サザンの不倫をテーマにした名曲に注目!
1998年にリリースされたサザンオールスターズの『LOVE AFFAIR 〜秘密のデート』は、椎名桔平・松島菜々子共演のTBS系ドラマ『Sweet Season』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。タイトルの「LOVE AFFAIR(ラブアフェアー)」は恋愛関係・情事・浮気などの意味がある言葉で、不倫をテーマにしたドラマのストーリーに合わせ、家族と不倫相手の間で心を揺らす男性目線のラブソングとなっています。
作詞作曲を務めた桑田佳祐は、ドラマの舞台となっている横浜を特集した旅行雑誌を参考に今作の歌詞を書いたそうです。
どのような内容なのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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夜明けの街ですれ違うのは
月の残骸と昨日の僕さ
二度と戻れない境界を越えた後で
嗚呼 この胸は疼いてる
≪LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 歌詞より抜粋≫
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主人公は早朝の横浜の街を歩いています。
わずかに残る月明かりを感じながら、「昨日の僕」のことを考えています。
続く部分で「二度と戻れない境界を越えた後」とあるため、おそらく初めて不倫相手と一線を越えた後なのでしょう。
昨日の自分と今の自分では、全く違う人になったかのような気持ちです。
もうこの恋を知らなかった自分には二度と戻れません。
家族を裏切った罪悪感と、新しく大切なものを見つけた高揚感が入り交じり、胸の疼きを感じています。
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振り向くたびにせつないけれど
君の視線を背中で受けた
連れて帰れない黄昏に染まる家路
嗚呼 涙隠して憂う Sunday
君無しでは夜毎眠らずに
闇を見つめていたい
≪LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 歌詞より抜粋≫
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どれほど愛していても、その人は不倫相手。
帰るべき場所がある自分は熱い視線を送られても彼女を置いて行くことしかできず、名残惜しくて何度も振り返っては切なさがこみ上げます。
「連れて帰れない黄昏に染まる家路」というフレーズに、もどかしさを感じつつも帰る家はあくまで彼女の元ではないというずるい考えが垣間見えます。
ここで「Sunday」とあるのは、良い夫と父親を演じるために休日を家族と過ごしているからでしょう。
家族を裏切りながら不倫相手を選ぶこともできない矛盾した気持ちを抱え、家族の前で涙を見せないようにしている姿が見えてきます。
それでも彼女のことを考えずにはいられません。
彼女と過ごせないならその夜は眠らずにただ「闇を見つめていたい」と考え、どれほど自分にとって彼女が心安らぐ存在になっているかを示しています。
マリンルージュで愛されて
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マリンルージュで愛されて
大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて
まだ離れたくない 早く去かなくちゃ
夜明けと共にこの首筋に夢の跡
≪LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 歌詞より抜粋≫
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「マリンルージュ」は横浜港を拠点に運航するレストラン船のマリーンルージュのこと。
二人はそこで食事を楽しんだ後、横浜ベイブリッジを臨む「大黒埠頭」を歩き、ニューグランドというホテルにあるバー「シーガーディアン」でお酒を酌み交わすデートをしているようです。
愛を語らい、二人の時間を楽しむ様子が伝わってきますね。
ちなみに大黒埠頭の「虹」は、桑田佳祐が横浜ベイブリッジをレインボーブリッジと勘違いしたことによって生まれたフレーズです。
しかし「虹を見て」という表現が美しく、許されない恋を満喫するひと時の幻想的な雰囲気とぴったり合っています。
「まだ離れたくない」という思いに従って、二人はそのままホテルに泊まったのでしょう。
夜明けを迎えると、主人公はいつものように「早く去かなくちゃ」と慌てて帰り支度をします。
帰り際、彼女は彼の首筋にキスマークを残し「夢の跡」を刻みます。
それは彼への愛情表現であると共に、彼の家族への対抗心なのかもしれません。
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愛の雫が果てた後でも
何故にこれほど優しくなれる
二度と戻れないドラマの中の二人
嗚呼 お互いに気づいてる
≪LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 歌詞より抜粋≫
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情事を終えた後も彼女に優しくなれるのは、単なる体の関係ではないから。
自分でも不思議に思うほど、彼女に心を奪われています。
不倫なんてドラマの中の世界だと思っていたのに、今では自分がその主人公のようになっています。
二度とこの世界を知らないときの自分には戻れません。
しかしこれは現実であって、ドラマのようにハッピーエンドとはならないことをお互いに気づいています。
だから見て見ぬふりをして、束の間の幸せを味わっているのです。
今だけは儚い夢と愛の谷間で溺れたい
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棄ても失くしも僕は出来ない
ただそれだけは臆病なのさ
連れて歩けない役柄はいつも他人
嗚呼 君の仕草を真似る Sunday
好き合うほど何も構えずに
普通の男でいたい
≪LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 歌詞より抜粋≫
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この部分では、これまで大切にしてきた家族を棄てることも、深く愛した彼女を失くすこともできない自分を「臆病」だと認めています。
彼女と堂々とデートしてみたいと思いつつ、心でいくら彼女を愛していても世間から見ればただの他人のため、その思いは実現しません。
日曜日は彼女がそばにいないから、彼女の姿を求めて思わずその仕草を真似てしまいます。
愛する人には魅力的な自分でいたいと思いますが、愛し合う気持ちが強くなるほどにありのままの自分でいたいという気持ちにもなるでしょう。
今抱えている肩書きを全て取り払って、「普通の男」として彼女と向き合い愛し合っていきたいと願っています。
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ボウリング場でカッコつけて
ブルーライトバーで泣き濡れて
ハーバービューの部屋で抱きしめ
また口づけた
逢いに行かなくちゃ
儚い夢と愛の谷間で溺れたい
≪LOVE AFFAIR~秘密のデート~ 歌詞より抜粋≫
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桑田佳祐といえばボウリング好きとして知られています。
自分の得意分野でかっこいいところを見せようとしている主人公の姿がイメージできますね。
「ブルーライトバー」は、マリーンルージュ近くにあったスターホテル横浜のバーです。
また「ハーバービューの部屋」は港が見えるホテルの部屋のことを指し、そこで二人が親密な時間を過ごしていることを歌っているようです。
彼女と会えない時は、決まって「逢いに行かなくちゃ」という気持ちが募ります。
この関係はいつか終わる儚い夢のようなものですが、彼女との愛の前では他のことはどうでもよくなります。
とはいえ、家族の愛という現実を手放すこともできません。
「儚い夢と愛の谷間で溺れたい」という言葉は、ずるくて弱い不倫男の心情を見事に表現しています。
名曲から言葉の美しさを感じよう
サザンオールスター ズの『LOVE AFFAIR 〜秘密のデート』は、大切な家族がいるにも関わらず不倫相手とのデートと情事に溺れる男性の姿が綴られていました。生々しさを感じさせる描写も含まれていますが、繊細な言葉選びと爽やかさを感じる美しいメロディによって、明るさが際立つラブソングに仕上がっています。
リリースから20年以上経っても色褪せず、愛され続けるサザンの名曲を堪能してください。
1978年6月25日にシングル『勝手にシンドバッド』でデビュー。 1979年『いとしのエリー』の大ヒットをきっかけに、日本を代表するロックグループとして名実ともに評価を受ける。 以降数々の記録と記憶に残る作品を世に送り続け、時代とともに新たなアプローチで常に音楽界をリードする国民的ロ···