間違ったルールを押しつける人たちへの訴え
2024年7月5日に配信リリースを開始したAdoの『ルル(RuLe)』は、山田涼介主演ドラマ『ビリオン×スクール』の主題歌です。ボカロPのMARETUからの提供曲で、重厚で激しいサウンドとAdoの歌声の変化に引き込まれる力みなぎるエネルギッシュな楽曲に仕上がっています。
タイトルの「ルル」はMVのタイトルでは「RuLe」と表記されており、“ルール(rule)”を意味していることが分かりますね。
矛盾だらけの世の中のルールに反旗を翻すドラマと楽曲のテーマに沿ったストーリーが展開されるMVは、さまざまな楽曲を歌ってきたAdo史上最も強烈な作品となっています。
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ちゃっちゃっちゃちゃ、なななななー
ちゃちゃっちゃっちゃちゃ、なななななー
ちゃちゃっちゃっちゃちゃ、なななななー
ちゃちゃっちゃっちゃちゃ、なななななー
≪ルル 歌詞より抜粋≫
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間奏部分には「ちゃっちゃっちゃちゃ なななななー」と陽気な雰囲気の歌詞がつけられています。
声色も、これまでのAdoの楽曲とはイメージの違うかわいらしい高音が中心となっているのが印象的です。
ここから歌詞がどう展開していくのか、期待が高まりますね。
どのようなメッセージが込められているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
腐り歪んだルールにはサヨナラ
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降りろ 降りろ
むしろ落っこちろ
“お前”はお呼びではない
閉じろ 閉じろ
その口 閉じろ
助言など頼んではいない
降りろ 降りろ
今すぐ 降りろ
“お前”に指揮権はない
どけよ どけよ
いやらしい通せんぼ
どかぬなら出すぞチェーンソー
≪ルル 歌詞より抜粋≫
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この部分では、矛盾したルールを押しつけようとする人たちにこの舞台から「降りろ むしろ落っこちろ」と過激に挑発しています。
そして「助言など頼んではいない」と退け、不必要な助言を振りかざす人に敵対していることが窺えるでしょう。
法律や交通ルールのように誰もが守るべきルールがありますが、ある人たちは自己流のルールで人を指揮しようとし、そのルールからはみ出ている人に圧力をかけます。
それはまるで「いやらしい通せんぼ」で行く手を阻んでいるかのようです。
そんな人たちに対し、「どかぬなら出すぞチェーンソー」と実力行使に出ることも厭わないことを示しています。
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その分厚く肥ったルールブックはお前自前の妄想
その恩着せがましいお説教は鏡に向かってどうぞ
その無様に狂ったルールブックをすぐに他人に強要
その矛盾だらけの不純な行動基準、手放せ
≪ルル 歌詞より抜粋≫
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それらの人たちは「分厚く肥ったルールブック」を持っていますが、その内容はすべて「自前の妄想」。
しかもその独自のルールに則って「恩着せがましいお説教」をしながらも、自分の振る舞いには甘いようです。
そして「その無様に狂ったルールブックをすぐに他人に強要」するため、主人公は「矛盾だらけの不純な行動基準」が理解できず、そんなものは「手放せ」と命令します。
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サヨナラ
サヨナラ
サヨナラ
腐ったルール、ルール、ルール
サヨナラ
サヨナラ
サヨナラ
歪んだルール、ルール、ルール
ごみはごみばこ
くずはくずかごへどうぞ
≪ルル 歌詞より抜粋≫
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この楽曲ではルールそのものに異議を唱えているわけではありません。
「腐ったルール」や「歪んだルール」に「サヨナラ」すべきだと訴えているのです。
そして「ごみはごみばこ」が行くべき場所であるように、くずのような人たちも同じように生きる人たちで群れていればいいと言っているように思えます。
投げかける意見も実はマイルール?
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降りろ 降りろ
この船 降りろ
“お前”は害悪でしかない
閉じろ 閉じろ
その口 閉じろ
助言など頼んではいない
落ちろ 落ちろ
地獄に堕ちろ
“お前”にもう居場所はない
失せろ 失せろ
いじらしい通せんぼ
失せぬなら撃つぞヘッドショット
≪ルル 歌詞より抜粋≫
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主人公は「害悪」にしかならない存在とは船を共にしたくないと思い、「この船 降りろ」と指示しています。
ためにならない助言に飽き飽きして、相手に「その口 閉じろ」と言いたくなった経験は誰しもあるかもしれません。
主人公は過激な思考の持ち主で、「地獄に堕ちろ」とまで訴えています。
さらに「失せぬなら撃つぞヘッドショット」とまで言っていて、明確な殺意を抱くまでにいら立っていることが読み取れます。
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その肥大化しきったルールブックはお前自前の空想
その非難と言う名の自己開示は鏡に向かってどうぞ
その無様に描いたルールブックをすぐに他人に強要
その矛盾だらけの不純な行動基準、見直せ
≪ルル 歌詞より抜粋≫
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幅広い世代がSNSを使っている現代では、誰かの行動を厳しく「非難」するコメントが行き交うのが日常茶飯事です。
しかしそれは本当にその出来事や相手を悪いと思っているというよりは、非難することで自分の考えを明らかにし自己顕示欲を満たしているだけなのではないでしょうか。
主人公はそんな無価値な意見なんて聞きたくないから「鏡に向かってどうぞ」と吐き捨てます。
また、今の自分の振る舞いを捨てられないならそれがいかに矛盾したおかしなものか「見直せ」と力強く訴えています。
とはいえMVを見るとこうした意見を主張する主人公はベビーベッドの中にいて、おしゃぶりのような形のチェーンソーを振り回している小さな子どものようです。
つまり言葉では間違ったルールに反発しているものの、それすら大人たちが作った安全圏の中だからこそできていることであり、自分のルールを押しつけているだけだという裏のメッセージが伝わってきます。
タイトルが“ルール”をもじったものであることも、人の見方はさまざまで見る視点によって幅広い思考が生まれることを示しているのではないでしょうか。
矛盾した世の中を変えるにはもっと大きな変化が必要で、言葉で訴えるだけでなく安全圏から飛び出す勇気と行動力を持たなくてはならないことを教えてくれる気がします。
さまざまな視点で歌詞を読み解こう!
Adoの『ルル』は、間違ったルールが横行する世の中への反骨精神がありありと表現されていました。ただし「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがあるように、誰かの振る舞いや意見をおかしいと思うのであれば自分の言動も振り返ってみる必要があることも考えさせられます。
ドラマのストーリーを楽しむとともに、楽曲そのものに込められた思いも感じ取ってくださいね。