逃げることに焦点を当てた歌詞に注目
2024年9月4日リリースのDISH//の『プランA』は、TVアニメ『逃げ上手の若君』オープニング主題歌として書き下ろされました。『逃げ上手の若君』は『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』の松井優征の漫画を原作にしたアニメで、足利高氏の謀反により全てを失った幕府の正統後継者・北条時行の生涯を描く逃亡譚です。
そのオープニングを飾る『プランA』ではメンバー全員が作曲に携わっており、和や祭りといった逃げ若の世界観を表現した要素が散りばめられた和×ロックサウンドに惹きつけられます。
作詞を務めた北村匠海は「逃げる事が最善の瞬間もある。最善であることが物事への戦い方として1番かっこいいんじゃないか」という考えから、この楽曲を制作したと明かしています。
どのように歌詞に反映されているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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アロマチックな歴史通り
ドラマチックな教科書通り
いけない。いけない。踊れない日々です。
≪プランA 歌詞より抜粋≫
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「アロマチック」とはハーブ系の香りのことを指し、ほっとリラックスできたり元気が出たりする香りのこと。
当時の香りが漂ってくるような歴史の物語や、教科書に記された波乱万丈でドラマチックな出来事は魅力的です。
しかし現実は理想通りとはいかず、うまく「踊れない日々」に悩んでしまうこともあります。
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結末はやるかやられるか運命通り
抗い、歌い、走り出す
ダメージなんかへっちゃらか
楽しんでいるのさ
充実感と理想現実を
ダッとガッと
掴みに行くのさ
≪プランA 歌詞より抜粋≫
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「結末はやるかやられるか運命通り」なら、何をやっても無駄に思えるかもしれません。
しかしここでは「抗い、歌い、走り出す」と、思い切って行動を起こすよう訴えかけてきます。
それによって失敗したとしても「ダメージなんかへっちゃらか」で、全ての瞬間を楽しめばいい。
「充実感と理想現実をダッとガッと掴みに行くのさ」と、前向きに行動した先にこそ望む未来はあることを教えてくれます。
このフレーズの「ダッと」は、音で聞くと「脱兎」とも重なります。
勢いよく逃げていく兎のように俊敏に駆け出していく姿をイメージできますね。
自信を持ってプランAを突き進め
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仕方ないや
善悪じゃなくて正義同士
主人公ぶって歩きだす
無理難題がチンケじゃんか
楽勝で良いのさ
達成感と理想現実を
ダッとガッと
掴みに行くのさ
≪プランA 歌詞より抜粋≫
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人と人が関わるときには、あらゆる要因でぶつかってしまうことがあるものです。
しかしその理由が「善悪じゃなくて正義同士」だからなのであれば、それぞれの正義が衝突してしまうのは悪いことではないでしょう。
「仕方ないや」と受け止めて、「主人公ぶって」自分に自信を持ち行動することが大切なのではないでしょうか。
無理難題なんて「チンケ(最低・小さい)」だから、楽勝に乗り越えられる道を選んで進むのも1つの手です。
乗り越えた達成感が力となるので、自分を成長させて理想を掴み取るためにするその選択は決して間違いではありません。
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プランAだろ 迷いないだろ 晴れた色々
背中を預けた貴方と僕の滑走路
プランAだろ 迷いないだろ 生きてこそだろ
笑われても切なくても良いはずだろ
≪プランA 歌詞より抜粋≫
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タイトルでもある「プランA」とは、最初に思いつき行動に移す案のことです。
それは様々な要素を加味して考えられた自分にとっての最善策と言って良いでしょう。
逃げることをプランAとした主人公に迷いはなく、その選択肢を選んだことで目の前も気持ちも晴れたと感じているようです。
「背中を預けた貴方と僕の滑走路」とあるように、新しい世界に逃げ込むには仲間の存在も大切です。
背中を預けられるほど信頼できる人を見つけるのは簡単ではありませんが、最高の仲間を見つけたときにプランAはさらに盤石になるでしょう。
どんな人生でも諦めずに生きてこそ価値があります。
だからその過程で周囲から笑われようと切なさに胸を痛めようと、命がある限り何でもできるはずです。
状況がどうであれ、自分や仲間を信じて前へと進み続ける大切さが示されています。
立ち止まらずに逃げることこそ勝ちへの道筋
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騒いじゃってよ
寝惚けていないのさ
充実感と達成感を
ダッとガッと
叶えに行くのさ
≪プランA 歌詞より抜粋≫
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逃げるとはいっても、ただ怯えながら隠れているわけではないようです。
それは反撃の好機を見定めるための選択肢でもあり、寝惚けるように時間を無駄にするわけにはいきません。
願う「充実感と達成感をダッとガッと叶えに行く」ために、ここぞというタイミングで騒いで状況を変えます。
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プランAだろ 迷いないだろ 是が非でもだろ
迷路なんかじゃ僕ら止められない滑走路
プランAだろ 迷いないだろ 生きなきゃダメだろ
笑われるなら笑い飛ばしてやればいいだろう
プランA
プランA
逃げが勝ちなのさ
≪プランA 歌詞より抜粋≫
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文字通りの迷路に入ると、どちらに進むか悩んで立ち止まってしまうこともあります。
人生の中で直面する困難や問題も、行動する足を止めさせてしまうでしょう。
しかし主人公はすでに未来を見据えて飛び立つ準備をしているため、「迷路なんかじゃ僕ら止められない」と強気に歌っています。
「迷いない」選択だから「是が非でも」この道を行くと決めています。
本当に苦しい状況になると何もかも諦めてしまいたくもなりますが、「生きなきゃダメだろ」と自分を鼓舞しているところもかっこいいですね。
逃げることを誰かに笑われたとしても、笑われない選択肢を選ぶのではなく「笑われるなら笑い飛ばしてやればいいだろう」と自分の選択に誇りを持つようにも促しています。
選ぶ道がどれほど弱く情けなく思えてもそれが最善なら、その選択肢を選べることこそ強さなのではないでしょうか。
「逃げが勝ち」の場面なら「逃げて勝ち」を手に入れるために行動しなければなりません。
立ち止まらず自信を持って進むための力をもらえます。
迷い悩む心が奮い立たされる応援ソング!
DISH//の『プランA』は、どうにもならない状況を前に逃げたいと感じる心を肯定し、新たな未来を切り開くために行動するよう促される楽曲でした。不安や悩みの多い現実を乗り切るためには、逃げるべき瞬間もあります。
行動する勇気が出ないときには、ぜひこの楽曲を聴いて自分を奮い立たせてくださいね。