っていることが窺えますね。
そして同時に、愛するからこそ「僕だけを見ていて」とも願ってしまいます。
もし愛する存在がいない世界で生きることが「宿命」なのであれば心の痛みさえ自分の武器にして歩み、失った時に味わった「いつかの後悔すら照らせるように」今の自分を輝かせようとする強さが感じ取れるでしょう。
人生を狂わされるほどの致命的な愛
----------------
あなたがいないと生きていけない
何もかも捧げてしまってもいい
あなたの愛がまだ足らない
欠けたものは何で埋めたらいい?
致命的、致命的、致命的な愛
運命的、運命的、運命的なI
必然的、必然的、必然的な哀
僕を見ていてね、最愛のファタール!
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
「あなたがいないと生きていけない 何もかも捧げてしまってもいい」という熱烈な言葉から、狂おしいほどの愛を抱いていることが読み取れます。
しかし自分がどんなに愛を捧げてもその人はいないため、「あなたの愛がまだ足らない」状態です。
心の欠けた部分を代わりに埋められるものがあればいいですが、そんなにも深く愛せる存在はそう簡単に現れるものではありません。
それは人生を左右するほどの「致命的な愛」です。
さらに、自分がこの生き方を選ぶことは運命によって定められていると確信できるという意味で「運命的なI(僕)」とも言えます。
そして、出会いがあれば必ず別れがあるという世の理を「必然的な哀」のフレーズで示しているでしょう。
主人公はその人のことを「最愛のファタール」と呼び、どんなに振り回されても出会うべくして出会った愛する存在と見ていることが伝わってきます。
----------------
遥か彼方から放たれた美しさに
灼かれた眼、もがれた羽根、創造的堕天
あらゆる視界をジャック
その輝きはエゴイスティック
胸の奥仕舞った感情さえ
引っ張り出して昇華して
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
その人は生きる世界が違い、圧倒的な存在感を放っています。
あまりの美しさに出会ったことで、天使が眼も羽根も失い堕天するように自分自身が変化していくのを感じたのでしょう。
一度魅力を知ってしまえば吸い寄せられるようにその人を見つけてしまう様子は、まさに「あらゆる視界をジャック」されているかのよう。
過去の出来事で一度は何かを愛することをやめていたとしても、愛さずにはいられないほどの輝きを放つその人を「エゴイスティック(自分勝手)」だと感じています。
ただ一つのアイに近づきたい
----------------
僕という運命を全部抱きしめていく
あなたがいないと生きていけない
眩しさでこの身を照らして欲しい
あなたの愛がまだ足らない
夢の中でもらうしかないのに
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
こんなにも愛してやまないから、主人公はこの愛に身を焦がす「僕という運命を全部抱きしめていく」ことを決めました。
どんなに傷ついても「あなたがいないと生きていけない」ことは分かっているからです。
だから、いつまでも自分の希望となって「眩しさでこの身を照らして欲しい」と願います。
もう会えるのは「夢の中」だけなのに愛せば愛すほど愛を渇望するジレンマの中で、懸命に生きようとしている姿が垣間見えます。
----------------
何度悔やんだだろう
何度呪っただろう
どれほどの幸福を注いだとしても
満たされることのない器
何度夢見ただろう
何度願っただろう
僕の胸で膿み続けている傷を撫でる手を
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
しかし自分の人生を受け入れられるようになるまでには、何度も自分自身や運命を悔んだり呪ったりしてきました。
「どれほどの幸福を注いだとしても満たされることのない器」という言葉から、愛に飢え満たされない心への苦悩が感じられますね。
その人が再び現れて自分の傷を癒してくれたらいいのにと、決して叶わない願いが繰り返し浮かびます。
----------------
この舞台で足掻くことをやめない
ただ一つのアイに近づきたい
固く定まったこの宿命
あの星の光からこぼれた闇
≪ファタール 歌詞より抜粋≫
----------------
主人公は前を向くことを決めたため、「この舞台で足掻くことをやめない」と宣言しています。
「ただ一つのアイに近づきたい」というフレーズの「アイ」は、作品のストーリーと重ねると星野アイと彼女のアイドルとして輝く瞳のことを指していると解釈できるでしょう。
さらにここまでの歌詞に出てきた言葉をふまえると、自分を満たしてくれる本当の「愛」やほかの誰でもない「I(僕)」をこの人生で見つけたいと言っているようにも思えます。
「宿命」とは、前世から定まっている避けることも変えることもできない運命のこと。
その人を愛したことも愛によって人生を狂わされたことも宿命です。
この狂った人生は「光からこぼれた闇」のようにひとりでに輝きはしないものの、光がいるから今の自分がいるのなら本望だと思っているのでしょう。
熱狂的な想いの奥底に根づく純粋で壮大な愛に心が揺さぶられます。
推しへの想いにあふれた熱烈なラブソング!
GEMNの「ファタール」は、逃れられない愛に苦しみながらもその唯一無二の気持ちを尊く想う主人公の姿が描かれていました。これはファンにとっての推しやアーティストにとっての音楽など、愛する存在が心にある人ならきっと共感できる感情です。
作品とのリンクを感じながら、ぜひそれぞれ自分の想いと重ねて聴いてみてくださいね。